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前回に続き、労働経済の推移について、お話します。2022年の我が国の経済を見ると、感染防止策と経済活動の両立が図られる中で、個人消費の持ち直しや設備投資に牽引され、実質GDPは小幅ながら前年より増加した。企業の業況は非製造業を中心に持ち直し、経常利益は高水準に維持する中で、設備投資は活発化した。一方で、企業の倒産は3年ぶりに前年を上回っています。
◆求人・求職の動向
●求人が底堅く推移する中で、求職は微減であったことから、新規求人倍率及び有効求人倍は僅かに上昇
経済社会活動が活発化する中、労働市場はどのようになっているだろうか。本節では、求人 と求職の動向について概観する。 労働力需給の状況を示す指標である新規求人数、新規求職申込件数、新規求人倍率、有効求人数、有効求職者数及び有効求人倍率の動向について概観する。 まず、労働力需要の状況を示す新規求人数、有効求人数については、2009年以降長期的に 増加傾向にあったが、感染症の拡大による景気後退の影響から、最初の緊急事態宣言が発出された2020年4月を中心に急激かつ大幅に減少した。2020年7月以降は経済社会活動が徐々に活発化し、長期的に続く人手不足の状況も背景に、新規求人数に緩やかな回復が続き、有効 求人感染拡大前の水準まで回復していないものの、引き続き高水準で推移している。雇用情勢は、 求人が底堅く推移する中で、改善の動きがみられた。その結果、2023年平均では、新規求人数は前年比0.1%増、有効求人数は同0.9%増となった。 次に、労働力供給の状況を示す新規求職申込件数、有効求職者数については、2009年以降 長期的には減少傾向で推移している。感染症が拡大した2020年以降については、新規求職申込件数は横ばい、有効求職者数は2020年後半に大幅に増加した後、横ばいとなっている。 2023年平均では、新規求職申込件数は前年比0.9%減、有効求職者数は同1.3%減となった。 さらに、求職者一人に対する求人数を表す求人倍率の状況をみると、2023年の新規求人倍率は年平均で前年差0.03ポイント上昇の2.29倍、有効求人倍率は年平均で同0.03ポイン数にも持ち直しの動きが続いた。2023年においては、新規求人数は、前年から横ばいと、感染拡大前の水準まで回復していないものの、引き続き高水準で推移している。雇用情勢は、求人が底堅く推移する中で、改善の動きがみられた。その結果、2023年平均では、新規求人数は前年比0.1%増、有効求人数は同0.9%増となった。次に、労働力供給の状況を示す新規求職申込件数、有効求職者数については、2009年以降長期的には減少傾向で推移している。感染症が拡大した2020年以降については、新規求職申込件数は横ばい、有効求職者数は2020年後半に大幅に増加した後、横ばいとなっている。 2023年平均では、新規求職申込件数は前年比0.9%減、有効求職者数は同1.3%減となった。 さらに、求職者一人に対する求人数を表す求人倍率の状況をみると、2023年の新規求人倍 率は年平均で前年差0.03ポイント上昇の2.29倍、有効求人倍率は年平均で同0.03ポイント上昇の1.31倍となった。
(出典)厚生労働省 令和6年版 労働経済の分析
●新規求人数は、一般労働者では減少、パートタイム労働者では増加
次に、求人の動向について、産業別・雇用形態別にみていく。 産業別・雇用形態別に新規求人数の前年差の推移をみたものであるが、 パートタイム労働者を除く一般労働者9(以下この章において「一般労働者」という。)、パート タイム労働者ともに2020年は、感染症の拡大により、全ての産業において新規求人数が減少した。雇用形態別でみると、一般労働者の新規求人数は、「サービス業(他に分類されないも の)」「製造業」「卸売業,小売業」「医療,福祉」等で、パートタイム労働者の新規求人数は、 「卸売業,小売業」「宿泊業,飲食サービス業」「医療,福祉」「サービス業(他に分類されない もの)」等で大幅な減少がみられた。2021年は、一般労働者、パートタイム労働者ともにお おむね全ての産業で増加となったが、「宿泊業,飲食サービス業」「卸売業,小売業」等では、 2年連続で減少となった。2022年は、経済社会活動の活発化により一般労働者、パートタイ ム労働者ともに新規求人数は全ての産業で増加した。 2023年においては、一般労働者では「建設業」「製造業」を中心に減少がみられた一方、 パートタイム労働者では「宿泊業,飲食サービス業」「医療,福祉」「サービス業(他に分類されなないもの)」を中心に増加がみられ、両者の動きに違いがあった。
●人手不足感は、感染拡大前よりも強まっており、特に「宿泊・飲食サービス」や中小企業において顕著
