キャリアコンサルタントの知恵袋 | 株式会社テクノファ

実践に強いキャリアコンサルタントになるなら

実践編・応用編

活躍しているキャリアコンサルタントの近況や情報

投稿日:2025年10月7日 更新日:

◆このコーナーは、活躍している「キャリア・カウンセラー」からの
近況や情報などを発信いたします。今回はキャリア・カウンセラー”鈴木秀一さん”です。
================================================
私の存在価値とキャリア形成
先日、NHKの朝ドラ(“やなせたかし”をモデルにした「あんぱん」)の中で、主人公である「のぶ」が夫の嵩に苦しい胸の内を漏らすシーンがあった。
「ウチは何者にもなれんかった。教師も代議士の秘書も会社勤めも、何ひとつやり遂げられんかった。あなたの赤ちゃんを産むこともできんかった。
ウチは何のために生まれてきたがやろう・・精一杯がんばったつもりやったけど、何者にもなれんかった。そんな自分が情けなくて・・世の中に忘れられたような、置き去りにされたような気になるがよ。」と・・

自分は何のために生まれてきたのか?自分が存在することの価値とは何か?

彼女が得ようとしているのは他者からの評価なのか?それとも自己評価としての納得なのだろうか?
おそらく、人生について本気で考え始めた経験があれば、誰もが必ずといっていいほどこの壁にぶち当たるだろう。

キャリアについて「経歴」、または更に狭い範囲で「職歴」のことと認識している人が多いことは甚だ残念だが、ドナルド・E・スーパー氏が提唱したライフキャリアレインボー理論においては、キャリア形成を単に収入目的で職業(Job)に就くことだけではなく、年齢や時期、または成長期、探索期、確立期、維持期、解放期等の発達段階(ライフステージ)における広義的解釈として(Work)という捉え方がある。

また、氏はそれぞれのライフステージにおいて担うであろう役割(子ども、学生、職業人、親、配偶者、余暇人、市民などの様々なライフロール)で果たす様々な経験が虹のように重なり合って積み重なり、生涯に亘って総合的なキャリアが形成され続けると説いている。

彼は一般的なJob中心のキャリア観に留まることなく、人生全般を多面的に捉え、日々の家庭生活の中に在る趣味や地域活動なども含めた長期的な視点でキャリアを捉えたのである。

夫が妻に対する暴言として「俺は外で仕事をしてるんだ!」という台詞がある。それはつまり「一家を(経済的に)支えているのは俺なんだぞ!もっと感謝してくれよ!」と言いたいのだろうが、それは妻が担っている「子育て」が如何に重要な「仕事」であるかを理解していないということである。

また、子育てに纏わる家事に追われている妻に対して「俺も手伝おうか?」などと間抜けな発言を以て妻の怒りを買うといった展開も、彼がJob と
Workを混同していることに起因していると思われる。

僕は、この社会、または世界は「母親たち」によって創られていると考えている。たとえば、突飛な行動や予想外の発言で注目を浴びているアメリカ大統領のトランプ氏も、日本で総理大臣を務めている石破氏も、言わずもがな元は「人の子」である。

ならば、人のパーソナリティ形成において母親の影響が大きいことを考えれば、彼女たちが抱えているであろう責任の重さや苦労についてもっと広く理解されるべきである。

子育てほど大切な仕事(Work)は他にない!と言ってもいいだろう。母親たちに子育てを一任するのではなく、国や地域としても支援の目を向けなくてはならないはずなのだ。

だが残念なことに、なぜか軽んじられているように思えてならない。彼女たちには本来ちゃんとした名前だってあるのに、夫からまで「ママ」と呼ばれていたりする。

彼女は子どもたちにとっては「ママ」だが、職場(Job)を持っていれば「職員」や「社員」であり、夫にとっては「妻」、舅や姑にとっては「嫁」となる。夫からまで「ママ」と呼ばれるのは全く以て妙なことである。

多くの主婦たちは、個人名ではなく「ママ」という役割名を付けられ、忙しさに翻弄されながら徐々に「私」を見失っていく。しかも、それが普通(一般的)と見做されていて、労いの言葉すらかけてもらえない。

たまに役割を離れて「私」に戻る時間を意識的に作ろうとでもしないかぎり自分が何者だったのかを忘れてしまうことだろう。このような状態は、いずれ役割を失った際に「対象喪失」がきっかけとなり更年期障害に陥ったりする危険性も孕んでいる。

