キャリアコンサルタントの知恵袋 | 株式会社テクノファ

実践に強いキャリアコンサルタントになるなら

基礎編・理論編

キャリアコンサルタントの相談実施における留意事項

投稿日:2024年11月3日 更新日:

キャリアコンサルタントの相談実施における留意事項について説明します。

故木村周氏は著書『キャリアカウンセリング(改訂新版)』のなかで、キャリアガイダンスとキャリアカウンセリングについて、その他広く行われているガイダンスやカウンセリングと比較して、その特徴を述べています。

■キャリアコンサルタントの相談の特徴
①問題行動の除去や治療ではなく、個人のよりよい適応や成長、あるいは発達を援助することに重点を置く。
②進路の選択、職業選択、キャリアルートの決定などの具体的な目標達成を目指すことを援助する。
③特定の理論や手法にとらわれず、さまざまな理論や手法を使用する。
④6つのステップ(キャリアガイダンスの6分野)を基本とする。
⑤カウンセリングにおけるシステマティック・アプローチをモデルとし、キャリアコンサルティングのアプローチとしては折衷的である。
⑥力ウンセリング的なかかわり方を基本とするが、他にもコンサルテーション、関係者間の調整、教育も重視する。
⑦キャリアコンサルタントは、企業、学校、職業紹介機関、および職業能力開発機関において相談を行う。出典 木村周『キャリアカウンセリング(改訂新版)』

面接を効果的に行うためには、力ウンセリングの基本である積極的傾聴(アクティブ・リスニング)の理論を学び、そのうえで訓練を受け、スキルとして正しく習得しなければなりません。

■「聞く」と「聴く」の違い
キャリアコンサルタントが積極的傾聴とはどういうことかを理解するには、まず「聞くこと」 と「聴くこと」の違いを理解しなければなりません。簡単に言えば 「聞く」というのは単に聞こえているということであり、相手が言わんとすることに耳を傾けること。相手の話を理解しようとして耳を傾けるのが「聴く」ということです。したがって、聞くという行動は受動的であり、聞くときにはあまりエネルギーを使いませんが、聴くという行動は能動的であり、エネルギーを必要とします。
また、話には「事実(ことがら)」、「計画(欲求・希望・要望・願望)」、「感情(気持ち)」という3つの要素(話の3要素)があり、キャリアコンサルタントはその3つのうちのどれを自分のメッセージとして伝えようとするか認識する必要があります。それを正確に理解することが「聴く」 ということです。話し手の話がよく分からないときは、話し手がこの3要素を意識せずに話している場合、話し手のメッセージがこの3要素のうちのどれかが分からない場合、あるいはどの要素かがわかっても内容がわからないなど、さまざまな場合があります。この分からなさを確かめることは、聴き手の自己理解でもあります。

■ラポールの構築(関係構築)
相談場面では、来談者がキャリアコンサルタントを信頼して話す気にならなければ始まりません。そのため、まずは信頼関係を構築しなければなりません。その信頼関係をラポールといいます。相談はラポールの構築から始まります。そのためには、領いたり、あいづちを打ったりすることが効果的です。相手の話をきちんと聴いていなければ、うなずいたり、あいづちを打ったりすることができません。うなずいたり、あいづちを打つたりすることは、相手の話を聴いていることの証でもあります。

■パラフレージング
キャリアコンサルタントは、話し手が伝えようとしているメッセージが、話の3要素のうちのどれかを正確に理解するために、話の区切りで相手が言ったことを確認する必要があります。その際、相手が言ったことを一言一句そのまま繰り返すことをエコーイングといい、相手が言ったことを自分のことばに置き換えて返すことをパラフレージングといいます。
パラフレージングをすることにより、聴き手の理解が正しいかどうかを確認することができ、同時に話し手にとっては、自分が言ったことが相手に正しく伝わったかどうかを確認することができます。さらには、話し手にとっては自分の表現と違う表現で返してもらうことによって、新たな気づきにつながる可能性もあります。

