キャリアコンサルタントの知恵袋 | 株式会社テクノファ

実践に強いキャリアコンサルタントになるなら

基礎編・理論編

エトガー・H・シャインの著作「組織文化とリーダーシップ」Ⅱ‐3

投稿日:2026年6月19日 更新日:

横山哲夫先生の思想の系譜

キャリアコンサルタントが知っていると良いと思われる「組織文化とリーダーシップ」を紹介します。本記事はエトガー・H・シャインの著作「組織文化とリーダーシップ」を横山先生が翻訳されたものです。横山先生はシャインが2006,7年頃(記憶があいまいですみません)来日した時の立役者(JCC:日本キャリア・カウンセリング研究会が招待した、彼と娘さんが来日した)で、東京、大阪でシャインが講演をする際にいつも同席し、そればかりか新幹線で京都案内までされて、ごくごく親しく彼の人柄に触れた唯一の日本人でありました。

<ここより翻訳:2010年シャイン著>
信奉された信条と価値観
私の解答について,とくに私が驚き,怖れを感じたことについてDECの人たちに語りはじめると,それらによって企業が運営されている「信奉された信条や価値観」の一部を引き出すことが可能になった。このうちの多くは,オルセンが折に触れて書き記したスローガンやたとえ話に表明されており,全社中に広まっていた。たとえば,個人ごとの責任に高い価値が認められていた。もし誰かが提案を行い,それが承認されると,その個人にはそれを遂行する明確な義務が課せられた。もし遂行が不可能となれば,もう一度挑戦し,再交渉に臨む。「提案した人が遂行する」という言葉がDEC内でしょっちゅう交わされていた。

すべてのレベルの社員が,自らが何をしようとしているのかを考え,つねに「適切なことを成し遂げる」ことを推し進めることに責任を負っていた。これは従順に陥らない自由を意味していた。もし上司が,あなたが間違っており,馬鹿げていると考えていることをあなたに実行するように求めたとしたなら,あなたはそれを「押し返し」,上司の考え方を変えさせるように努めるべきであった。それでもなお上司が自説を主張し続け,しかもあなたがそれは正しくないと感じたら,それを実行せず自分の判断に委ねるべきであった。もしあなたの判断が間違っていれば,ほかの人から手をぴしゃりとたたかれるだろう。しかし自分の信念を曲げずにすっくと立ち上がったことに対してはほかからの敬意を集めることになる。また上司たちもこれらのルールを理解していたので,自分勝手な命令を下すことはなく,むしろあなたが上司の提案を押し戻した場合には,あなたの言い分に耳を傾け,その意思決定について再交渉を認めてくれた。したがって,無駄な抵抗は全く必要ではなかった。しかし自分自身で考え,適切なことを実行するという原則はつねにきわめて強力に補強され続けていた。

また,ある意思決定を実行する責任を担う人たち,さらに必要なサービスを提供してくれる人たち,その決定から影響を受け人たちから「賛成」を得ずにものごとを開始してはならないというルールも存在していた。社員たちはきわめて独立的であると同時に,すぐれたティームプレーヤーであることも求められていた。この意味で,コミティー活動は時間の無駄だという感覚とコミティーなしには何ごとも実行できないという感覚が共存していたのだ。意思決定に至るには,ほかの人たちからの賛成を得るためにその人物は,自身の説が正しいことをほかの人たちに納得させ,さらに可能な限り,反論に対して自説を防衛することが求められた。この際に私自身がグループで観察したように,高次元の対話と論争が引き起こされるのである。しかしその主張がこのレベルの激しい論争に耐え,勝ち抜くことができたときには,すでにすべての人たちがこの案が実行に値するすぐれた案であることを納得しているから,前に進めることができ,実行に移すことが可能になった。この方法はたしかに長い時間がかかるけれども,実行段階では一貫した,より迅速なアクションが可能となった。また階層組織のどこかで,誰かがそれは「実行に値する正しいことである」との確信が持てないといいだし,その意思決定の行く手を阻まれることもあり得た。このような場合にはその人物は自説を考え直し,もう一度,自分の主張を聞いてもらい,自説を引っ込めることを決断するか,もしくはもう一度階層構造をさかのぼって再交渉に臨むかの選択を迫られた。
(つづく)平林良人

