キャリアコンサルタントの方に有用な情報をお伝えします。
前回に引き続き、電気通信事業政策について、お話しします。
デジタルインフラの整備
人口減少下にあり、地域や社会の課題が多様化・複雑化するなかで、我が国の成長力を維持していくためには、生成AIをはじめとするデジタル技術を徹底的に活用し、DXの加速化を図ることが必要であり、その実現に不可欠となるデジタルインフラの重要性は高まっています。 デジタルインフラの整備にあたっては、今後生成AIの開発・利用等が本格化するに伴い、需要が急増するデータセンター等の計算資源を確保し、地方のデータ活用を加速化するような、AI時代の新たなデジタルインフラの整備を推進すること、こうした新たなデジタルインフラの利用を支え、社会のデジタル化や新技術の活用に伴うトラヒック増に対応するため、5Gや光ファイバの整備に加え、多様化するインフラへのニーズに合わせて、非地上系ネットワークも活用し、複層的なネットワークによりどこでも繋がる環境を実現していくことが必要となっています。
また、2024年1月に発生した石川県能登地方の地震においては、停電や伝送路の寸断等により、通信サービスが長時間にわたって利用できない状態が発生するなど、早期復旧に加え、今後の災害に備えて通信インフラの強靱化を図ることも課題となっています。
総務省はこうした状況を踏まえ、2030年度末を見据えて必要となるデジタルインフラの整備方針とその実現に向けた具体的な推進方策を整理し、一体的・効率的に我が国デジタルインフラ整備の推進を図るため、2025年6月に「デジタルインフラ整備計画2030」を策定しました。
総務省は、本計画に基づき、光ファイバの未整備地域の解消や維持管理の確保、「5Gならでは」の実感を伴う高品質な通信サービスの普及拡大、ワット・ビット連携によるデータセンター等の地方分散、非地上系ネットワーク(NTN)の展開支援等に取り組むとともに、オール光ネットワークを中核とした次世代情報通信基盤(Beyond 5G)や量子暗号通信の研究開発・社会実装等を推進することにより、AI社会を支えるデジタル基盤の整備を推進していくこととしています。
光ファイバ整備の推進
光ファイバによるデジタルインフラについては、地域が抱える課題解決のために、テレワーク、遠隔教育、遠隔診療などを含むデジタル技術の利活用が強く期待されている中で、過疎地域や離島などの地理的に条件不利な地域では人口に比して財政的負担が大きいことから整備が遅れています。こうした背景を踏まえ、総務省では、条件不利地域において、地方自治体や電気通信事業者などが5Gなどの高速・大容量無線通信の前提となる光ファイバを整備する場合に、その事業費の一部を補助する「高度無線環境整備推進事業」を実施しており、この事業において、地方自治体が保有する光ファ イバ等の民間移行に伴う高度化に要する経費や、離島地域の光ファイバなどの維持管理に要する経費についても補助対象としています。また、「デジタルインフラ整備計画2030」(2025年6月策定)に基づき、 2023年3月末に99.84%となっている光ファイバの整備率(世帯カバー率)を2028年3月末までに 99.9%とすることを目標として取り組むこととしています。 令和6年度補正予算並びに令和7年度予算においては、補助率の嵩上げなど支援内容を大幅に拡充したところであり、条件不利地域における光ファイバ整備を引き続き推進するとともに、希望する地方自治体が、公設設備の民設移行を早期かつ円滑に進めることができるよう取り組んでいます。
データセンターなどの地方分散
我が国におけるデータセンターの立地状況を見ると、およそ9割が東京圏・大阪圏といった都市部に集中しており、今後もこの状況が続くと見込 まれています。海底ケーブルについては、国際海底ケーブルの終端である陸揚局が房総半島及び志摩半島並びにそれらの周辺に集中するとともに、国内海底ケーブルについては日本海側がミッシングリンクとなっています。このような状況では、大震災等で東京圏・大阪圏が被災した場合に通信サービスに全国規模の影響が生じる可能性があるため、我が国のデジタルインフラの強靱化の観点からは、データセンターの分散立地や日本海側の海底ケーブルの整備等を推進する必要があります。また、我が国は北米・欧州とアジア・太平洋地域の中継点に位置していることから、我が国への国際海底ケーブルの敷設を一層促進し、国際的なデータ流通のハブとしての地位を確立し、自律的なデジタルインフラを構築していくことも必要です。更に、我が国を取り巻く安全保障環境等の複雑化など昨今の国際情勢の変化等に鑑み、国際海底ケーブルや陸揚局の安全対策を強化することも必要です。
