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実践編・応用編

日本における文化芸術立国の実現5

投稿日:2025年6月18日 更新日:

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。
文化芸術立国の実現についての最終回です。世界各国は、近年文化芸術が有する創造性を社会の活性化に生かし、また、文化芸術を発信することによって、国の魅力を高めようとする戦略が見られます。文化庁においても「クール・ジャパン」とも称される現代の日本の文化のみならず、古くからの優れた伝統文化と併せて魅力ある日本の姿を発信することにより、世界における日本文化への理解を深めるための施策を推進しています。

◆メディア芸術の振興

■マンガ、アニメーション、ゲームなどのメディア 芸術の振興
マンガ、アニメーション、ゲームなどのメディア芸術は広く国民に親しまれ、新たな芸術の創造や我が国の芸術全 体の活性化を促すとともに、海外から高く評価され、我が国に対する理解や関心を高めています。メディア芸術の一 層の振興を図るため、文化庁では、優秀な若手クリエイ ターの創作・発表機会の支援やアニメーター等への教育プ ログラムの提供を通じ、次世代を担う人材の育成や水準の向上に取り組むほか、メディア芸術作品・資料等の所蔵館等におけるアーカイブの取組への支援等を通じ、それらの収集・保存・活用を推進しています。令和5年度には、メ ディア芸術クリエイター育成支援事業において規模を拡充 し、40件のクリエイターの創作・発表活動への支援を行うとともに、6年2月に成果発表イベント 「ENCOUNTERS」を開催しました。また、アーカイブ の取組への支援として23件の大学や民間団体等を支援しました。  (出典)文部科学省 令和5年版 文部科学

●日本映画の振興
映画は、演劇、音楽や美術などの諸芸術を含んだ総合芸術であり、国民の最も身近な娯楽の一つとして生活の中に定着しています。また、ある時代の国や地域の文化的状況の表現であるとともに、その文化の特性を示すものです。 さらに、映画は海外に向けて日本文化を発信する上でも極めて効果的な媒体であり、有力な知的財産として位置づ られています。 文化庁では、平成16年度から総合的な日本映画の振興施策として、創造、発信・海外展開・人材交流、人材育成 に取り組んでいます。 具体的には、国際共同製作映画を含む日本映画の製作支 援、映画関係者によるシンポジウムなどの創作活動や交流 の推進、日本映画の海外映画祭への出品支援や若手監督等 の派遣、北米における日本映画特集上映など海外への日本文化発信、短編映画作品製作による若手映画作家等育成事業などの人材育成を通じて、我が国の映画の一層の振興取り組んでいます。また、令和5年度からは日本映画の国 際競争力の一層の向上を図るため、我が国で開催される国際的な映画祭への支援の拡充を図っています。

◆子供たちの芸術教育の充実・文化芸術活動の推進
■学校における芸術教育・文化部活動の環境整備

○学習指導要領の趣旨を踏まえた学校芸術教育の推進
平成30年10月から小学校の「音楽」、「図画工作」、中学校の「音楽」、「美術」、高等学校の「芸術(音楽・美 術・工芸・書道)」等の芸術に関する教育に係る事務を文 部科学省本省から文化庁に移管しました。
学習指導要領では、育成を目指す資質・能力を生活や社会の中の芸術や芸術文化と豊かに関わる資質・能力とし、教科の目標を三つの柱で整理してこれらが実現できるように示しています。内容については、目標に対応して三 つの柱で整理し、共通事項として表現と鑑賞の学習に共通に必要となる資質・能力を示しています。 また、芸術教育の充実に資するため、伝統音楽指導者研修会に加え、小・中・高等学校等で芸術系教科等を担当する教員の研修会を令和元年度から実施しています。
さらに、学校教育における全ての子供たちへの文化芸術教育の充実を図るため、伝統文化やメディアアートなど現 代日本文化も含め現行の文化芸術教育の実態を把握しつつ、次期学習指導要領も含む今後の文化芸術教育の充実・ 改善に向けた施策の方向性等について検討を行う「文化芸術教育の充実・改善に向けた検討会議」を令和5年6月に 設置し、議論を行っています。(出典)文部科学省 令和5年版 文部科学

○子供たちの体験活動機会拡大のための取組
子供たちが優れた舞台芸術を鑑賞するとともに、文化芸術団体等による実技指導、ワークショップに参加し、さらにこれらの団体等と本番の舞台で共演するなど、舞台芸術 に身近に触れる機会を提供する「文化芸術による子供育成 推進事業」を実施しています。令和5年度は、文化庁が選定した一流の文化芸術団体が小・中学校等において舞台芸術公演等を実施する巡回公演を1,820公演、学校が独自選定した芸術家による実技披露、実技指導等を行う芸術家 派遣を1,107か所で実施しました。

