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実践編・応用編

海外進出日本企業で働く人々_インドネシア_社会保障施策 2

投稿日:2024年6月4日 更新日:

インドネシアの社会保障施策の2回目です。インドネシアは、ASEAN地域で最も人口が多く、約2億7千万人を擁しています。この巨大の人口が国内市場の規模を拡大し続ける要因となっています。またASEANで最大のGDPを有しており、東南アジアの地域経済において重要な立ち位置にあります。インドネシアに進出している日本企業は約1500社となっていますが、近年の不安定な中国や台湾問題を考慮するとインドネシアへ進出する日本企業は今後まだまだ増えていくだろうと見られています。そんな中、キャリアコンサルタントが日本企業で働く人とコンサル業務でかかわる事も多くなっています。

■社会福祉施策
・社会福祉政策全般社会省が、国家が優先的に支援すべき対象者を「社会問題保有者」としています。これは、特定の障害、困難等により社会的機能を果たせず、十分かつ適切に生活ニーズを満たせない個人、家族及びコミュニティーを指すもので、それに対して各種支援策が行われています。しかし、予算不足、施設の不足、地方分権化政策による州政府ごとの対応の違い等の多くの課題を抱えており、社会福祉制度及び施設が十分に整備され運営されているとはいえない状況にあります。
・高齢者保健福祉施策
全人口に占める65歳以上の割合は6.4%です(2021年推計)。都市部においても家族の絆が強く残っており、高齢者ケアのほとんどは家族に任されています。そのため高齢者福祉は、身寄りのない高齢者、障害を持つ高齢者等恵まれない高齢者を主たる対象としています。高齢者福祉のうち施設が提供するサービスは、通常の福祉サービス、日帰り用のサービス、医療が併用されるサービス、トラウマを持つ高齢者向けのサービス、職員が自宅へ訪問する在宅サービス、一定期間滞在する療養サービスが含まれます。高齢者施設は237施設あり、その内訳は、社会省管轄2施設、地方政府管轄70施設、民間165施設(2010年)となっています。
・障害者保健福祉施策
「障害者に関する法律(1997年)」に基づき、機会均等、リハビリテーション、社会的援助及び社会福祉水準の維持に関する施策を実施しています。社会省の統計によると、障害者の総数(2012年)は、6,008,640人とされています。2006年以降、重度障害者に対してはASPDBと呼ばれる財政支援を行っており、一定の条件を満たす重度障害者に月2,900円が支給される制度があります。2017年現在の受給者は22,500人(全34州)となっています。障害者の総数を踏まえると、政府予算が限られていることや障害の程度を検証するデータ収集システムの理由により財政支援は極めて限定的なものとなっています。
・児童福祉政策
社会省では、保護すべき児童として、身寄りのない児童、罪を犯すおそれのある児童、ストリートチルドレン、災害被災児童等を挙げています。これらの社会的環境に恵まれていない児童が、適切に生活し、正しく成長できるために、1箇所の社会開発センター及び18箇所の児童社会保護施設を設置し、社会福祉向上に取り組んでいます。また、社会省では、2016年の優先プログラムとして、児童栄養改善支援プログラム、出生証明書の発行、5,000人の児童のための暴力解放プログラム、児童と家族のエンパワーメント定期会合などが実施されています。

■公的扶助制度
貧困率(政府が消費支出をもとに貧困ラインを毎年定めて算出。2017年の場合1人当たり月間所得が都市部で400,995ルピア以下、農村部で370,910ルピア以下が貧困層。)は19.1%(2000年)、16.0%(2005年)、13.3%(2010年)、11.1%(2015年)、10.1%(2017年)、9.71%(2021年)と年々減少しているが、パプア州(27.4%)、西パプア州(21.8%)、東ヌサトゥンガラ州(20.4%)等で高い一方で、ジャカルタ首都特別州(4.7%)、バリ州(4.7%)、南カリマンタン州(4.6%)等で低く、地域差が大きい。また、2021年で約2,650万人が貧困層とされており、都市部で1,186万人、農村部で1,464万人と農村部に多い。ジニ係数は、0.39(2016年)、0.39(2017年)、0.38(2018年)、0.38(2019年)、0.39(2020年)、0.38(2021年)である。食品のエンゲル係数については、2021年において56.2%(たばこを除く)である。「希望ある家族プログラム(Program Keluarga Harapan)」の実施により、妊婦又は18歳以下の子を有する貧困世帯に対して、1世帯当たり年額95万~370万ルピアが支給される(2015年)。本制度は単に手当を給付するだけではなく、必要な母子保健サービスや義務教育を受けることが条件となっており、世代を超えての貧困からの脱却がテーマとなっている。具体的には、妊婦及び6歳未満の子は母子保健サービスの受診、6歳以上は小学校又は中学校(15歳以上はこれらに相当する教育機関)に通学させることが必須要件となっており、社会省が雇用したスタッフが支給対象世帯を訪問して随時確認している。本制度は、予算に限りがあることや州政府での制度の理解が必要なため、2007年に全国33州のうち7州を対象に開始された後、次第に対象州が拡大されており、2013年時点では全34州、2,326,523世帯が対象となっている。2016年9月時点では、約350万世帯に達しており、対象となる全世帯に拡大することを目指している。その結果、2017年の貧困率は、0.8ポイント低下し、9.9%になると推定されている。インドネシア政府は世界銀行から200百万ドルを借り入れ、本制度の拡充を行う予定で、今後5年間で、5,500百万ドル(約6,000億円)を本制度へ予算措置する見込みである。本制度は、ブラジルに次ぐ世界第二位の規模の条件付現金給付(CCT)プログラムとなる。
(出典)厚生労働省 2022年 海外情勢報告

■社会保障制度を巡る課題等
医療保険、年金等を含む社会保障制度改革が開始されましたが、今後、インドネシアの全国民約2億7,000万人をカバーする社会保障制度を運用していくためには、医療提供体制を含むインフラの整備、医療水準の向上をはじめ、持続的な制度としていくための予算の確保や保険料の配分、特にインフォーマルセクターをはじめとした加入促進のための取組など、山積している課題に対する今後の対応が重要となっています。医療保険制度については、財政が特に大きな問題となっており、一部保険料の値上げを行ったものの、保険料が未だに全体的に安いことに加え、保険料の未納者が多く、赤字経営となっているため、医薬品卸売業者等への未払いが問題となっています。医療保険制度の財政を立て直すため、保険料の値上げが2020年1月に実施されました。また、医療提供体制についても急ピッチで整備が進められているものの、質・量ともに十分ではない状況にあります。
(つづく)M.H

-実践編・応用編

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