キャリアコンサルティング協議会の、キャリアコンサルタントの実践力強化に関する調査研究事業報告書の、現段階でのスーパービジョンの基盤整理のスーパーバイザーによって指摘されたキャリアコンサルタントの課題例から記述します。
【スーパーバイザーによって指摘されたキャリアコンサルタントの課題例】
〇カウンセリング・スキル
・クライアントの語りや思いを受け止める前に、すぐに解決策を探し、自分本位の質問を繰り広げている。
・クライアントが何を相談にきたかについて丁寧に聴いているが、話したことをそのまま受け止め、それが課題と判断しやすい。
〇カウンセリングのプロセス評価
・傾聴を重視するあまり、話し手の話のペースに沿うことで、だらだらと流れて進んでしまう傾向がある。
・カウンセラー視点からみた問題の把握が十分でない。クライアントの認知の枠からなかなか出ることができていない。
2.スーパービジョンの概念
(1)スーパービジョンの特徴
すでに、既存のスーパーバイザー養成等に係る関係者の発表に基づきスーパービジョンの共通理解を示した。この共通理解を踏まえ、スーパービジョンの特徴を次のように整理することができる。
スーパービジョンは、専門分野における高度な専門性と人間性を備え、教育・指導の豊富な経験を有するスーパーバイザーから、後輩あるいは同僚に対して1対1または1対集団で提供される専門的介入(教育・指導)である。
スーパービジョンは、キャリアコンサルティング場面におけるスキル・技術指導だけでなく、専門家としての全人的教育(プロフェッショナルとしての人間性、とるべき態度・姿勢・持つべきマインドなどをカバーしたもの)を行うものであり、一定期間続けられ、スーパー バイジー(スーパービジョンによる指導を受けるキャリアコンサルタント)のキャリアコンサルティング能力の向上を目指す教育的指導である。
具体的には、スーパーバイザーが個別のキャリアコンサルティング(相談)場面を中心に、 スーパーバイジーが担当したケースの概念化とカウンセリングプロセス全体の進行過程のマネジメント等を検討し、キャリアコンサルタントとしての見立て(評価)や対応の仕方などの問題や課題に自分で気づき、それに主体的に取り組み、解決していくことができるように教育的指導を行い、キャリアコンサルタントの成長を促す。さらにはそれらを通じた組織活性化への貢献を図るものと期待される。
スーパービジョンは、キャリアコンサルタントのニーズや発達段階に応じて行われるものであり、経験の浅いキャリアコンサルタントはもちろんのこと、ベテランになってからも受けるべきものである。
なお、スーパービジョンは、キャリアコンサルタントを通してクライアント(相談者)に介入するものでもあるが、キャリアコンサルタントにとってスーパーバイザーはカウンセラーではない。 また、スーパーバイザーとキャリアコンサルタントの関係は、権威的ではなく相互協力的関係を重視する。
(つづく)A.K