感染拡大の影響により2020年前半 は全ての産業で弱まり、特に「宿泊・飲食サービス」「製造業」ではマイナスからプラスに転じた。その後は、「宿泊・飲食サービス」以外の産業でおおむね一貫して人手不足感が強まっ た。2021年12月に「宿泊・飲食サービス」が「不足」超に転じて以降、全ての産業が0を 下回って推移し、その後、感染拡大前の水準よりも低くなり、より一層人手不足感が強まっ た。2023年においては特に、「宿泊・飲食サービス」において顕著である。また、企業規模別にみると、中小企業の人手不足感がより強い傾向がみられる。
●転職者数は2022年以降増加傾向、「より良い条件の仕事を探すため」の寄与が大きい
これまでにみた労働力需給の動向も踏まえ、労働移動の状況について、転職者数の推移をみると、リーマンショック期の2009~2010年にかけて大幅に落ち込んだ後、2011年以降増加を続け、2019年は過去最高の353万人となった。感染症の影響で2020年、2021年 と減少が続き、290万人まで減少したが、2022年に増加に転じ、2023年は2年連続増加の 328万人となった。 転職者数の変動の背景をみるため、前職の離職理由別の転職者数の推移(前年 差)をみると、「より良い条件の仕事を探すため」は、雇用情勢が改善している時期に増加し ている。他方、「会社倒産・事業所閉鎖のため」「人員整理・勧奨退職のため」「事業不振や先行 き不安のため」は、リーマンショックの影響を受けた2009年のように、雇用情勢が厳しい時期に増加する傾向がある。2023年においては、前年に引き続き「より良い条件の仕事を探すため」で増加がみられ、前向きな転職が転職者数の増加に大きく寄与している。
●2024年3月卒の新規学卒者の就職率は、人手不足による売り手市場を背景に高水準を維持
卒業区分別に新規学卒者の就職率及び就職内定率の推移をみる。 新規学卒者の就職率及び就職内定率は、リーマンショック後から、人手不足や景気拡大等を背景にしておおむね上昇傾向が続いていたが、感染症の拡大の影響により、一時的に低下した。 その後、経済社会活動が正常化する中で、就職率及び就職内定率に持ち直しがみられている。 2024年3月卒の就職率は、いずれの学校区分においても97%以上の高水準を維持し、特に 大学と専修学校(専門課程)では、調査を開始した1996年度以降の最高値となった。これは、 採用活動に積極的な企業が増加し、学生・生徒が就職しやすい売り手市場が続いていることに よるものと考えられる。加えて、2024年3月卒の就職内定率について、高校卒と大学卒では 全ての期間で前年よりも上昇しており、企業の人手不足等を背景に、10月時点で就職希望者 の4分の3程度が内定を取得していることが分かる。他方で、専修学校(専門課程)卒は12 月及び2月時点で上昇、短大卒は全ての期間で低下したものの4月時点の就職率は高水準を維持した。
(出典)厚生労働省 令和6年版 労働経済の分析
◆失業等の動向
●完全失業率は、経済社会活動が活発化する中で、改善の動きがみられたものの、総じて横ばい
失業等の動向についてみていく。2018年までは男女ともにおおむね低下傾向にあり、「15~24歳」で特に大きく低下していた が、2020年の感染症の拡大の影響により、男女ともに全ての年齢階級で上昇がみられた。 2021~2022年は、感染症の拡大の影響が依然として残る中で、男女計と男性は全ての年齢 階級で低下、女性は「35~44歳」と「65歳以上」の年齢階級で横ばいとなったほかは全ての 年齢階級において低下した。 2023年の男女計においては、感染拡大前の2019年の水準よりは高いものの、総じて前年 と横ばいであった。男女別にみると前年まで横ばいだった女性の「35~44歳」「55~64歳」 「65歳以上」を中心に失業率の低下がみられたが、男性の「55~64歳」「65歳以上」では失業率の上昇がみられた。
●「1年未満失業者」は増加、「長期失業者」は減少
失業期間別の完全失業者数の推移をみると、失業期間が 「1年以上」の完全失業者(以下「長期失業者」という。)、失業期間が「1年未満」の完全失業者(以下「1年未満失業者」という。)は、ともに2019年まで幅広い年齢階級で減少傾向 が続いたが、2020年の感染症の拡大による景気後退の影響から1年未満失業者が全ての年齢 階級で増加した。2021年は、感染症の拡大の影響が長引く中で、失業が長期化する傾向がみ られ、長期失業者数は全ての年齢階級で増加した。2022年は、雇用情勢の持ち直しにより、 1年未満失業者は感染拡大前の2019年とおおむね同水準まで回復し14、長期失業者も3年ぶり に減少した。 2023年においては、長期失業者は、「35~44歳」を除く全ての年齢階級で減少しているが、 1年未満失業者は、「25~34歳」の若者層では、より良い条件の仕事を探す等の理由で増加しているほか、「65歳以上」でも増加がみられた。
(出典)厚生労働省 令和6年版 労働経済の分析
(つづく)Y.H