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実践編・応用編

学校教育 高等(大学等)教育の充実2

投稿日:2025年5月8日 更新日:

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。
高等(大学等)教育の充実についての最終回です。高等教育は、中等教育を修了した者またはそれと同等以上とみなされた者が、知識、倫理、技術などを深く学び、さらにそれらの理論や実践を身につけます。そのことを通じて、過程を終了した後に職業人となるなどして広く社会に、教育の成果を還元します。

◆人材育成と大学の国際化
■高等教育の国際化の推進
社会や経済のグローバル化が進展する中で、我が国が国際社会と協調しながら成長するため、日本人学生の海外留学への送り出しや外国人留学生の受入れなどの留学生交流 の推進、その基盤となる高等教育の国際通用性・競争力の向上、高等教育の国際展開など、我が国の高等教育の国際化を総合的かつ戦略的に推進していくことが重要です。このような中内閣総理大臣を議長する「教育未来創造会議」においては、コロナ後のグローバル社会を見据え、留学生交流や大学の国際化、外国人留学生の定着支援などに関する政府全体の方針がまとめられました。さらに、文部科学省 に「戦略的な留学生交流に関する検討会」を設置し、国・地域ごとの国際交流の方向性や交流分野の戦略について議論し、海外留学の重点的な促進、優秀な留学生や人材の受入れ・定着、教育の国際化を一体的に強化・推進することとしています。

■大学の国際化

“●国際化の意義
大学は「知の拠点」であり、高度人材育成や科学技術の発展の中核として、国・地域を超えた連携や競争に参画 し、イノベーションを創出することが求められています。 そのために、高等教育や学術研究の分野で学生や研究者の国境を越えた交流や国際的な頭脳循環を活発化させる必要があります。このような状況の下、我が国においても、国際的に活躍できるグローバル人材の育成、世界との調和ある連携ネットワークの形成、卓越した研究力の一層の活用を推進しており、世界に開かれた教育研究環境の整備充実 やオンラインを活用した学生の双方向交流の促進などを通じて、引き続き大学の国際通用性・競争力の向上のための支援を継続して実施しています。(出典)文部科学省 令和5年版 文部科学白書”

◆専門人材の育成
■医療系人材の養成
高齢化に伴う医療ニーズ(需要)の高まり等を受け、81の医学部、29の歯学部、79の薬学部、300の看護学部など、多くの大学において医療系人材の養成が進められています。文部科学省では、各大学と協力しながら、質の高い医療系人材を養成するための様々な取組を進めています。 地域の医師確保等の観点から、厚生労働省と連携して、医学部の入学定員について平成20年度から増員を行って います。令和5年度は、地域枠(特定の地域等での勤務等を条件として設定する定員)による増加を含め、全国の医学部の入学定員は計9,384人となりました。 また、薬剤師の養成にあたっては、令和5年3月に、薬剤師の地域偏在や地域における需要等を考慮しつつ、7年度以降の6年制課程の薬学部・学科の設置及び収容定員増 を抑制する制度改正を行いました。

●医学教育・歯学教育の改善・充実
医学生・歯学生は卒業時までに身に付けておくべき必須の実践的診療能力を学修目標として提示したモデル・コ ア・カリキュラムを踏まえつつ、各大学の特色ある教育を学んでいます。
令和6年度の入学生からは、4年度に改定 したモデル・コア・カリキュラムが適用されます。また、医学教育及び歯学教育の質保証のため、医・歯学部を持つ全大学を対象とする分野別評価も進められています。

●薬学教育の改善・充実
医療人としての薬剤師を養成するため、「薬学教育モデル・コア・カリキュラム」に沿った教育の確実な定着に向け、学習成果基盤型教育の推進や実務実習の充実に取り組んでいます。令和6年度の入学生からは5年2月に改訂されたモデル・コア・カリキュラムが適用されます。

■専門職大学院
平成15年度に創設された専門職大学院(専門職学位課程)は、大学院のうち特に高度専門職業人を養成することを目的とし、理論と実務を架橋する実践的な教育を行う課程です。具体的には、教員組織は一定割合以上を実務家教員とすること、教育内容は事例研究や現地調査を中心に、双方向・多方向に行われる討論や質疑応答等を授業の基本とすること、教育の質保証のための方策として教育研究活動状況の認証評価を5年以内ごとに受審することを制度的に位置づけた課程です。令和6年4月現在で、法曹養成 (法科大学院)、教員養成(教職大学院)、MBA(ビジス)・MOT(技術経営)、会計、公共政策、公衆衛生、臨床心理等といった多様な分野で計119大学・170専攻が設置されています。社会人学生の比率が約50%であり、社会人の学び直しの推進に一定の成果を挙げています。

