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基礎編・理論編

キャリアシートの作成について指導する場合の要点を説明します

投稿日:2024年6月16日 更新日:

キャリアコンサルタントの力ウンセリング基本的スキルとしてのキャリアシートの作成指導について説明します。キャリアシートは、職業経験のある人が自分の過去を振り返り、技能や能力について把握し、過去の職務や経験を評価し、今後の希望や計画をまとめるためのシートです。特に定められた形式はありません。

■履歴書、職務経歴書との違いとは
キャリアシートと似たようなもので従来から使用されているものに、履歴書と職務経歴書があります。履歴書は趣味なども記述しますので、公式の自己紹介書ともいえるもので、文字どおり自分の履歴を書くものです。したがって、職業経験がない人も使う場合があります。定型化されたものは文房具店で購入することができます。
職務経歴書は、履歴書を補足するものとして使用されます。自分の過去の職業経験について、それぞれの職務内容、職責、実績を分析し、まとめて記述したものが職務経歴書です。職務経歴書にも定められた形式はありません。
履歴書、職務経歴書は自分の過去について記述するものですが、キャリアシートには自分の過去および現在についての分析と評価も記述し、さらに今後の計画や希望、自己啓発プランまでも記述します。

項目

(1)本人の属性に係る部分
ー氏名、性別、生年月日・年齢、現住所、最終学歴、勤務先
(2)自己理解に係る部分
ーキャリア志向性・自己認識
ー職務歴・その他特記すべき事項
ー代表的職務
ー学習歴・その他特記すべき事項
ー資格・免許、著作権・特許
ー職業能力のまとめ
(3) 意思決定に係る部分
ー今後の目標
(4)その他
ー自由記述)
キャリアシートの記入等
(1)キャリアシートの記入は従業員本人が行う。
(2)キャリアシート記入は、
1. 相談の際、本人が相談担当者の助言を得ながら記入する方法
2. 相談後において、本人が一人で記入する方法 が考えられます。
キャリアシートの保存
(1) 人事異動や転職等の後においても本人が保存し、必要に応じて追記しながら活用することを想定しています。
(2) また、キャリアシートに記入された情報の原資料(例えば、テスト結果等)もキャリアシートに添付して保存しておく必要があります。
(3) なお、企業側においては、キャリア・コンサルティング結果の雇用管理への活用やその後における相談の円滑な実施のため、従業員本人の了解を得た上で、企業内においてもキャリアシートの写し(一部又は全部)を保存することも考えられます。

引用 キャリア・コンサルティング技法等に関する調査研究報告書の概要 (mhlw.go.jp)

キャリアコンサルタントはキャリアシートとの違いを認識しておくと良いと思います。

■キャリアシートの作成手順
キャリアシートの作成作業は、まず、職務の棚卸しから始めます。最初は、経験した企業名、所属、勤務地、職位、職責、職務内容、職種、能力開発(受講した訓練などとともに習得した技能、スキルなど)を経験順に整理します。次に、職務の変遷を整理します。最後に、仕事の領域ごとに職務の明細を整理し、自己評価をします。これら3つの作業で整理したものを参考にしながら、企業歴、職務歴、仕事の実情、自己啓発プラン、地域活動(ジョブ以外のワーク)、キャリアプランなどをキャリアシートとしてまとめます。

キャリアシート作成手順

キャリアコンサルタントの相談の基本的な流れ
次に力ウンセリングの基本的スキルとして、相談過程全体のマネジメントスキルについて説明します。キャリアコンサルタントの相談は、図のような6つのプロセスから成り立っています。

キャリアコンサルタントの相談の過程は、上記の図のようにキャリア形成は基本的に次の6つのステップで構成されており、相談担当者は各ステップにおける従業員の活動を援助することになります。この6ステップを相談の中で適切に行うことにより始めて目標を達成できると言えます。

①自己理解:進路や職業・職務、キャリア形成に関して「自分自身」を理解する。
②仕事(職業・職務)理解:進路や職業・職務、キャリア・ルートの種類と内容を理解する。
③啓発的経験:選択や意思決定の前に、体験してみる。
④意思決定:相談の過程を経て、(選択肢の中から)選択する。
⑤方策の実行:仕事、就職、進学、キャリア・ルートの選択、能力開発の方向など、意思決定したことを実行する。
⑥新たな仕事への適応:それまでの相談を評価し、新しい職務等への適応を行う。

この6ステップは、他の機関等が行うキャリア形成に関する相談と共通の基本的な原則となっています。よって、この6ステップのうち、一般に、どれが特に大事だということではありませんが、相談事業の対象者、目的等によって、当然のことながら、これらの6ステップの取り扱いの濃淡は異なるものとなります。
なお、本マニュアルにおいては、主に企業内で原則として全ての従業員を対象として行われるキャリア・コンサルティングを取り扱っていることから、6ステップのうち、どのような従業員にとっても、自らが主体的にキャリア形成を行う上で基本となり重要である「(1)自己理解」と「(4)キャリア選択に係る意思決定」について、特に詳細に解説を加えています。

■つまずいたら、そのつど「自己理解」に戻る
 キャリアコンサルタントの活動は順調に進めば問題はありませんが、必ずしも相談者全員が順調にいくとは限りません。図の中の点線の矢印は、どの段階であっても、そこでつまずいたらもう一度自己理解に戻って点検し、引っかかったところからやり直すことを意味しています。そのためにも、キャリアコンサルタントは自分のクライエントとは緊密に連絡を取り合い、適切なフォローアップをしなければなりません。
(つづく)H.K

-基礎編・理論編

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