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キャリアコンサルタント国家試験合格 59 | テクノファ 

投稿日:2021年5月1日 更新日:

キャリアコンサルタント国家試験に役立つ法整備について勉強しましょう。今回はキャリアコンサルタントのキャリアコンサルティング業務に係りがある、働き方改革を実行するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)の説明をします。

働き方改革関連法は、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を総合的に推進するため、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等を目的とした法律で、「労働基準法」、「労働安全衛生法」、「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」、「じん肺法」、「雇用対策法」、「労働契約法」、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」の8つの労働に関する法律の他に、関連する複数の法律の改正をひとつにまとめたものです。2018年6月に可決、成立し7月に法律公布、改正された関連法律は順次施行されています。キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティング業務を行う上でかかわりがある法律の改正を伴うものです。関連する法律の改正内容を規定する、働き方改革関連法を要約して下記します。

  • 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律

この法律は多くの法律に関連していますが、先に説明した労働に関する8つの法律についての主な改正点は次のようになります。
1.第一条 労働基準法関係
・フレックスタイム制の拡充
・時間外労働の上限規制
・年5日の年次有給休暇の確実な取得
・高度プロフェッショナル制度の創設
・月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率引上げ
・労働条件の明示の方法
・過半数代表者の選任
2.第二条 じん肺法関係
・健康情報の取扱いルールの明確化・適正化
3.第三条 雇用対策法関係
題名改正
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
・国による基本方針の策定
・関係機関への要請
・中小企業における取組の推進のための関係者間の連携体制の整備
4.第四条 労働安全衛生法関係
・産業医の独立性・中立性の強化
・産業医等への情報提供の充実・強化
・産業医の活動と衛生委員会等との関係の強化
・労働者からの健康相談に適切に対応するために必要な体制整備等
・労働者の心身の状態に関する情報の取扱い
・産業医等の業務の内容等の周知
・長時間労働者に対する面接指導
5.第五条 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律関係
・派遣元事業主の派遣労働者に対する不利益な取扱いの禁止
・①派遣先の労働者との均等・均衡待遇、②同種業務の一般労働者の平均的な賃金と同等以上の賃金などの要件を満たす労使協定による待遇、のいずれかを確保することが義務化。
6.第六条 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法関係
・勤務間インターバル制度の導入
・取引上の必要な配慮
・労働時間等設定改善企業委員会
7.第七条 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律関係
題名改正
短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律
・基本的理念策定
・個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断される
・正規雇用労働者との同一条件での差別的な取扱いの禁止
・待遇内容、正規雇用労働者との待遇差などの説明義務の強化
・事業主による短時間・有期雇用労働者に対する不利益な取扱いの禁止
8.第八条 労働契約法関係
・目的規定改正
・第二十条の期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止を削除
厚生労働省参考資料 出典 https://www.mhlw.go.jp/content/000611834.pdf

今回は、キャリアコンサルタントのキャリアコンサルティング業務に係る働き方改革で、働き方改革関連法で改正された「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」の改正項目を説明します。

  • 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法

<改正項目>
労働時間等の設定の定義に、深夜業の回数、終業から始業までの時間を追加する(勤務間インターバル制度を可能にする)変更が行われた。
取引を行う場合、著しく短い期限の設定及び発注の内容の頻繁な変更を行わないよう努めることが新設された。
労働時間等設定改善企業委員会の決議を労働基準法で定める割増賃金、有給休暇の労使 協定に代えることができることを新設。

下記条文のアンダーラインは働き方改革関連法により新設された、或いは影響ある変更のあった条文です。

(目的)
第一条 この法律は、我が国における労働時間等の現状及び動向にかんがみ、労働時間等設定改善指針を策定するとともに、事業主等による労働時間等の設定の改善に向けた自主的な努力を促進するための特別の措置を講ずることにより、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、もって労働者の健康で充実した生活の実現と国民経済の健全な発展に資することを目的とする。

(定義)
第一条の二 この法律において「労働時間等」とは、労働時間、休日及び年次有給休暇その他の休暇をいう。
2 この法律において「労働時間等の設定」とは、労働時間、休日数、年次有給休暇を与える時季、深夜業の回数、終業から始業までの時間その他の労働時間等に関する事項を定めることをいう。

(事業主等の責務)
第二条 事業主は、その雇用する労働者の労働時間等の設定の改善を図るため、業務の繁閑に応じた労働者の始業及び終業の時刻の設定、健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。
4 事業主は、他の事業主との取引を行う場合において、著しく短い期限の設定及び発注の内容の頻繁な変更を行わないこと、当該他の事業主の講ずる労働時間等の設定の改善に関する措置の円滑な実施を阻害することとなる取引条件を付けないこと等取引上必要な配慮をするように努めなければならない。

(国及び地方公共団体の責務)
第三条 国は、労働時間等の設定の改善について、事業主、労働者その他の関係者の自主的な努力を尊重しつつその実情に応じてこれらの者に対し必要な指導、援助等を行うとともに、これらの者その他国民一般の理解を高めるために必要な広報その他の啓発活動を行う等、労働時間等の設定の改善を促進するために必要な施策を総合的かつ効果的に推進するように努めなければならない。

(適用除外)
第三条の二 この法律は、国家公務員及び地方公務員並びに船員法の適用を受ける船員については、適用しない。

(労働時間等設定改善指針の策定)
第四条 厚生労働大臣は、第二条に定める事項に関し、事業主及びその団体が適切に対処するために必要な指針を定めるものとする。

(労働時間等の設定の改善の実施体制の整備)
第六条 事業主は、事業主を代表する者及び当該事業主の雇用する労働者を代表する者を構成員とし、労働時間等の設定の改善を図るための措置その他労働時間等の設定の改善に関する事項を調査審議し、事業主に対し意見を述べることを目的とする全部の事業場を通じて一の又は事業場ごとの委員会を設置する等労働時間等の設定の改善を効果的に実施するために必要な体制の整備に努めなければならない。
(つづく)A.K

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