○文化部活動の環境整備のための取組
令和4年12月に、学校部活動の適正な運営や効率的・効果的な活動の推進とともに、学校部活動の地域連携並びに地域の運営団体・実施主体による地域文化クラブ活動へ の移行に取り組むべく、平成30年の運動部活動と文化部 活動のガイドラインを統合した上で全面的に改定し、新た に「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関 する総合的なガイドライン」を策定しました。少子化の中でも、将来にわたって子供たちが文化芸術活動に継続して親しめる機会を確保できるよう、令和5年度 から7年度までの3年間を改革推進期間とし、休日の部活動の地域連携・地域移行に取り組むため、指導者の質の保 障と量の確保、参加費用負担の支援等に関する自治体による実証事業及び休日の活動日数・時間が多い吹奏楽部に対 して全国的な規模の文化芸術団体等を中心として地域移行 等の課題へ取組む実証事業や、部活動指導員の配置支援を実施しています。

◆文化芸術による共生社会の実現
■障害者等による文化芸術活動の推進
障害者による文化芸術活動の推進に関する法律(以下 「推進法」という。)に基づいて厚生労働省と共同で令和5 年3月に策定した「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画(第2期)」を踏まえ、関連する施策を 総合的かつ計画的に推進しています。具体的には、文化芸術団体等が実施する、障害者の鑑賞・創造の機会の拡大や作品等の発表の機会の確保等に関する先導的な取組への支援や支援人材育成、障害者等と文化施設をつなぐ中間支援団体等における鑑賞サポート等の在り方についてのモデル開発、鑑賞に配慮した取組や利用 しやすい環境づくりに係る研修等に取り組んでいます。ま た、助成採択した映画作品や劇場・音楽堂等において公演 される実演芸術のバリアフリー字幕・音声ガイド制作への 支援、特別支援学校の生徒による作品の展示や舞台芸術の 発表の場の提供等の支援も行っています。 国立美術館、国立博物館では、障害者手帳をお持ちの方 (付き添いの方1名を含む)の展覧会の入場料を無料とし ているほか、全国各地の劇場、コンサートホール、美術館、博物館等において、車いす使用者も利用ができるトイ レやエレベーターの設置等障害のある方々に対する環境改善も進められています。 さらに、地方公共団体が、推進法に基づいて策定した地域計画を踏まえて実施する取組に対して助成することで、地方における取組を推進しています。

●国語施策の推進

国語は、国民の生活に密接に関係するとともに、我が国 の文化の基盤となるものです。時代の変化や社会の進展に伴って生じる国語に関する諸問題に対応して、より適切な 国語の在り方を検討しながら、その改善のために必要な施 策を実施しています。 文化審議会国語分科会は、「これからの時代における ローマ字使用の在り方について(諮問)」(令和6年5月 14日)に基づき、ローマ字のつづり方に関する検討を本 格化させています。また、調査・研究等において、言葉をめぐる現状の適切な判断のために活用できるよう、信頼の 置けるデジタル言語資源の整備を求める「日本語のデジタル言語資源の整備に関する国語分科会の見解」(5年9月)を示しました。 こうした分科会での審議に資するため、文化庁では一般 の社会生活における国語の実態について調査しています。 令和5年度には、「外来語の表記に関する実態調査」、「ロー マ字のつづり方に関する実態調査」を実施しました。これは、日本語の表記のよりどころとなる内閣告示として示さ れてから「外来語の表記」が30年以上、「ローマ字のつづ り方」が約70年を経ていることから、現在の社会における使用状況をそれぞれ把握しようとするものです。 また、国語分科会におけるこれまでの審議テーマに関して協議する「国語問題研究協議会」(オンライン)と審議 中のテーマに関する各地の有識者や国民の声を聞くための 「国語課題懇談会」(京都市及び松山市)も開催しました。

(出典)文部科学省 令和5年版 文部科学

●国語に関する世論調査
社会変化に伴う日本人の国語に対する意識の現状について調査するため、平成7年度から毎年度「国語に関する世 論調査」を実施しています。令和5年9月に公表した4年度調査では、国語や言葉の使い方、ローマ字表記に関する問いを中心に、15の項目について調査しました。これ らの調査結果は国語分科会における審議で活用されていま す。5年度調査は、6年1月から3月に郵送による調査方法で実施しました。 また、同調査は国民の国語に対する興味・関心の喚起も目的としてきました。例えば平成12年度から取り上げて きた慣用句等の調査結果は、ウェブ動画「ことば食堂へよ うこそ!」で取り上げるなど、より親しみやすい方法でも紹介しています。
(つづく)Y.H

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