前回に続きキャリアコンサルティング協議会の、キャリアコンサルタントの実践力強化に関する調査研究事業報告書の、現段階でのスーパービジョンの基盤整理の、スーパービジョンの形式と方法から記述します。
(2)スーパービジョンの形式と方法
本事業では、スーパービジョンの形式と方法について、標準的な枠組みを示すまでの議論を重ねることはできなかったが、第2章に示した「既存のスーパーバイザー養成等の実態把握」における各機関からの発表を踏まえ、次のように整理することができる。
1)形式
スーパービジョンの形式は、スーパーバイザーとスーパーバイジー(キャリアコンサルタント)が1対1で行うものと、グループ形式(グループサイズは6 -10名程度、クローズドメンバーの場合とオープンメンバーの場合がある)で行うものがある。スーパービジョンの基本的な目的は変わらないが、グループ形式のスーパービジョンはスーパーバイザーのほかにグループメンバー相互のフィードバックが加わる。
また、本事業のスーパービジョンのモデル実施では、通信機器を活用したスーパービジョンも行われた。スーパービジョンは、一般的にはスーパーバイジーとクライアントとの面談後に行われるが、ライブで行われる場合もある。
2)契約等の必要条件
スーパーバイジー(キャリアコンサルタント)がスーパービジョンを希望する際には、スーパーバイザーとスーパーバイジー(キャリアコンサルタント)の間での契約が必要となる。
契約では、スーパービジョンの方法(形式、指導材料、ケース記録・逐語記録またはその両方、録音VTRの使用等)、場所、目標、1回当たりの時間、期間、頻度、料金、秘密保持、修了要件、その他必要となる事項について取り決めを行う。
スーパービジョンを受けるに当たって、スーパーバイジー(キャリアコンサルタント)は、スーパーバイザーへの質問、指導を受けたい内容、その理由等を整理しておくとともに、ケース記録等をもとにして事前にケース全体を振り返り、自身の課題や問題点を点検しておくことが必要である。
3)指導材料(ケース記録)
指導材料のうちケース記録については、概ね次の事項を記載する。
①クライアントの属性(氏名、年齢、性別)、その他(服装や全体の印象)
②面接年月日、面談の回数、面談場所、面談時間
③クライアントとの関係性
④クライアントの話した内容(可能な限りクライアントの話した事実ベースでクライアントの言葉をそのまま記入。キャリアコンサルタントの問いに答えて出た言語の場合はキャリアコンサルタントの話した内容もそのまま記入。)
⑤クライアントの状態把握
a クライアントの課題
クライアント自身は何を課題と観て、それを自身はどう感じているかをクライアントの言動に基づいて記入。
b キャリアコンサルタントの仮説
クライアントの言動を通して、キャリアコンサルタントの視点ではどんな課題があると捉えたか、根拠を添えて記入。
⑥キャリアコンサルタントの方策
a キャリアコンサルタントの示した方策
キャリアコンサルタントが提示した方向性や情報提供などを具体的に記入。
b クライアントの変化
クライアント自身の変化、環境や周りの変化について、クライアントの語った言葉や態度をそのまま記入。
C 自己評価
クライアントの状態把握、キャリアコンサルタントがとった方針や方策の実現が出来たかを記入。
(参考)
スーパービジョンの必要性やスーパービジョンの形式・方法等は上述のとおりであるが、スーパービジョンが未だ普及していない現実を踏まえると、すでに記述した「既存のスーパーバイザー養成等の実態把握」 において、主として資格取得後経験の乏しいキャリアコンサルタントを対象として、訓練を受けたクライアント役に対するキャリアコンサルティング実施場面(20分) を複数のスーパーバイザー(キャリアコンサルタント)が一定の判定基準に従って評価・診断し、その場でキャリアコンサルタントとしての成長課題を対話によってすり合わせしながら、今後の効果的な更新講習の受講や学習機会等を指導するという形式(※全体で1時間程度)を取り入れることも有効であると考えられる。
(つづく)A.K