キャリアコンサルタントの知恵袋 | 株式会社テクノファ

実践に強いキャリアコンサルタントになるなら

基礎編・理論編

目標管理の悲劇ーキャリアコンサルタントの知恵袋|テクノファ

投稿日:2024年4月23日 更新日:

■目標管理の悲劇
テクノファのキャリアコンサルタントを指導した横山哲夫先生(1926-2019)は、1980年台目標管理は失敗したが、時代が早すぎた。今日(2024年)みたいに「個人が自立して働く時代」だったら絶対に必要なものであると予想していたはずです。目標管理を原産地米国から学んだ時機がよくなかった。何をつくっても売れる高度成長の時代には、借り物の技術に集団的機動力を加えれば万事がうまく運ぶようにみえる。そういう時代に、新しい経営、新しい人事管理の理念や手法について地道で、本格的な取り組みが行なわれることはありませんでした。この時代、多くのアメリカ式経営の手法が流行のように伝えられ、忘れ去られていきました。MBOもいわばその一つになってしまったのです。学者・研究者はともかく、経営の現場では、一部の、熱心な支持者と戦後の新興企業を除いて、日本の大方の経営者に大きな影響を与えることはありませんでした。集団的機動力をもって事に当たれば間違いなくよい結果を得られることをまざまざと見てきた経営者にとって、組織集団の中の「個」の尊重、集団目標の個別化の提言は、異和感を誘うことはあっても、正当な取り組みへの動機づけになるはずがなかったのです。そして、高度成長がオイルショックを機に、ゼロ成長、低成長に急転すると、大方の企業はひたすら生存のためのぎりぎりの忍耐と、明日の糧を得るための必死の知恵をふりしぼることとなりました。

かくして、目標管理は死に絶えることはなかったにしても(皮肉にも、”努力目標”や”ノルマ目標”が命運をつないだ?)片隅に追いやられ続けたのである。唯一の救いは、自己啓発、教育訓練との結びつきであった。どんな時代でも、自己啓発の重視を唱えることには、どこからも異論は出ない。経営者にとっては痛みもリスクもなく、経営責任の一端を転嫁できるうまみもある。せいぜい自己啓発の援助、奨励と結びつけ、能力向上のための教育訓練費用の支出で事足りる。かくして、目標管理の本格的導入のなし得なかった人事・教育担当者は、わずかに自己啓発・教育訓練の分野に極限された目標管理にその生存をはからざるを得ないことになってしまった。

出典 個立の時代の人材育成 横山哲夫 生産性出版 2003年

目標管理の導入に悲観的な人達は、目標管理的な思考が日本人になじまない、目的合理主義は日本人の価値観や美意識にそぐわない、日本の伝統的発想は目標よりもプロセスの重視にあると言っていました。一生懸命やってできなければ仕方がないと、まわりも自分もそれだけで納得しやすいということが横山先生の時代の大方の人の反応でした。しかし、目標の個別化による、個別の仕事のすすめ方は新人類と呼ばれる、新しい日本人達とはよく歯車が噛み合い、世の中は個立指向ヤングを中心にこれから変わってゆくと横山先生は強調、予測していました。
(つづく)平林良人

-基礎編・理論編

執筆者:

関連記事

経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティング

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。 経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングの実現に関する研究会では、令和7年2月から10回にわたり、経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングに必要な能力、キャリアコンサルタントが当該能力を得るために有効な制度その他の施策の在り方、及びキャリアコンサルティングの活用活性化のために有効な施策について検討を行ってきました。今回、その検討の結果を報告します。特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会 キャリアコンサルティングをとりまく状況 ◆少子高齢化の進展に伴い、高齢者や女性の就業割合が増加するなど、就業構造 …

横山哲夫先生の思想ー人間自由化の具体的展開 3

横山哲夫先生が2019年6月に逝去されて今年は7回忌になります。テクノファでは2004年に先生のご指導でキャリアコンサルタント養成講座を立ち上げさせていただいて以来、今年まで実に16年もの間先生の思想に基づいたキャリアコンサルタント養成講座を開催し続けさせていただきました。 横山哲夫先生はモービル石油という企業の人事部長をお勤めになる傍ら、組織において個人が如何に自立するか、組織において如何に自己実現を図るか生涯を通じて研究し、又実践をされてきた方です。 横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずで …

ブリーフセラピー(Brief therapy:短期療法)とは

ブリーフセラピー(BFT)を取り上げます。キャリアコンサルティングにおいては、しばしば個人と部門・会社などの組織との関係性によって問題が生じることが少なくありません。これらの問題は直線的な因果関係から生じていることは極めて稀で、複数の事柄が相互に作用しあう因果関係から問題が生じ維持されていることがほとんどのケースに見られます。このような問題の解決は、単純に原因を探り対処するには無理があります。どちらかというと、問題を俯瞰して対処することが必要になります。 「①ほとんどの問題は人間関係の中で生まれ維持される、②セラピストの仕事はクライエントが何か新しいことをするように促すこと、③ほんの小さな変化 …

相談者の面接目標達成ヘルピング技法_キャリアコンサルティングとキャリアカウンセリング

ヘルピング技法のうち(1) かかわり技法(事前段階)の解説はご存知のことばかりで目新しくなく期待外れだったとの感想をお持ちの方がいらっしゃったと思います。 しかしながら、私はキャリアカウンセリングであってもキャリアコンサルティングであってもこの目新しくないという点がとても重要なことだと思っています。これは、実際の個々のキャリアコンサルティングの場面を重ねて、國分康孝1996年のカウンセリング技法論における『面接目標達成のために、カウンセラーがクライエントにどういう反応を重ねていくか。』を再考してみると、次のように考えられるからです。 まず、面接目標について担当したケースを振り返ってみると、似て …

コミュニケーション理論に基づくBFT統合モデル

キャリアコンサルタントの面談でのMRIコミュニケーション理論に基づくBFT統合モデルをお話しします。これまでと同様に若島孔文 長谷川啓三2018「新版よくわかる!短期療法ガイドブック」金剛出版から主だった箇所を引用して紹介します。 (1) ノンバーバル‐マネジメント側面への介入 バーバル‐マネジメント側面とは長谷川らがコミュニケーションを、トピック的側面-マネジメント側面の軸とバーバル(言語)-ノンバーバル(非言語)の軸の2軸で分類した象限の一つである。マネジメント側面とは対話者相互で、そこでのコミュニケーション自体の流れを規定するコミュニケーション行動と位置付けられている。 この2軸によるコ …