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経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティング 2

投稿日:2026年4月7日 更新日:

経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティング 2

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。
経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングの実現に関する研究会では、令和7年2月から10回にわたり、経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングに必要な能力、キャリアコンサルタントが当該能力を得るために有効な制度その他の施策の在り方、及びキャリアコンサルティングの活用活性化のために有効な施策について検討を行ってきました。前回に続き、その結果を報告します。

経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングの実現に関する研究会|厚生労働省

■すべての領域において共通に追加・強化が必要な能力
(「開発型」の支援)
◆経済社会情勢や労働者自身のニーズの変化が激しい現在においては、様々な雇用形態の在職者、求職者、就職をめざす学生・生徒、さらにはリ・スキリングや社内でのキャリア再構築が求められるミドル層などに加え、障害者、高齢者、女性、外国人、若年者、生活困窮者など、あらゆる世代・立場の人々が、自身の将来のキャリアを見据え、自律的・主体的なキャリア形成に取り組む必要があります。

◆このため、キャリアコンサルタントには、キャリア形成について問題を抱えた労働者の課題解決を支援する「解決型」の支援だけでなく、労働者が自身の職業人生において目指す姿、将来ありたい姿を自ら設定し、その実現のために必要な職業・職務の選択や能力開発などの課題を明らかにした上で、課題の達成に向けて取り組み、最終的には労働者が自らキャリアを形成する力、自分を継続的に高め続ける力を身につけることを支援する「開発型」の支援を行うことが求められます。

(自己理解・仕事理解・環境理解の支援)
◆労働者が自らキャリアを形成する力を身につけることをめざす「開発型」の支援にあたっては、様々な情報を活用して、相談者の自己理解・仕事理解・環境理解を促進する支援を行うことが必要です。

特に、経済社会情勢が大きく変化する中においては、AIなど技術革新が進展する中で新たに必要とされる知識・技能や、様々な業界における労働需要・労働条件の変化、労働者のキャリアや働き方の変化などについての将来予測も含めた最新の情報を活用した支援が求められます。
◆このため、キャリアコンサルタントには、行政データ、研究機関の調査などの信頼性の高い情報や現場の実践知などの多様な情報を収集・分析し、適切な形で相談者に提供するほか、AI等のデジタルツールの適切な活用方法を含め、相談者自身による情報の取得に関する助言を行うことにより、相談者が職業と自身をとりまく環境に関する理解を深められるよう支援することが求められます。

◆加えて、キャリア・シートやアセスメントツールを活用しつつ、相談者の自己洞察を促す面談を行うほか、キャリア研修やグループアプローチなどを実施することにより、自己理解の促進を図ることができる能力が求められます。

(職業生活設計に関する支援)
キャリアコンサルタントには、相談者が、将来予測も含めた最新の情報に基づく自己理解・仕事理解・環境理解を踏まえて、自ら取り組むべき課題を把握し、必要な能力開発と職業選択に向けた職業生活設計を行えるよう支援することが求められます。

◆その際には、相談者が、働く環境、社会や産業の変化の中で捉える理解と自身の価値観や経験に基づく理解を統合し、働くことの意味や意義の発見・理解にまでつなげていけるよう支援することが重要です。

◆また、労働者のキャリアが多様化していることを踏まえると、例えば、育児・介護を行いながら働く労働者や、セカンドキャリアについて考えている中高年齢層など、様々な属性を持つ労働者が、それぞれの価値観や生活スタイルに応じて希望する働き方を踏まえたキャリア形成に取り組んでいけるよう支援することが重要です。

◆このため、キャリアコンサルタントには、様々な属性の労働者の就業の実態に関する情報や、特有の課題及び解決方法に関する知識、労働関係法令や社会保障制度も含めた各種支援制度に関する情報を踏まえ、労働者の属性に応じた職業生活設計を支援できる能力が求められます。

(職業の選択に関する支援
◆相談者に対して職業の選択に関する支援を行う際には、将来予測も含めた最新の情報を踏まえ、長期的なキャリア形成に資する選択が行われるよう支援することが必要です。なお、この際には、現在の職業や職務に引き続き従事することが能力の開発・向上につながり、キャリア形成に有効である場合があることにも留意する必要があります。

