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実践編・応用編

日本のICT技術政策の動向2

投稿日:2026年2月20日 更新日:

キャリアコンサルタントの方に有用な情報をお伝えします。

前回に引続き、ICT技術政策の動向について、お話しします。
AI技術
AI技術は、2006年に深層学習(ディープラーニング)が提唱されて以降、第3次AIブームが到来し、画像認識や自然言語処理等の分野で飛躍的な技術革新が進んできました。さらに、2022年には、生成AIと呼ばれる、学習データを基に自動で画像や文章等を生成できるAIが本格的に流行し始め、世界中で生成AIの開発競争が激化しています。我が国においても多数の民間企業やアカデミア等において生成AI開発が活発化するとともに、並行して、広範な産業領域における生成AIの活用も進みつつあり、社会全体に大変革をもたらす兆しを見せています。

総務省では、「AI戦略2022」(令和4年4月統合イノベーション戦略推進会議決定)や「AIに関する暫定的な論点整理」(令和5年5月AI戦略会議)等を踏まえ、AI関連中核センター群に属するNICTと連携し、大規模言語モデルや多言語音声翻訳等の自然言語処理技術や、分散連合型機械学習技術、脳の認知モデル構築や脳の仕組みに倣ったAI技術などに関する研究開発や社会実装に幅広く取り組んでいます。

大規模言語モデル(LLM)の開発力強化
NICTにおいては、長年に渡るAI技術の研究開発を通して日本最大級の大量の言語データを蓄積してきています。また、2023年7月には、当該言語データから作成した高品質な日本語データを基に大規模言語モデル(LLM)を試作するなど、LLM開発に必要な高品質な学習用言語データの構築に係る知見も有しています。これらのデータや知見を活かして我が国のLLMの開発力強化に貢献すべく、NICTでは民間企業等におけるLLM開発に必要となる大量・高品質な日本語を中心とする学習用言語データ を整備・拡充し、我が国のLLM開発者等に提供する取組を進めています。加えて、LLM生成テキストの検証・分析・改善等支援技術の研究開発にも取り組んでいます。

多言語翻訳技術の高度化
総務省では、NICTとともに、世界の「言葉の壁」を解消し、グローバルで自由な交流を実現するための多言語翻訳技術の研究開発に取り組んでいます。NICTが開発する多言語翻訳技術では、最新のAI 技術を活用することにより、訪日・在留外国人、外交への対応を想定した21言語について実用レベルの翻訳精度を実現しています。また、総務省及びNICTでは、多言語翻訳技術の社会実装も推進しており、NICTでは個人旅行者の利用を想定した研究用アプリとして「VoiceTra(ボイストラ)」を提供しているほか、技術移転を通じて40を超える民間サービスが展開され、官公庁のほか防災・交通・ 医療などの幅広い分野で活用されています。

2025年の大阪・関西万博も見据え、NICTの多言語翻訳技術の更なる高度化のため、総務省は、2020年3月に「グローバルコミュニケーション計画2025」を策定しました。総務省では、同計画に基づいて、NICTに世界トップレベルのAI研究開発を実施するための計算機環境を整備するとともに、従来は短文の逐次翻訳にとどまっていた技術を、ビジネスや国際会議における議論の場面にも対応した「同時通訳」が実現できるよう高度化するための研究開発を2020年度から実施しています。

2025年度、大阪・関西万博においてはNICTで開発した翻訳エンジンを活用し、30言語に対応した翻訳アプリやセミナー等における同時通訳を実装するとともに、グローバルサウスをはじめとする諸外国と連携し、複数の言語に対応したLLMの実証・評価に取り組んでいます。

量子技術
量子セキュリティ・ネットワーク政策
量子技術は、将来の社会・経済を飛躍的・非連続的に発展させる革新技術であるとともに、経済安全 保障上も極めて重要な技術であり、米国、欧州、中国などが量子技術に関する推進戦略等を策定し、研 究開発の推進や拠点形成、人材育成などの戦略的な取組を展開している。 我が国も世界に先駆け量子技術イノベーションを牽引すべく、「量子技術イノベーション戦略」(令和 2年1月統合イノベーション戦略推進会議決定)を策定し、各技術分野(量子コンピューター、量子ソ フトウェア、量子セキュリティ・量子ネットワーク、量子計測・センシング/量子マテリアルなど)に おける研究開発から社会実装までの幅広い取組の推進等を取りまとめた。その後、国際的な投資拡大等 を踏まえ、「量子未来社会ビジョン」(令和4年4月統合イノベーション戦略推進会議決定)、及び「量子 未来産業創出戦略」(令和5年4月統合イノベーション戦略推進会議決定)、「量子産業の創出・発展に向 けた推進方策」(令和6年4月量子技術イノベーション会議報告)を策定し、研究開発の推進により我が 国の技術開発力を強化するとともに、量子技術に係る幅広い人材育成を進めることとしている。

量子暗号通信技術等に関する研究開発
量子コンピューターの実用化により、現在広く使用されている暗号が危殆化することが懸念されてい る。そのため、総務省では、NICT及び民間企業、大学等と連携し、量子の物理的特性から盗聴を確実 に検知することができる量子暗号通信技術等の研究開発を推進している。また、政府全体の戦略を踏ま え、量子セキュリティ・量子ネットワークに関する技術分野について、2021年度に量子技術イノベー ション戦略に基づく拠点として「量子セキュリティ拠点」をNICTに整備し、テストベッドの構築・ 活用などを通じた社会実装の推進、人材育成などに幅広く取り組んでいる。