総務省においては、令和3年度補正予算事業として、データセンターや海底ケーブル等の整備を行う民間事業者を支援するための基金を造成し、東京圏以外に立地するデータセンターの整備事業に対する支援を行っています。また、令和5年度補正予算事業として、当該基金を増額し、国際海底ケーブルの分岐支線や分岐装置等を新たな支援対象として加え、国際海底ケーブルの多ルート化に取り組んでいるところです。さらに、令和6年度補正予算事業として、当該基金を増額し、東京圏等以外に立地するデータセンターの整備事業に対する支援に向け着手したところです。
また、生成AIの登場等により、AIの学習等に必要となる計算能力が加速度的に増加しており、今後、生成AIの開発・利活用を進めていくためには、大規模な計算資源の確保が急務となっています。一方で、データセンターは、一部のエリアに局地的に立地する傾向にあり、新規データセンターの建設には変電所の新増設といった大規模な系統対策工事が必要となる場合もあります。そのため、電力インフラから見て望ましい場所や地域へのデータセンターの立地を促進させつつ、必要となる通信基盤についても、それと整合するよう計画的に整備するなど、電力と通信の効果的な連携(ワット・ビット連携)を進めることが重要です。
そこで、令和7年2月のデジタル行財政改革会議における総理指示を踏まえ、同年3月、総務省は、経済産業省と連携し、官民の関係者における連携・協調の場となる「ワット・ビット連携官民懇談会」を立ち上げました。同懇談会では、今後の望ましいデータセンターの整備に向けた諸条件・課題の整理などを実施し、同年6月、「ワット・ビット官民連携懇談会取りまとめ1.0」を取りまとめました。総務省では、同懇談会での議論を踏まえ、引き続き、データセンターの地方分散等の施策を推進することとしています。
電気通信インフラの安全性の確保
非常時における通信サービス
①電気通信事業者が実施すべき対策
近年、我が国では、地震、台風、大雨、大雪、洪水、土砂災害、火山噴火などの自然災害が頻発しており、停電、通信設備の故障、ケーブル断などにより通信サービスにも支障が生じています。総務省では、電気通信事業者が実施すべき耐震対策、停電対策、防火対策等を規定した「情報通信 ネットワーク安全・信頼性基準」(昭和62年郵政省告示第73号)を随時改定し、災害時における通信サービスの確保を図っており、直近では、2024年1月に発生した石川県能登地方の地震を踏まえ、携帯電話基地局等の停電対策の強化に関する改正を2025年3月に実施しました。また、2018年10月から「災害時における通信サービスの確保に関する連絡会」を指定公共機関と開催し、累次の災害対応の振り返りを行うとともに、即応連携・協力に関する体制、被害状況の迅速な把握、復旧を進めるに当たっての課題などに関する情報共有や意見交換を行っています。このほか、こう した機会に得られた情報も踏まえ、電気通信事業者と電力、燃料、倒木処理に関係する機関等との間の連絡体制の構築や初動対応の訓練等の連携を推進しています。
②総務省・災害時テレコム支援チーム
総務省は、情報通信手段の確保に向けた災害対応支援を行うため、「総務省・災害時テレコム支援チーム(MIC-TEAM)」を2020年6月に立ち上げました。MIC-TEAMは、大規模災害が発生し又は発生するおそれがある場合に、被災地の地方自治体に派遣され、情報通信サービスに関する被災状況の把握、関係行政機関・事業者等との連絡調整を行うほか、地方自治体に対する技術的助言や移動電源車の貸与等の支援を行っています。2024年には、1月に発生した石川県能登地方の地震や9月に発生した能登半島豪雨をはじめとする自然災害において、被災した地方自治体に派遣されました。