◆相談者が実際に就職・転職・職種転換を行う際には、地域における求人・求職の状況や労働条件などに関する情報を相談者に提供し、具体的な選択肢を提示するとともに、相談者が自らの選択基準を明確化し、提供された情報を踏まえて主体的に意思決定できるよう支援できる能力が求められます。

◆加えて、応募書類の作成や面接対策などの就職活動に関する支援を行うほか、環境変化に伴う相談者の不安や迷いを受けとめ、その心理的受容を支えるなど、行動面と心理面の両面における支援を行うことができる能力が求められます。

(職業能力の開発及び向上に関する支援)
相談者が、教育訓練等の受講及び自己啓発による能力開発に取り組む際にも、キャリアコンサルタントによる適切な支援が欠かせません。具体的には、必要な知識・技能を身につけることができる教育訓練等や自己啓発に関する情報及び能力開発を行う際に活用できる支援制度などの情報の提供や、職務経験を通じた主体的な能力開発に対する支援を行うことが求められます。

◆加えて、環境変化が激しい中で自らのキャリアプランの実現に取り組む労働者を支える観点から、相談者が主体的に能力開発に取り組むことができるよう動機づけの支援を行うことが重要です。また、教育訓練等の受講にあたっては、進捗状況の確認や必要なサポートを行い、相談者が自ら能力開発に主体的に取り組み、継続できるような伴走的な支援が有効です。

(組織・環境への働きかけ及び専門家等と連携した支援)
経済社会情勢や労働者の働き方が大きく変化する中、労働者が抱える課題は複雑化・多様化している。このため、労働者のキャリア形成支援にあたっては、1対1のキャリアコンサルティングによる支援だけでなく、労働者のキャリア形成を促進する環境の整備や、手厚い支援が必要な者への支援の強化に向けて組織や環境、社会への働きかけを行う、いわゆるアドボカシー支援を行うと同時に、複数の専門家が連携した支援を行うことが求められます。

◆特に、労働者のキャリアが多様化する中、労働者が生涯にわたり充実した職業人生を送るためには、ライフステージや就業状況の変化に応じて、複数の領域にまたがる支援が切れ目なく提供されることが重要であり、その際には、複数の領域で活動するキャリアコンサルタントや他職種の専門家が、連携した支援を行うことが求められます。このため、キャリアコンサルタントには、自らの専門性を基盤としつつ、他領域におけるキャリアコンサルティングや他職種の専門家の業務に関する知識ももった上で、適切な連携やリファーを行うことができる能力が求められます。

 
(AI等のデジタルツールを活用した支援)
◆デジタル技術が急速に進化する中、AI等のデジタルツールをデータ収集・分析等のツールとして活用する機会が増えていることに加え、労働者に対するキャリアコンサルティング自体にAIを活用する例も見られるようになってきています。

◆こうした中、キャリアコンサルタントには、AI等のデジタルツールを活用して情報を収集・分析する能力に加え、AIが提示する情報の正確性や妥当性を見極める能力や、倫理面の問題が生じない形でAIをキャリアコンサルティングの質を高める支援ツールとして効果的に活用する能力が求められます。

企業領域において追加・強化が必要な能力
(企業領域のキャリアコンサルタントが果たすべき役割)
企業において従業員のキャリア形成を促進していくためには、従業員に対する直接的な支援に加え、従業員の自律的・主体的なキャリア形成の重要性についての企業の理解の促進や、従業員のキャリア形成を支援する環境の整備など、組織や環境への働きかけをキャリアコンサルタントが行っていくことが重要です。

(従業員の自律的・主体的なキャリア形成についての企業の理解の促進)
キャリアコンサルタントには、従業員の自律的・主体的なキャリア形成を促進することが従業員の主体性や能力、エンゲージメントの向上につながり、生産性の向上や人材の定着に寄与することについて、データや理論的根拠を踏まえて、企業の理解を促すことが求められます。特に、自律的・主体的なキャリア形成の促進は必ずしも転職につながるものではなく、従業員が自らの強みと希望に基づき組織内で力を発揮することを促すものであることについて、企業の理解を促進することが重要です。

◆また、従業員の自律的・主体的なキャリア形成を支援するキャリアコンサルティングや関連
施策の役割及び有効性について企業の理解を促すこととあわせ、これらの支援を社内で継続的に行えるようにする仕組みであるセルフ・キャリアドックについて、導入のメリットを企業に伝え、導入・活用に向けた働きかけを行うことも必要です。