量子暗号通信の社会実装に向けた研究開発
量子暗号通信は光子に暗号鍵情報を載せて伝送する「量子鍵配送(QKD)」という技術を用いてお り、実用化に向けては通信速度の高速化、伝送距離の長距離化・広域化が大きな課題の一つとなってい る。総務省では、2020年度から5年間、地上系を対象とした量子暗号通信の長距離リンク技術及び中 継技術の研究開発に取り組んできた。2025年度からは量子暗号通信網の早期社会実装を実現するため の、さらなる高速化・高度化、大規模ネットワーク技術等の研究開発を実施することとしている。併せ て、2024年3月に国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)に設置された宇宙戦略基金にお いて「衛星量子暗号通信技術の開発・実証」を技術開発テーマとして設定し、小型衛星に搭載可能な量 子暗号通信装置等の開発等を進めていくこととしている。これらの取組により、引き続き、グローバル 規模での量子暗号通信網の構築の早期の実現を図っていく。

量子暗号通信のテストベッド整備
我が国では、NICTが早期より量子暗号通信の要素技術の研究開発に取り組んでおり、量子暗号通信の実証検証を目的として、2010年に量子暗号通信テストベッド「東京QKDネットワーク」を構築し、以降、継続的に運用を行っています。東京QKDネットワークの長期運用実績に基づき策定された量子暗号通信機器の基本仕様は、2020年に国際標準(ITU-TY.3800シリーズ)として採用されており、国際的にも高い競争力を有しています。

また、量子暗号通信は、国内重要機関間での情報のやりとりに加え、金融・医療などの商用サービスへの展開も期待されており、早期の実用化が強く求められています。そこで、総務省では、2021年度から、民間企業を含む複数拠点間を接続した構成で経路制御などのネットワーク構成実証を実施可能な量子暗号通信テストベッドの整備を行い、実環境での利用検証を通じた社会実装の加速化に取り組んでいます。

量子インターネット実現に向けた研究開発
量子状態を維持した長距離通信を安定的に実現する量子インターネットは、セキュアな通信や分散量子コンピューティングなど様々な量子技術の利活用の基盤をなす通信技術として期待されています。そこで、総務省では、2023年度から量子インターネット実現に向けて、量子もつれ光源、量子メモリ等の技術開発、また光時計等による高精度な位相同期技術と量子ネットワークの融合、多者間量子通信、量子通信プロトコル等の基礎・基盤技術を確立するための研究開発を開始しています。

リモートセンシング技術
NICTでは、線状降水帯やゲリラ豪雨に代表される突発的大気現象の早期捕捉や発達メカニズムの解明への貢献、災害時の被害状況の迅速な把握等を目的として、降雨・水蒸気・風・地表面などの状況を高い時間空間分解能で観測するリモートセンシング技術の研究開発を実施しています。高速かつ高精度に雨雲の三次元観測が可能な二重偏波フェーズドアレイ気象レーダー(MP-PAWR) の展開及びそのデータ利活用促進に関する研究開発のほか、大気中の水蒸気量を地上デジタル放送波の伝搬遅延を用いて推定する技術や上空の風速が観測可能なウインドプロファイラ技術、水蒸気と風を同時に観測可能なアイセーフ赤外パルスレーザーを用いた地上設置型水蒸気・風ライダー技術、衛星からの雲降水観測技術などの研究開発等を進めています。

2025年の大阪・関西万博では、リモートセンシング技術による高精度データの解析及びリアルタイム配信の実証として、世界初の試みとなる2台のMP-PAWRで大阪周辺地域の積乱雲等の立体的な雨雲の観測を行い、スーパーコンピューター等で解析することで、これまでにない高精度な気象予測情報を博覧会協会・来場者等へ提供しました。

宇宙ICT
宇宙通信分野は、宇宙活動の中でも特に市場規模が大きく、かつ成長が期待されている分野です。わが国でも災害時、離島、海上や山間部等で宇宙通信の利用が進んでいるなど、耐災害性や安全保障の確保の観点からの重要性も増しています。海外においても、様々な企業が宇宙通信に関する新たな技術開発やサービス開発に取り組んでいる状況にあり、我が国として宇宙通信の自立性及び自律性を向上していくためには、通信サービスを提供する事業と通信機器等を製造する事業双方が国際競争力を確保していくことが必要となっています。このような状況を踏まえ、総務省では宇宙における通信及び電波利用の高度化等を推進しており、例えば、宇宙戦略基金を活用し、衛星光通信を活用したデータ中継サービス の実現に向けた研究開発・実証や、衛星通信と地上ネットワークの統合運用実現に向けた周波数共用技術等の開発・実証を進めようとしているところです。

また、太陽フレア発生に伴う太陽からの放射線等が、電波を用いた通信や衛星測位等に支障を及ぼす恐れがあるところ、NICTでは24時間365日にわたり宇宙天気予報を実施しており、さらに、宇宙天気予報の高度化のため、次期静止気象衛星(ひまわり10号)に搭載する宇宙環境計測装置の開発を進めています。
(出典)総務省
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/pdf/index.html
(つづく)Y.H

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