私の存在意義や価値は、何か偉大なことを成し遂げたり、社会に貢献して名を残したなど目に見える形としての功績だけではなく、他者に与える影響や自らの納得をも含むものだとすれば、冒頭に挙げた「のぶ」の嘆きはあまりにも狭い範囲に囚われた認識内のことではないだろうか。

「のぶ」は子どもを産んではいないものの、戦後の混乱期において戦争で親を亡くした多くの子どもたちの支えになった意味において、確実に「社会を築いてきた中のひとり」なのだ。

物語では、夫婦間で取り交わされる会話や、ちょっとしたハプニング、そして唐突な思いつき等がきっかけとなり、後に嵩は今や誰もが知っている
「アンパンマン」を生み出すのである。

これもまた「のぶ」の功績ではないだろうか。「内助の功」といった控え目な言い方もあるだろうが、堂々と「私の功績」と名乗っていいと思う。

さて、キャリアについて語る際に忘れてはいけないことは、実存的な意味で「いま此処に存在すること」、または「いま五感を通して感じていること」
こそが生きているということであり、その時々に出くわす様々な出来事や経験によって触発される「想い」を都度しっかりと味わってこその人生ではないか?である。

もちろん、そこには未来を描く自由もあれば、夢や希望を意志的に打ち立てようとする決意があってもいい。しかし、それもまた、あくまで「いま此処の時点において・・」であり、やはり「いま」なのだ。

ぼくらはみんな 生きている
生きているから 歌うんだ
ぼくらはみんな 生きている
生きているから かなしいんだ

ぼくらはみんな 生きている
生きているから 笑うんだ
ぼくらはみんな 生きている
生きているから うれしいんだ
(作詞:やなせたかし 作曲:いずみたく)

「手のひらを太陽に」より一部抜粋

ある中学生が、「なぜ勉強をしなくてはならないの?なぜ努力をしなくてはならないの?」と尋ねてきた。彼は言葉を続ける「どうせいつか死んでしまうのに・・いつか寿命が尽きて自分がいなくなってしまうのに・・いかに努力して幸せになっても、お金持ちになっても、けっきょく死んでしまうのなら意味がないじゃないか?」と嘆く。

彼は、そんなふうに思うと学校に通って勉学に励むことや部活でトレーニングに打ち込むことに全く価値を感じることができず、毎日が虚しくてたまらないという。

「虚しさにつける薬は無い」といわれる。悲しさや苦しみ、憤りや落胆に対してであれば、カウンセリングを受けることによって捉え方や認識が変わり、悩みが悩みでなくなったりしながら改善が見込まれるが、こと「虚しさ」ばかりはどうしようもないという。

もし唯一、「虚しさ」に対抗し得るものがあるとすれば、それは実存哲学である。いま此処に在ること、それを見て聴いて嗅いで触れて存分に「味わっている自分」を実感することである。

未来のことを考えると「不安」が湧くだろう。過去のことに囚われていれば「後悔」の念に襲われるだろう。「不安」や「後悔」に苛まれていては、せっかくの「いま」が台無しである。

虚無感に浸るのは自由だが、とりあえずは「いま此処に生きていること」をしっかりと味わい、とにかく先のことや過去のことなどは一時的にでも脇に置くことだ。

そういえば、キャリアカウンセラーを目指すのであれば、先ず自分自身の人生にコミットできている者だけがその資格があると言われたことを思い出した。人生にコミットメントする? 人生に向き合う?

当時は意味が解らなかったが、人生が「いま」の連続であるならば、その都度しっかりと状況を手に取り、先送りなどせず、「いま」を味わい尽くすことではないのか?と思えたりもする。

あなたにとって「人生」とは何だろうか?そして、あなたは何を為す者なのだろうか?