◆加えて、職業能力開発促進法において、労働者の職業生活設計に即した自発的な職業能力の開発及び向上の促進、具体的には労働者の職業能力の開発及び向上の促進に係る各段階または労働者の求めに応じてキャリアコンサルティングの機会を確保すること等が事業主の講ずる措置として定められていることについて事業主の理解を促進することも重要です。

◆こういった働きかけを行うにあたって、キャリアコンサルタントには、企業の経営課題と人材戦略の関連性を整理し、客観的なデータや事例を用いて、経営層の理解を促し、意思決定を支援する能力が求められます。

(従業員のキャリア形成及び能力開発に関する協業・支援)
◆キャリアコンサルタントには、従業員に対して、企業内の人材配置や各部門における業務内容を踏まえたキャリアコンサルティングを行うことにより、能力開発、適性を活かした役割変更・配置転換及び職場適応に向けた支援を行うことに加え、経営層や人事部門と連携・協力した支援を積極的に行うことが求められます。

◆具体的には、経営層や人事部門に対して、従業員のキャリア形成や能力開発の進捗状況と、それが人材の確保・定着・生産性向上といった経営上の課題解決にどう寄与するかをデータ等で示すほか、組織内の人材育成・配置、職場風土などの課題を含め、従業員のキャリア形成に関する職場の課題や従業員のニーズを共有し、経営層が自社の組織や従業員の理解を深めることを支援するとともに、このような情報の分析結果に基づく提案を関係部門と協業しながら行うことが求められます。

◆なお、労働者を取り巻く環境が激しく変化する中においては、労働者自身の将来のキャリア形成に対する意識や保有する知識・技能の状況を定期的にチェックする仕組みの導入・活用が効果的です。この定期的なチェックの仕組みにより、労働者の自律的・主体的なキャリア形成に向けた意識の向上や労働者自身をとりまく環境に対する理解の促進が図られるとともに、保有する知識・技能が可視化されることにより、企業による能力開発支援や適切な人材配置が円滑に行われるようになることが期待できます。また、あわせて、チェックの結果明らかになった職場の課題を企業にフィードバックし、個人の自律と組織の活性化をつなげることも可能となります。

◆また、従業員のキャリア形成支援は、企業全体として計画的に行われることが重要であることから、キャリアコンサルタントには、能力開発・研修計画の企画と運営など、企業による従業員のキャリア形成や能力開発の促進に向けた計画を、経営者や人事部門と連携しながらともに設計・実施できる能力が求められます。

◆このような協業を行う際には、例えば、経営者、人事部門の責任者、社内のキャリアコンサルタント等が定期的に話し合う委員会などの場を設けることで、経営層や人事部門と労働者の相互理解が深まり、労働者の主体性を尊重しながら、企業と従業員の双方にメリットをもたらすキャリア形成支援が実現することが考えられます。

(従業員のキャリア形成支援に向けた環境づくり)
◆従業員のキャリア形成支援を円滑に進めるためには、従業員が職場に適応し、様々な職務を経験する中でキャリア形成に取り組めるようにするための環境づくりも重要です。
具体的には、労働者個人への支援だけでは解決できない問題への対応のため、個別面談から得られた情報を個人レベル・組織レベルで分析したデータに基づいて職場の課題の解決に向けた改善策の提案を行うほか、多様な人材が活躍できる職場環境の整備に向けて企業が行う施策への協力、人事部門や管理職が配置・配属・評価や能力開発・育成方針に関して労働者とコミュニケーションをとる際の助言、メンタルヘルス対策への支援などを行う必要があります。

◆こういった支援については、キャリアコンサルタント単独ではなく、企業内の各部門や社内外の専門職と連携したチームでの支援を行うことが重要であることから、キャリアコンサルタントには、守秘義務に留意した上で連携支援を円滑に行うことができる能力が必要です。

◆また、従業員の職場適応を促進するためには、仕事のやり方や周囲への働きかけ、仕事の捉え方・考え方に対して従業員自身が工夫を行う、いわゆるジョブ・クラフティングの考え方を活用し、従業員が業務や役割を主体的に捉え直すことを支援することも有効であり、キャリアコンサルタントにはこういった支援を適切に行うことができる能力が求められます。

 

-実践編・応用編

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