“●法科大学院
令和6年4月1日現在では、計42大学において法曹コースが開設され、法学部の早期卒業と法科大学院の既修者コースの修了により、今までよりも約2年早く法曹として活躍することが可能となっています。法科大学院34校 における直近の司法試験累積合格率(平成30年度修了者)は72.9%となり、政府目標である累積合格率7割を達成しました。また、令和5年司法試験における修了後1年目までの合格率も55.5%となっています。引き続き法科大学院教育の充実を図るとともに、予測可能性の高い法曹養成制度を実現し、新たな制度の下、法曹を志す誰もが、プロセスとしての法曹養成制度を通じて、質の高い法曹となるる途を確保していきます。(出典)文部科学省 令和5年版 文部科学白書”

●教職大学院
教職大学院は、学校現場における広い理解をもち自ら諸課題に積極的に取り組む資質能力を有した新人教員の養成と、学校現場が直面する諸課題の構造的・総合的な理解に立ち幅広い指導性を発揮できるスクールリーダーとなるよ うな現職教員の養成を目的として設立されました。令和5 年4月現在、全国に54の教職大学院が設置されています。 教職大学院は、学校や教育委員会との連携・協働による教 職経験のある実務家教員の配置や、学校現場における長期 の実習など、学校や教育委員会の要請に即した体系的な教育課程を特色としており、新たな学びを展開できる実践的な指導力を持った教員を養成しています。それにより、現職教員学生を除く同年3月修了者の教員就職率が約 90.4%と高水準となっていることなど、着実な成果を挙げています。

●専門職大学
専門職大学は、質の高い実践的な職業教育を行い、専門職業人を養成する新たな種類の大学として、平成31年に制度化されました。4年制の「専門職大学」、2年制又は3年制の「専門職短期大学」のほか、既存の大学・短期大学に設置する「専門職学科」も制度化され、令和6年4月時点で、情報、観光、農業、医療・保健、クールジャパン分野(マンガ、アニメ、ゲーム、ファッション、食など) の専門職大学20校、専門職短期大学3校、専門職学科1学科が設置されています。専門職大学では、卒業単位のおおむね3分の1以上を実習・実技とし、長期の企業内実習等も行うことにより、学生は理論と実践の両方をバランスよく学修するほか、専攻する職業に関連する他分野も学ぶこととしています。これにより、我が国の産業構造の変化が見込まれる中、成長分野において活躍する人材や地域社会の担い手となる人材の 養成を目指しています。
令和5年度は、9校の専門職大学及び3校の専門職短期大学が卒業生を輩出し、就職率は93%となっています。 卒業生は大学で学んだ分野に関連する企業や地方公共団体 へ就職するほか、起業する例も見られます。文部科学省では、専門職大学制度を周知するためのポスターを全国の高校に配付したほか、高等学校教員を対象とした進学相談会の開催、ウェブサイトや制度説明動画等、様々な方法で情報発信を行い、周知に取り組んでいます。

“●高等専門学校
高等専門学校(以下「高専」という。)は、中学校卒業後の意欲ある若者を受け入れ、5年一貫の専門教育を展開する我が国のユニークな高等教育機関として、全国に58 校が設置されています。高専では、一般科目と専門科目を組み合わせ、理論だけでなく実験実習に重点を置いた教育や、「ロボコン」をはじめとするコンテスト等を通じて、実践的・創造的技術者を養成・輩出し、国内外から高い評価を受けています。近年では、高専生が持つ高い技術力や 創造性を踏まえ、半導体や蓄電池等の社会的な要請が高い 分野の人材育成や、アントレプレナーシップ教育の充実等 を進めています。高専生の卒業後の進路は多様で、約6割 が就職し、残りの約4割が専攻科や大学に進学しています。また、その独自の教育方法と高度な教育レベルは国際社会からも極めて高く評価されており、国立高等専門学校機構では、モンゴル、タイ、ベトナムにおいて、現地のニーズを踏まえながら、日本型高専教育制度「KOSEN」の導入支援を行っています。(出典)文部科学省 令和5年版 文部科学白書”

●専門学校の現状と最近の施策
○専門学校の現状
専修学校は、社会の変化に即応した実践的な職業教育、専門的な技術教育等を行う教育機関として発展してきました。特に、高等学校卒業程度を入学対象とする専門課程 (専門学校)の生徒数は、令和5年5月現在約56万人で、高等教育機関への進学者のうち21.9%が進学しており、我が国の高等教育の多様化・個性化を図る上で重要な役割を果たしています。

○最近の施策
企業等との連携により、実践的な職業教育の質の確保に組織的に取り組む専修学校の専門課程を文部科学大臣が「職業実践専門課程として認定する仕組みを平成26年度から開始しています(令和6年3月現在:1,110校3,199 学科)。また、経済界や教育界からの要望等を踏まえ、5年度からは職業実践専門課程であること、認定を受けようとする専修学校の設置者の財務状況に関して、継続的かつ安定的であること等の要件を満たす学科を「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」として認定(6年3月現在で188校475学科)する制度が創設されました。
(つづく)Y.H

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