-基礎編・理論編

執筆者:

関連記事

若者の職業選択とキャリア形成

今回は職業選択とキャリア形成について考えてみたいと思います。 若者の支援においては、失敗経験等により自尊心が傷ついたり、自己評価の低い者への配慮が求められる。自尊心の回復や信頼関係の構築の後、経験の棚卸しや学習歴、資格等を確認し、相談者が自己の行動特性に対して、適切な自己評価を行えるように支援することが有効であると考えられる。 若者支援においては、仕事や企業に関する研究不足が離職につながる可能性が高いことを認識し、幅広い職業・業界の知識や企業情報、労働に関する知識等を若者が理解するように支援することが求められる。中でも、企業における人材育成・活用の考え方や施策、工夫を理解し、個人と組織の両面が …

横山哲夫先生の思想ー人間自由化の具体的展開 6

横山哲夫先生が2019年6月に逝去されて今年は7回忌になります。テクノファでは2004年に先生のご指導でキャリアコンサルタント養成講座を立ち上げさせていただいて以来、今年まで実に16年もの間先生の思想に基づいたキャリアコンサルタント養成講座を開催し続けさせていただきました。 横山哲夫先生はモービル石油という企業の人事部長をお勤めになる傍ら、組織において個人が如何に自立するか、組織において如何に自己実現を図るか生涯を通じて研究し、又実践をされてきた方です。 横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずで …

横山哲夫先生の思想ー組織文化とリーダーシップ6

横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるという鋭い分析のもと数多くの研究成果を出されてきております。 今回はその中からキャリアコンサルタントが知っていると良いと思われる「組織文化とリーダーシップ」を紹介します。 本記事はエトガー・H・シャインの著作「組織文化とリーダーシップ」を横山先生が翻訳されたものです。横山先生はシャインが2006,7年頃(記憶があいまいですみません)来日した時の立役者(JCC:日本キャリア・カウンセリング研究会が招待した、彼と娘さんが来日した)で、東京、大阪でシャインが …

キャリアコンサルタントの行う相談過程6ステップ 2

前回に続き、キャリアコンサルタントが行う相談の6ステップについて、第四ステップ~第六ステップを説明します。 第一ステップ :「自己理解」の支援 第二ステップ :「仕事理解」の支援 第三ステップ :「啓発的経験」の支援 第四ステップ :「意思決定」の支援 第五ステップ :「方策実行」の支援 第六ステップ :「新たな仕事へ適応」の支援 我が国のキャリアコンサルティング技法の礎である、「キャリア・コンサルタント技法等に 関する調査研究報告書」(平成 13 年 厚生労働省)では、次の内容が示されている。 「個人のキャリア形成は、(1)自己理解、(2)仕事理解、(3)啓発的経験(意思決定を行う前 の体験 …

自己理解と他者理解3 ーキャリアコンサルタントの知恵袋|テクノファ

キャリアコンサルタントに有用なお話をしたいと思います。「自己理解と他者理解」について考える第3回目です。 前回は自己理解について触れました。今回は他者理解について考えてみたいと思います。他者と言っても様々な方がいると思いますが、ここでは一例として、「上司」を対象とし、「上司知る」ということについて考察してみたいと思います。まずは、「他者理解」について考えてみます。 他者理解とは、他の人の意見、考え方、視点などについて、どうしてそのようになるのかを対象者(他者)の立場に立って、考え、想像し、理解しようとする心構えであるといえます。まずは自分の考えなどは入れず、自分が対象者の立場ならば、という視点 …