③携帯電話事業者間のネットワーク
携帯電話サービスは、国民生活や経済活動に不可欠なライフラインであることから、自然災害や通信障害等の非常時においても、携帯電話利用者が臨時に他の事業者のネットワークを利用できる「非常時事業者間ローミング」等により、継続的に通信サービスを利用できる環境を整備することが課題となっています。このため、総務省では、2022年9月から、「非常時における事業者間ローミング等に関する検討会」を開催し、緊急通報をはじめ一般の通話やデータ通信、緊急通報受理機関からの呼び返しが可能なフルローミング方式による非常時事業者間ローミングを、できる限り早期に導入することを基本方針とした第1次報告書を同年12月に取りまとめ、公表しました。
また、同検討会において、緊急通報受理機関からの呼び返しに必要なコアネットワークの利用者認証に障害が発生した場合においても緊急通報の発信ができるローミング方式をフルローミング方式と併せて導入する方針を2023年6月に第2次報告書として取りまとめました。2024年5月には、非常時事業者間ローミングの基本的な考え方及び両方式ともに2025年度末頃の導入を目指すスケジュールについて第 3次報告書に取りまとめました。
2024年8月に、上記の検討結果に基づく技術基準の整備など、政策決定に係る議論を深めるため、検討の場を情報通信審議会情報通信技術分科会IPネットワーク設備委員会に移行し、同年12月に同審議会から端末設備の技術基準等について一部答申を受けました。
本答申に基づく関連省令の改正等について、2025年1月に情報通信行政・郵政行政審議会に諮問し、 同年3月に同審議会から答申を受け、同年5月に公布しました。本件に関する改正省令等は同年10月から施行される予定です。
引き続き、非常時事業者間ローミングの円滑な導入を図るため、運用のルールや利用者への周知広報 の方法等について、情報通信審議会において検討を行っているところです。 今後も、「非常時事業者間ローミング」の実現に向け、必要な検討・検証等を推進していきます。
電気通信事故の分析・検証
電気通信事故を抑止し、その影響を小さくするためには、事前の対策に加え、事故発生時及び事故発生後の適切な措置が必要です。総務省は、2015年から「電気通信事故検証会議」を開催し、主に電気通信事業法に定める「重大な事故」及び「重大な事故が生ずるおそれがあると認められる事態」並びに電気通信事業報告規則に定める「四半期報告事故」に係る報告の分析・検証を実施しています。同会議では、2023年度に発生した電気通信事故の検証結果等を取りまとめ、2024年9月に「令和5年度電気通信事故に関する検証報告」を公表するとともに、2024年度に発生した電気通信事故については継続的に検証を行いました。
電気通信事故が多発する背景には、リスクの洗い出しや評価、ヒューマンエラー防止や訓練、保守運用態勢等、共通する課題が多いと考えられます。このため、個別の事故の背景にある組織・態勢面等の構造的問題及び構造的問題の検証を踏まえた技術基準や管理規程等の規律の見直し、安全対策に係る保守運用態勢に対するガバナンス強化の在り方等について、同年3月に「電気通信事故に係る構造的な問題の検証に関する報告書」を取りまとめました。本報告書の内容を踏まえ、電気通信事業者自身による各種取組に加え、行政により、電気通信役務の安全・信頼性の確保に係る法令遵守状況等のモニタリングを併せて実施することを目的として、同年7月に「電気通信役務の安全・信頼性の確保に係るモニタリングの基本方針」を策定し、初年度である2023年度の検証を実施しました。その検討概要を2024年6月に電気通信事故検証会議において報告するとともに、当該結果概要を公表し、同年8月に2024年度の検証を開始しました。
(出典)総務省
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/pdf/index.html
(つづく)Y.H