キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。
文部科学省は、教育機会の確保や教育水準の維持向上のため、学習指導要領が目指す教育の実現、学校における働き方改革の推進科学技術系人材を育成するための理数教育の推進、グローバル人材の育成に向けた教育の充実、キャリア教育・職業教育の推進、高等学校改革の推進、教科書の充実、いじめ・不登校等の生徒指導上の諸課題への対応、道徳教育の充実、人権教育の推進、子供の健康と安全の確保、きめ細かで質の高い教育に対応するための教職員の資質能力向上や指導体制の整備、生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の振興、障害のある子供一人一人の教育的ニーズに応じた特別支援教育の推進、地方教育行政の在り方と地域とともにある学校づくり、少子化に対応した活力ある学校づくりの推進、夜間中学の設置 促進・充実及び幼児・児童・生徒に対する経済的支援の充実など、様々な施策を実施しています。
前回に続き、文部・科学技術施策の展開を紹介します。
f 外国語教育の充実
学習指導要領では、小・中・高等学校を通じた五つの領域(「聞くこと」、「読むこと」、「話すこと[やり取り]」、「話すこと[発表]」、「書くこと」)の言語活動を通して、コミュニケーションを図る資質・能力を育成することを目指しています。小学校中学年の外国語活動では、「聞くこと」、「話すこと[やり取り]」、「話すこと[発表]」の音声面を中心とした三つの領域で外国語に慣れ親しんだ上で、高学年からは、発達の段階に応じて「読むこと」、「書くこと」を加え、教科として学習を行っています。中学校では、小学校での学びを踏まえ、生徒が英語に触れる機会を充実するとともに、授業を実際のコミュニケーションの場面とするため、高等学校と同様に、授業を英語で行うことを基本としています。また、高等学校では、五つの領域を総合的に育成する科目群として「英語コミュニケーションⅠ・Ⅱ・ Ⅲ」を設定し、発信力の強化に特化した科目群として「論理・表現Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」を設定しています。(出典)文部科学省 令和5年版 文部科学白書
●我が国の子供たちの学力・学習状況
子供たちの学力・学習状況を調査するため、我が国では 「全国学力・学習状況調査」を実施するとともに、「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS:ティムズ)」、「OECD 生徒の学習到達度調査(PISA:ピザ)」に参加しています。 これらの調査結果を踏まえ、世界トップレベルの学力・学習意欲等を育むための取組を一層推進することが重要です。
○全国学力・学習状況調査の実施
文部科学省では、平成19年度から、全国の小学校6年生と中学校3年生の児童生徒の学力状況などを把握する 「全国学力・学習状況調査」を毎年4月に実施しています。
令和5年度の教科に関する調査の結果からは、国語においては、情報と情報との関係について理解することや、複数の情報を整理して自分の考えをまとめたり書き表方を 工夫したりすること、算数・数学においては、図形を構成する要素などに着目して図形の性質や計量について考察することや、問題解決の過程や結果を振り返って考察すること、英語においては、日常的な話題に関する文章の概要を捉えたり、社会的な話題について自分の考えや理由を表現したりすることに課題があることが分かりました。 また、質問紙調査の結果からは、①主体的・対話的で深い学びに取り組んでいる児童生徒の方が、平均正答率が高い傾向が見られること、②英語の授業において、実際に英語を使用して互いの考えや気持ちを伝え合うなどの言語活動に取り組む学校が増加しており、また言語活動に取り組んでいると受け止めている中学校生徒の方が、英語の平均正答率が高い傾向が見られること、③主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善を行っている学校ほど、ICT 機器を活用している傾向が見られること、④主体的・対話的で深い学びや個別最適な学びが、児童生徒の自己有用感の高さなどに影響を与えている可能性があることなどが明 らかになりました。
■教師を取り巻く環境整備
学校教育の中核であり、その成否を左右する教師に質の高い人材を確保することは必須であり、抜本的に教職の魅力を向上させることは喫緊の課題となっています。文部科学省では、教師のこれまでの働き方を見直し、教師が自らの授業を磨くとともに、その人間性や創造性を高め、子供たちに対して効果的な教育活動を行うことができるようにするため、教師を取り巻く環境整備に取り組んでいます。
●学校における働き方改革等に関する取組
