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実践編・応用編

学校施設の整備、防災対策 2 

投稿日:2025年6月28日 更新日:

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。
学校施設の整備、防災対策についての最終回です。
学校の教室や廊下に配置された防災グッズや避難経路の確認を通して、避難経路までの道のりを実際に歩いて確認することもあります。さらに、構内の安全設備や地震の強い建物構造を見直し、災害に対し物理的に進められています。

◆未来を拓く教育研究基盤の形成
国立大学等の施設は、将来を担う人材の育成の場であるとともに、地方創生やイノベーション創出等教育研究活動 を支える重要なインフラです。しかし、国立大学等の施設は、昭和40年から50年代に大量に整備された施設が一斉に老朽化していること、キャンパス内に敷設されている給排水管や電気設備などのライフラインの老朽化も著しく進行していることから、安全面はもちろん機能面に問題がある施設が多数存在し、高度化・多様化する教育研究活動に対応する上で様々な支障が生じています。こうした中、文部科学省では、「国立大学法人等施設整 備5か年計画」を策定し、計画的・重点的な施設整備を実 施しています。具体的には、多様な教育や独創的・先端的 な研究に対応できる総合研究棟など、国立大学法人におけ る人材養成、学術研究の推進に必要な施設・設備の整備を行っています。また、新しい時代にふさわ しい国立高等専門学校の機能の高度化や国際化の実現に向 け、国際寮の整備や老朽化の著しい学生寮、校舎等の集中 的な改善整備を行っています。

■今後の国立大学等施設の方向性
文部科学省では、令和3年度から7年度までを計画期間とする「第5次国立大学法人等施設整備5か年計画」(3 年3月31日文部科学大臣決定)を策定しました。本計画 においては、国立大学等への期待を踏まえ、教育研究の高 度化・多様化・国際化への対応はもとより、産業界や地域 との共創の拠点としての役割を果たすために、キャンパス全体を「イノベーション・コモンズ(共創拠点)」としていくことを掲げています。 令和3年10月から開催された「国立大学法人等の施設整備の推進に関する調査研究協力者会議」において、4年 10月に公表した「「イノベーション・コモンズ(共創拠 点)」の実現に向けて」に続き、5年10月にデジタルトラ ンスフォーメーション(DX)・グリーントランスフォー メーション(GX)等の成長分野やグローバル化等に対応 した環境整備について取組のポイントや推進方策、事例を 取りまとめた「我が国の未来の成長を見据えた「イノベー ション・コモンズ(共創拠点)」の更なる展開に向けて」 を公表しました。文部科学省では、引き続き、国立大学等施設の計画的かつ重点的な施設整備を推進していきます。(出典)令和5年版 文部科学白書

■国立大学等施設の整備充実に向けた取組
●戦略的な施設マネジメントの推進
大学の理念やアカデミックプランの実現のため、経営的視点から、施設の整備や維持管理、既存施設の有効活 用、脱炭素化、これらに必要な財源の確保等の施設全般に係る取組をより一層推進することが求められています。 このため、文部科学省では、施設マネジメントの基本的 な考え方、具体的な実施方策や先進事例等を示した報告書や事例集を作成し、国立大学等における戦略的な施設マネジメントの取組を推進しています。また、大学等個別施 設ごとの長寿命化計画(個別施設計画)の策定を推進し、令和2年度中には、全ての国立大学等で個別施設計画が策定されました。引き続き、各国立大学等の個別施設計画の更なる充実を支援するなど、戦略的な施設マネジメントの取組を推進す るとともに、多様な財源を活用した施設整備を一層推進していきます。

●国立大学の附属病院施設の整備
先端医療・地域医療を支えている国立大学附属病院施設 の再開発整備については「第5次国立大学法人等施設整備 5か年計画」に基づき、事業の継続性を踏まえつつ、計画的に推進しています。さらに、災害発生時や、新たな感染 症等の不測の事態が発生した場合においても、地域医療の最後の砦として医療活動を継続するために必要な施設の整備や、各国立大学附属病院の役割に応じた新たな機能確保等のための整備に対する支援を行っています。

◆防災・減災対策の充実
●防災体制の確立
地震、津波、暴風、竜巻、豪雨、火山噴火などの自然災害や事故災害に対し迅速かつ適切に対処するためには、総合的かつ計画的な防災対策を進めることが重要です。 文部科学省では、「災害対策基本法」等を基に、防災に 関し必要な事項を定める「文部科学省防災業務計画」*30を 策定し、防災対策の充実に努めています。また、「文部科 学省首都直下地震対応業務継続計画」を策定し、文部科学省の所掌事務の中で、非常時においても国民生活上重要かつ停滞してはならない事務を必要最低限継続できるよう、防災体制の確立に努めています。 都道府県や市町村においては、「防災基本計画」や「文部科学省防災業務計画」等を基に地域防災計画を作成し、学校などにおける防災体制の整備・充実を進めています。