■積極的傾聴の3つの条件
キャリアコンサルタントは、相手の言わんとしていることを正確に理解しようとするには、うなずき、あいづち、エコーイング、パラフレージングなどを的確に行えるようにならなければなりません。また、積極的傾聴ができるための条件が3つあります。それは、受容的態度、共感的理解、自己一致です。
①受容的態度
受容とは、相手の話を評価や解釈や判断を加えずに、ありのまま受け入れることです。たとえ、相手の話が間違っていようと、自分の考えと異なっていようと、あるいはまどろっこしい話だろうと、いったんそのまま受け取るということです。面談におけるクライエントとのやりとりはキャッチボールのようなものですが、その際に相手が投げてきたボールが曲がっていようが、まっすぐであろうが、右にそれていようが、左にそれていようが、あるいは高すぎても低すぎても、きちんと受け取るのが受容です。相手が投げてきたボールが、自分にとって受け取り難いボールなので受け取らないというのは普通の日常会話です。どんなボールでも受け取れるスキルが傾聴のスキルです。もちろん、受容はキャリアコンサルタント自身にもあてはまります。つまり、自分自身をありのまま受け入れることを自己受容といいますが、自己受容ができていなければ相手を受容することもできないからです。
②共感的理解
共感的理解とは、相手の話を自分の枠組みで理解するのではなく、相手の枠組みで理解することです。人間は誰でもその人なりの枠組み(Frame of Reference)を持っています。それは、その人の価値基準であったり、人生観であったり、キャリア観であったり、人間観であったり、経験であったり、さまざまです。それらは1人ひとり異なります。それが「その人らしさ」であり、多様性でもあります。話し手は、自分の枠組みで判断したこと、あるいは感じたことを話します。したがって、相手の気持ちや考えを正確に理解するというのは、相手の枠組みでその気持ちや考えを理解するということであり、それができなければ、キャリアコンサルタントは相手のことを正しく理解することはできません。
その際、パラフレージングは、相手の枠組みを確認するうえで、すなわち共感的に理解するうえで非常に効果を発揮します。しかし、そのためには受容が前提になります。相手の枠組みを受け入れることができなければ、共感的に理解することはできないからです。
③自己―致
自己一致とは、自分に対して誠実であることです。自己不一致の場合を考えみると理解しやすいので、自己不一致の例をあげてみます。
これは、誰かに同意を求められたときに、嫌な顔をしながら「いいですよ」と言っているような場合です。つまり、自分の気持ちと言動がー致していません。面接において、キャリアコンサルタントがこのように自分の気持ちに対して不誠実な言動をとってしまうと、来談者は混乱してしまいます。どちらのメッセージを受け取ればいいのかわからないからです。このように、表情や態度と言動がまったく逆のメッセージを送ることをニ重拘束(ダブル・バインド)といいます。
二重拘束は極端な例ですが、自己不一致はまったく逆のメッセージを送る場合のみとは限りません。本当に言いたいことを言っていないという場合も自己不一致です。自分自身の気持ちや感情を受容できていなければキャリアコンサルタントが自己一致していないことになり、来談者にとって的確なフィードバックにもなりません。したがって、来談者の自己理解を深めるうえでも効果的な面接にはならなくなってしまいます。

このように、受容、共感的理解、自己一致はそれぞれが独立したものではなく、関連しています。この3つが自分の中で統合されてはじめて、来談者中心となります。リスニング・トレーニング(傾聴訓練)のねらいはここにあります。

労働者等のキャリア形成における課題に応じたキャリアコンサルティング技法の開発に関する調査・研究事業 |厚生労働省
(つづく)平林良人

-基礎編・理論編

執筆者:

関連記事

目標管理の基本的概念

横山哲夫先生(1926-2019)はモービル石油という企業の人事部長をお勤めになる傍ら、組織において個人が如何に自立するか、組織において如何に自己実現を図るか生涯を通じて研究し、又実践をされてきた方です。先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるという鋭い分析のもと数多くの研究成果を出されてきております。 以下はキャリアコンサルタントに読んでいただきたい「個立の時代の人材育成」からの引用です。 ―目標による管理とは― 目標管理の基本的概念は単純明快である。 ① マネジメントは目標を明確に設定することか …

自己理解と他者理解3 ーキャリアコンサルタントの知恵袋|テクノファ

キャリアコンサルタントに有用なお話をしたいと思います。「自己理解と他者理解」について考える第3回目です。 前回は自己理解について触れました。今回は他者理解について考えてみたいと思います。他者と言っても様々な方がいると思いますが、ここでは一例として、「上司」を対象とし、「上司知る」ということについて考察してみたいと思います。まずは、「他者理解」について考えてみます。 他者理解とは、他の人の意見、考え方、視点などについて、どうしてそのようになるのかを対象者(他者)の立場に立って、考え、想像し、理解しようとする心構えであるといえます。まずは自分の考えなどは入れず、自分が対象者の立場ならば、という視点 …

民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン3

厚労省はISO29990を踏まえ、民間教育訓練機関が職業訓練サービスの質の向上を図るために取り組むべき事項を具体的に提示したガイドラインを発表しています。テクノファで行っているキャリアコンサルタント養成講座は、民間教育訓練機関におけるサービスの質の向上のガイドラインである「ISO29990(非公式教育・訓練のための学習サービス事業者向け基本的要求事項)」のベースであるISO9001に沿って行われています。 ●「民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン」 URL:2r985200000277tu.pdf PowerPoint プレゼンテーション サイト内検索結果|厚生労働省 3.3  …

リファー キャリアコンサルタント養成講座13 I テクノファ

- リファーできるフォローアップの重要性 - キャリアコンサルタント養成講座の12日間だけで本当に「本物のキャリア・カウンセラー」になれるかというとそれは違います。12日間の講座を受けて首尾よく合格したとしても、その時点ではキャリア・カウンセラーとしての出発点に立ったにしか過ぎません。さらにその後、キャリア・カウンセラーの資格を取得したあとでも「本物のキャリア・カウンセラー」を目指して、スーパーバイザーの指導を受け、さらなるスキルアップを図ることが必要だと思います。テクノファでは、そのようなフォローアップコースのステップを順次踏んでいただくために、有資格者を対象としたインターンシップをカウンセ …

民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン2

厚労省はISO29990を踏まえ、民間教育訓練機関が職業訓練サービスの質の向上を図るために取り組むべき事項を具体的に提示したガイドラインを発表しています。テクノファで行っているキャリアコンサルタント養成講座は、民間教育訓練機関におけるサービスの質の向上のガイドラインである「ISO29990(非公式教育・訓練のための学習サービス事業者向け基本的要求事項)」のベースであるISO9001に沿って行われています。 ●「民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン」 URL:2r985200000277tu.pdf PowerPoint プレゼンテーション サイト内検索結果|厚生労働省 3.1. …