学校における働き方改革は、何か一つをやれば解決するというものではなく、国・学校・教育委員会がそれぞれの立場において、教師が教師でなければできないことに全力投球できる環境を整備することが重要です。働き方改革答申を踏まえ、文部科学省では学校と社会の連携の起点・つなぎ役としての役割を前面に立って果たすため、文部科学大臣を本部長とする「学校における働き方改革推進本部」を設置し、小学校における35人学級の計画的整備や高学年における教科担任制の推進等のための教職員定数の改善、教員業務支援員をはじめとする支援スタッフの充実など、学校における働き方改革に関する施策を着実に展開してきました。
○勤務時間管理の徹底と学校・教師の業務の適正化等
まず何よりも、公平な「見える化」に向けた基盤である客観的な勤務時間の把握は、働き方改革を進めていく上で 必要不可欠なスタートラインです。労働安全衛生法等の改正により、ICTの活用やタイムカードなどの客観的な方法等による労働時間の状況の把握が公立学校を含む事業者 の義務として法令上明確化されており、さらに、指針においても、在校等時間は客観的な方法により計測することと されています。
文部科学省としては、地方自治体に対して指針を踏まえた勤務時間管理の徹底を求め、客観的な勤務実態の把握を前提に教職員加配や外部人材等の配分をするとともに、進捗状況等のフォローアップや事例等の情報発信を行うこと等を通じて、全国全ての学校において客観的な方法による勤務時間把握が行われることとなるよう、政策を総動員して取り組んでいるところです。また、学校における働き方改革を進めるためには、教師でなければできない業務以外の多くの仕事を教師が担っている現状を抜本的に変え、教師が教師でなければできないことに集中できるよう業務の適正化を図っていく必要があります。
○学校における働き方改革の実効性を高めるための条件整備
学校における働き方改革の実効性を高めていくためには、こうした取組に加えて教育条件の整備が重要です。学校の指導・運営体制の効果的な強化・充実を図るため、令和6年度予算において、小学校における35人学級の計画的整備や高学年教科担任制の強化等の教職員定数の改善をはじめ、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーや教員業務支援員、中学校における部活動指導員の配置などの支援スタッフの充実、学校における働き方改革推進事業などに必要な予算を計上しています。特に、教員業務支援員については、教師が行う学習指導等に係るデータの入力・集計や各種資料の整理、学校行事や式典等の準備補助を行うことを通じて、教師の業務負担の軽減に大きな役割を果たしており、同年度予算においては、全ての小・中学校への配置が可能な規模となっています(出典)文部科学省 令和5年版 文部科学白書
◆科学技術系人材を育成するための理数教育の推進
●理数好きな子供の増加につながる取組
文部科学省では、理数教育を着実に実施するため、教員によって負担の大きい実験の準備・調整等の業務を軽減するための理科観察実験アシスタントの配置支援や、「理科教育振興法」に基づき、公・私立の小・中・高等学校等における観察・実験に係る実験用機器をはじめとした理科、算数・数学教育に使用する設備の計画的な整備を進めています。また、令和6年度より小・中学校における理数系の探究に関する学習を推進するために、その指導法について 開発・調査を行い、それらの成果を全国に展開すること等を実施しています。 科学技術振興機構(JST)では、科学技術分野で活躍する女性研究者・技術者、女子学生等と女子中高生の交流機会の提供や実験教室、出前授業の実施等を通して女子中高生の理工系分野に対する興味・関心を喚起し、理系進路選択の支援を行う「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」等の取組を実施しています。(出典)文部科学省 令和5年版 文部科学白書
●子供の才能を見いだし伸ばす取組の充実
文部科学省では、平成14年度から、先進的な理数系教 育を実施する高等学校等を「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」に指定し、JSTを通じて支援を行うことで、生徒の科学的な探究能力などを培い、将来の国際的な科学技術人材の育成を図っています。令和6年度においては全国225校の高等学校等が理科・数学等の自然科学分野や、自然科学と人文・社会科学との融合分野(6年度新設)に重点を置いた、カリキュラムの開発・実践や課題研究、観察・実験等による体験的・問題解決的な学習等を実施することになっています。 JSTは、初等中等教育(小学校高学年~高校生)段階において理数系に優れた意欲・能力を持つ児童生徒を対象に、その能力のさらなる伸長を図る育成プログラムの開発・実施に取り組む大学等を「次世代科学技術チャレンジプログラム(STELLA)」に選定し、支援しています。さらに、全国の高校生等が学校対抗・チーム制で理科・数学等における筆記・実技の総合力を競う場として、中学生を対象とした「第11回科学の甲子園ジュニア全国大会」を兵庫県姫路市文化コンベンションセンター「アクリエひめ じ」で開催し、香川県代表チームが優勝しました。また、 高校生等を対象とした「第13回科学の甲子園全国大会」をつくば国際会議場、つくばカピオで開催し、神奈川県代表の栄光学園高等学校が優勝しました。
(つづく)Y.H