●災害予防の推進
文部科学省では、平時から大規模自然災害等に対する備えを行うことが重要であることから、「国土強靱化基本計画」を踏まえ、防災・減災に資する施策を推進しています。なお、同計画は、平成26年6月に策定され、その後、5年ごとに変更が行われており、今般令和5年7月に閣議決定され、中長期的な目標や施策分野ごとのハード・ソフ トにわたる推進方針が定められました。また、同年6月に 「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災 等に資する国土強靱化基本法」が改正され、政府は、国土 強靱化基本計画に基づく施策の実施に関する中期的な計画 として「国土強靱化実施中期計画」を定めることとされま した。現在、施策の実施状況の調査など、国土強靱化推進 会議等において、策定に向けた検討が進められています。 また、令和4年3月に「第3次学校安全の推進に関する 計画」が閣議決定され、地域の災害リスクを踏まえた実 践的な防災教育・訓練のより一層の充実が示されていま す。さらに、児童生徒等の学習・生活の場であり、災害時 には地域住民の避難所等としての役割も果たす学校施設について、防災機能の強化に向けた取組を推進しています。

(出典)令和5年版 文部科学白書

〇防災・減災、国土強靱化の取組の加速化・深化を図るため、令和3年度から7年度までの5か年に重点的かつ集中 的に講じる対策として「防災・減災、国土強靱化のための 5か年加速化対策」が2年12月に閣議決定されました。 これに基づき、文部科学省としては、学校や独立行政法人の施設の老朽化対策、文化財の防火対策・耐震対策、災害支援にも活用できる大学・高専の練習船の建造及び地震津波火山観測網の整備等について、財政支援など必要な対策に取り組んでいます。

〇実践的な防災教育・訓練の充実
各学校の防災教育については、児童生徒等が自らの命を 守り抜くための「主体的に行動する態度」等を身に付けられるよう、学習指導要領等に基づき関連教科や特別活動など学校の教育活動全体を通じて行われています。地域の災害リスク等を想定した避難訓練や地域住民・関係機関等と 連携した避難所運営訓練を実施するなど、実践的な防災教 育・訓練が展開されています。 文部科学省では、学校が抱える防災をはじめとした安全上の課題に対して、地域の実情に応じた教育手法を開発したり、安全管理体制及び地域住民・関係機関等との連携体 制の構築を支援したりするほか、教職員に対する研修の実施についても支援しています。

〇防災機能強化の推進
災害時には多くの学校施設が避難所等として活用されま す。一方で、平成28年の熊本地震では、非構造部材の損 傷等に加え、トイレや電気、水の確保等の避難所に関する様々な課題が生じました。 これらを踏まえ、文部科学省では、避難所となる公立学 校施設の防災機能の保有状況等を調査するとともに、防災担当部局等との適切な連携・協力体制を構築し、避難所ともなる学校施設の防災機能の強化を一層推進するよう 教育委員会等に周知しています。さらに、学校設置者が実施する学校施設における防災機能強化の取組に対して、国 庫補助を行っています。 また、近年、水害や土砂災害の激甚化・頻発化により、 学校において甚大な被害が発生しています。令和3年6月 に文部科学省において公表した調査では、浸水想定区 域又は土砂災害警戒区域に立地し、地域防災計画に要配慮者利用施設として位置づけられている学校が、全国の公立学校約3万7,000校のうちの約3割となるなど、水害等のリスクを抱えている学校が一定数あることが明らかになり ました。 調査結果を踏まえ、文部科学省では学校及び学校設置者等に対し、「学校の「危機管理マニュアル」等の評価・見直しガイドライン」や「学校施設の水害・土砂災害対策 事例集」等を周知し、ソフト・ハード両面から対策が講 じられるよう取組を推進しています。 加えて、令和3年11月から有識者会議を立ち上げ、学校施設の水害対策について検討を行い、5年5月に学校施設の水害対策の基本的な考え方や検討手順等を示した「水害リスクを踏まえた学校施設の水害対策の推進のための手引」を策定しました。また、国立大学の附属病院では、大規模災害時に医療を 継続して提供することが期待されています。そのため、必要な電気や水の確保が課題となることから国土強靱化基本計画において、防災・減災機能強化を含めた施設整備を進めることとしています。自然災害が発生した場合においても附属病院としての機能を維持できるよう、防災機能強化のための整備を推進していきます。(出典)令和5年版 文部科学白書

(つづく)Y.H

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