おわり
=======================================================
【トピック1】更新講習のご案内
=======================================================
更新講習のご案内です。

「例外探し」を活用したナラティブ・アプローチ
(コースID:CD19) <技能講習 9時間>
【No.25】開催日:2025年10月4日(土)
https://www.tfcc.jp/renewal/cd19.html

アドラー心理学を活用した勇気づけアプローチ
~ラポール構築とクライエント理解~
(コースID:CD20) <技能講習 7時間>
【No.26】開催日:2025年10月19日(日) Webセミナー

https://www.tfcc.jp/renewal/cd20.html

「LGBTと向かい合うキャリア形成支援-入門編」 開催決定しています。
~基本的な理解と実践のための基礎スキルの習得~
(コースID:CD21) <技能講習 7時間>
【No.22】開催日:2025年11月1日(土)Webセミナー
https://www.tfcc.jp/renewal/cd21.html

アンコンシャス・バイアスを理解したクライエントサポート 開催決定しています。
(コースID:CD23) <技能講習 6時間>

【No.15】開催日:2025年11月15日(土) Webセミナー
https://www.tfcc.jp/renewal/cd23.html

知識講習(コースID:CD10) <知識講習 8時間>
https://www.tfcc.jp/renewal/cd10.html
知識講習はオンデマンドで学ぶことができます。
(つづく)伊良波

-実践編・応用編

執筆者:

関連記事

小学校学習指導要領の改訂 キャリア関係 2

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。 文部科学省は、平成29年3月に小学校学習指導要領の改訂を行いました。今回は、その内容について解説します。今回が、最終回です。 児童の発達の支援 ■児童の発達を支える指導の充実 教育課程の編成及び実施に当たっては,次の事項に配慮するものとする。 ◆学習や生活の基盤として、教師と児童との信頼関係及び児童相互のよりよい人間関係を育てるため、日頃から学級経営の充実を図ること。また、主に集団の場面で必要な指導や援助を行うガイダンスと、個々の児童の多様な実態を踏まえ、一人一人が抱える課題に個別に対応した指導を行うカウンセリングの双方により、児 …

キャリア・カウンセラー便り

■□■━━【コラム】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ キャリア・カウンセラー便り”伊良波久美”です。 ◆このコーナーは、活躍している「キャリア・カウンセラー」からの 近況や情報などを発信いたします。◆ ================================================ コラムを久しぶりに書かせていただきます、伊良波です。 昨日、キャリアコンサルタント養成講座62期が修了しました。 オンラインではありましたが、多くの皆さんとの出会いに刺激を受け、 3か月間、大いに心を動かされました、この出会いに感謝しています。 しかしオンライン …

ミドルシニア期からのキャリア開拓 6

キャリアコンサルタントの方に役に立つ情報をお伝えします。 3)「キャリア対話」を組織文化に 企業現場では、キャリア1on1、キャリア相談、キャリア面談などの「キャリア対話」に注目が集まっている。 本章では、キャリア対話の理論的背景や企業現場における価値を確認しながら、キャリア対話の問いかけリストについて見ていく。 キャリア対話の魅力は、社員一人ひとりのキャリア状況に寄り添い、これまでのキャリア形成に丁寧に向き合える点にある。キャリア形成が多様化する中で、個人が自らの価値観や目標、能力を振り返り、環境変化に柔軟に対応しながらキャリアを築いていくための手段として、キャリア対話は重要な役割を担ってい …

経産省CX研究会に見る日本製造業の今後2

キャリアコンサルタントの方に有用な情報をお届けします。出典 経済産業省 meti.go.jp CX研究会の目的と焦点テーマの重要性 経済産業省製造産業局のCX研究会(座長:日置圭介氏)は、日本経済の中核を支える製造業企業群のグローバル市場での競争力強化(「遠心力」の向上)を図る方策を検討し方向性を示すことを目的に掲げた[5]。特に、企業競争力を構成する要素のうち経営・ガバナンス、組織設計、ファイナンス、人材といった経営資源の再配分を司るコーポレート機能と、これらをつなぐデジタル基盤の在り方にフォーカスしている[6][7]。これは裏を返せば、日本企業が伝統的に強みとしてきた製品技術力やイノベーシ …

日本の環境の保全と創造 2

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。 前回に続き、環境の保全と創造についてお話しします。環境保全とは、自然環境や生態系を保護し、持続可能な状態を維持するための取組みのことです。保全の目的は、自然資源の持続可能な利用や再生、生物多様性の保全、大気や水の浄化、エネルギーの効率的な利用などです・これらにより、地球上の生態系のバランスを保ち、将来世代に美しい環境を受け継ぐことができます。 ○海運における省エネ・低脱炭素化の取組み 国際海運分野においては、令和5年7月に 国際海事機関(IMO)において我が国の提案をベースとした「2050年頃までにGHG排出ゼロ」を目標とする新た …