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実践編・応用編

デジタル分野の海外事業者と我が国の現状

投稿日:2025年12月20日 更新日:

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海外プラットフォーム事業者は、デジタル市場で発現しやすい特性や収集したデータ・莫大な収益を活用して大きく成長し、我が国でも大きな存在感を有しています。従来の事業分野から別のデジタル分野にも進出し、最近は海底ケーブルや発電所等といった実体的なインフラにも影響を拡大しています。
一方、グローバルデジタル市場における日本企業のシェアは全般的に低い状態にあるほか、社会生活・企業活動における我が国のデジタル活用の進展や、我が国のデジタル産業の国際競争力の低さ等により、デジタル分野での国際収支の赤字が拡大傾向にあります。今回は、デジタル分野における海外事業者と我が国の現状について概説します。

海外プラットフォーム事業者の成長とその背景
新たなデジタル社会基盤となっている、SNSやクラウドサービス等の担い手は、海外のデジタルプラットフォーム事業者を含む、ビッグテック企業が大きな存在感を占めています。これらの海外事業者は、デジタル市場で発現しやすい様々な特性や、収集したデータ・莫大な収益等を活用して急激に成長しました。例えば、Google、Apple、Facebook(Meta)、Amazon、Microsoftを中心としたデジタルプラットフォーム事業者は、売上高、時価総額共に世界トップクラスの水準を誇るまでに成長しています。

巨大デジタルプラットフォーム事業者の台頭の背景には;
◆ユーザーが増えるほどサービスの価値が高まる「ネットワーク効果」、
◆巨額の固定費用に対して追加サービス提供時の「低い限界費用」やそれに伴う「規模の経済性」、
◆ユーザーが使い慣れたサービスから他のサービスに乗り換えることが難しい「ロックイン効果」など、
経済学の諸概念で説明される特性があります。これらの特性は、デジタル財だけに備わる固有の性質ではありませんが、デジタル市場ではより一段と発現しやすく、この特性を有効に活用した仕組で先行して市場を獲得した事業者が、圧倒的な競争優位性を確立しやすい市場構造となっています。

ビッグテック企業は、技術革新と市場拡大を通じてデジタル産業のあらゆる層に影響力を拡大し、複数の領域にまたがる事業展開を行っています。これらの企業は、当初は利用者向けのアプリケーションやサービスから事業を開始し、段階的に実体的なインフラ層にまで進出や関与を強めてきました。現在では、クラウドサービス、データセンター、通信インフラといったデジタル産業、そして電力インフラに至るまで、多くの領域にわたって影響力を強化しており、さらに、生成AI等の新たな技術革新の主導権をも握っています。

海底ケーブルネットワーク
データの伝送等の効率を高めるため、ビッグテック企業は通信インフラへの投資を開始しています。特に注目されるのは海底ケーブルへの投資です。通信インフラの効率化とコスト削減を目的に、Googleは海底ケーブルを自社で敷設し、データセンター間の高速通信網を確立しました。Metaや Microsoft、Amazonも同様に海底ケーブルの建設に参加しています。これにより、ビッグテック企業は大陸間のデータ転送速度を向上させ、自社サービスの品質を高めると同時に、通信インフラ市場での影響力を強めています。 2010年代前半までは、主に通信事業者(インターネットバックボーンプロバイダ)による海底ケーブルの敷設と利用が主流であり、コンテンツプロバイダによる海底ケーブル使用帯域は、2011年は 10%程度でした。しかし、2010年代後半からは Google、Meta、Microsoft、Amazonといったビッグテック企業が、その敷設と利用を拡大し、2020年には、コンテンツプロバイダが、海底ケーブル使用帯域の7割近くを占めています。国際通信の99%を担う海底ケーブルにおいて、ビッグテック企業が海底ケーブル投資において大きな存在感を示すことで、従来の通信事業者主導の市場構造をも変化させています。

生成AI分野の先導
ビッグテック企業は、膨大な資金力、先進的な技術開発力、世界トップクラスの人材、そして日々蓄積される膨大なデータを活用し、生成AI分野においても圧倒的な主導権を確立し、競争を繰り広げています。この競争力は、当該企業等が構築してきた多層的な基盤によって支えられており、簡単に追随できない優位性を生み出しています。

ビッグテック企業各社のLLMの開発状況や、生成AIの社会実装状況としては、例えば、Microsoft はOpenAIとの協同で「Copilot」を展開し、ビジネスツールへの生成AIの統合を進めています。また、Metaは、同社の開発したLLMの「Llama」を公開して展開しており、多くの企業が利用可能なエコシステムを構築しています。ビッグテック企業はこれらの取組により、アプリケーションから、モデル、インフラ(計算資源、データ、専門人材)層に至るまでの総合的な影響力を持ちながら、生成AI技術 の進化と社会実装を牽引しています。

なお、現在は米国ビッグテック企業が依然として各レイヤーで大きな地位を占めているものの、近年では中国も含めた世界をリードする各企業がAI事業にも注力しています。 このように、海外のビッグテック企業はデジタル産業の基盤から最先端技術まで、幅広い領域で影響力を持つに至っており、結果として、この動きは従来の産業構造に大きな変革をもたらし、既存の通信事業者やエネルギー企業、更にはAI開発を行う新興企業にも多大な影響を与えています。

今後は生成AIの需要増大に伴い、電力需要も増加するものと想定されています。データセンターの運営には莫大な電力が必要であり、安定した電力供給はビッグテック企業のビジネスにとって不可欠です。エネルギー供給の安定性とコスト効率、再生エネルギーの活用を高めることを目指し、一部のビッグテック企業は、発電所に関する契約や投資等を通じて関与を強める動きが見られます。例えばGoogleは、日本国内の800か所以上で開発が進められる太陽光発電所に関する契約を行っています。

海外事業者の存在感と日本の競争力の現状
海外プラットフォーム事業者を含む海外ビッグテック企業が著しく成長し、我が国を含めて世界の多くのデジタル市場で大きな存在感を発揮する一方、日本のデジタル産業のグローバル市場における存在感や国際競争力は、多くの分野において強いとは言えません。ここでは、デジタル分野における我が国及びグローバル市場における日本企業のシェア、デジタル分野に関する国際収支統計(サービス収支)や貿易統計等から示唆される日本のデジタル産業の競争力の現状を示します。

クラウドサービスに関して、日本におけるIaaS・PaaS※市場(クラウド基盤市場)をみると、Amazon Web Services、 Microsoft、Googleの3社がシェアを大きく拡大しています。また、国内での定額制動 画配信の市場シェアは、2024年においてNetflixが21.5%で最も高く、国内市場シェアにおける海外 企業比率は半数を超えています。 国内の動画共有サービスやSNSに関していえば、YouTubeの利用率が2024年で8割を超えているほか、X、Instagram、TikTok等といった海外事業者のサービスの利用率が、年々上昇しています。デジタル機器に関していえば、例えば、2024年の日本のスマートフォン市場のシェアは、Appleが59%、次いでGoogleが10%と、海外事業者が大きな割合を占めています。
※ IaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)

グローバルデジタル市場における日本企業の売上高ベースのシェアをカテゴリーごとにみると、2023年において、半導体、電子部品や家電・OA機器等の一部のカテゴリーを除き、おおむね10%前後又はそれ以下にとどまっていると推計されています。個別機器・サービスをみても、グローバル市場規模が大きいスマートフォン、パソコン、サーバーで一桁のシェアにとどまっています。なお、携帯電話基地局全体ではグローバルシェアでは一桁でありますが、オープンvRAN市場だけでみると29%となっています。

デジタル赤字;サービス収支の動向
国際収支統計のサービス収支において、日銀レビュー「国際収支統計からみたサービス取引のグローバル化」で、デジタルに関係する項目として分類される;
①コンピュータサービス、
②著作権等使用料、
③専門・経営コンサルティングサービス、
④通信サービス、
⑤情報サービス(以下「デジタル関連項目」という。)
の収支の推移をみると、特に①から③までについて、近年赤字額が急激に増えており、いわゆる「デジタル赤字」として注目を集めています。なお、この中にはデジタル分野以外のサービスに係る収支も含まれる点に注意が必要です。

例えば、2024年では、①コンピュータサービス、②著作権等使用料、③専門・経営コンサルティングサービスの収支額の合計では、約6.7兆円の赤字(前年比約0.9兆円の赤字額増)となっています(これに、④通信サービス、⑤情報サービスを加えると、約6.8兆円の赤字(前年比約0.9兆円の赤字額増))。2014年と比較すると、2024年では、「著作権等使用料」は約2.1倍、「コンピュータサービス」 は約3.3倍、「専門・経営コンサルティングサービス」は約5.4倍に赤字額が膨らんでいます。

財務省貿易統計に基づき、の日本からの輸出額と日本への輸入額の差引額を確認すると、その赤字額は近年増加の傾ICT※財向が見られ、2024年では約3.4兆円の赤字となっています。内訳を項目別にみると、2024年の黒字額が最も大きいのは「その他の電子部品」であり、次いで「集積回路」となっています。一方、赤字額が最も大きいのは「携帯電話機」であり、近年、赤字額の拡大が続いています。続いて「パーソナルコンピュータ」、「電子計算機本体(パソコンを除く。)」、「有線電気通信機器」となっています。黒字額が大きいのは部品・部材等で、赤字額が大きいのは最終製品という傾向があります。
※ 「Information and Communication Technology」

(出典)総務省
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/pdf/index.html

(つづく)平林良人

-実践編・応用編

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