キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。
スポーツ立国の実現についての最終回です。青少年の健全育成や、地域社会の再生、心身の健康の保持増進、社会・経済の活力の創造、我が国の国際的地位の向上など、国民生活において、多面にわたる役割を果たすものとされています。
◆スポーツにおける多様な人材の育成
●多様な人材の育成
○スポーツ指導者の資質・能力の向上
スポーツの場において、適切な資格や知見を有した指導者の養成・確保が課題になっているため、スポーツ庁では、公益財団法人日本スポーツ協会(JSPO)が実施する公認スポーツ指導者制度及び公益財団法人日本パラスポーツ協会(JPSA)が実施する公認障がい者スポーツ指導者制度等の理念の理解増進支援を通じて、年齢や性別など多様なスポーツニーズに対応し、スポーツの価値を脅かす体罰、暴力等を行わない資質・能力の高い指導者養成を推進しています。
○アスリートのキャリア形成支援
アスリートが競技外のキャリアにおいてスポーツで培った能力や価値を社会に還元することは大変重要である一方、現役時のアスリートへのキャリア形成支援の不足等の課題が指摘されています。このため、スポーツ庁は、スポーツ関係団体・大学・企業等の関係者が連携して取り組むスポーツキャリアサポートコンソーシアムの運営を通じて、キャリア形成のための研修支援や人材育成、情報提供等、積極的な支援体制を構築しています。また、アスリートのキャリア形成上の課題やスポーツ指導者等の人材育成に関する調査研究を実施しています。
●女性の活躍推進
女性のスポーツ参画については、中学生女子の運動習慣の二極化や若年層での低いスポーツ実施率、スポーツ指導者やスポーツ団体の女性役員の割合の低さ、競技スポーツにおける女性の健康課題への対応など、様々な検討すべき課題があります。
第3期スポーツ基本計画においては、スポーツを通じた女性の活躍促進の取組として、施策目標に「女性のニーズや健康課題の解決が見込まれるスポーツ実施について、個人や関係団体への普及・啓発を行うとともに、女性がスポーツをしやすい環境整備等を促進し、女性のスポーツ実施率を向上させること」等を掲げています。
女性のスポーツ実施率の向上については、運動不足による女性特有の健康リスクの情報や手軽にできるスポーツプログラム、「オリジナルダンス」や「ながら運動」の動画等をスポーツ庁ウェブサイトに掲載し、スポーツの楽しさを発信しています。
スポーツ団体の女性役員比率の向上については、「スポーツ団体ガバナンスコード(中央競技団体向け)」を踏まえた女性理事割合の引上げを各スポーツ団体に促すとともに、女性役員候補とスポーツ団体とのマッチング支援等を実施しています。国際競技力向上として、健康課題等を 解決するための実践プログラムや、医・科学サポート等を 活用した支援のほか、女性エリートコーチの育成プログラムも実施しています。(出典)文部科学省 令和5年版 文部科学白書
◆障害者スポーツの振興
●障害者スポーツの環境の整備
障害者のスポーツの状況について、令和5年度の調査では、障害のある人(20歳以上)の週1回以上のスポーツ 実施率は32.5%にとどまっており、引き続き障害者スポーツの一層の普及・促進や環境の整備に取り組む必要があります。
令和5年度は、スポーツ審議会健康スポーツ部会の下に障害者スポーツ振興ワーキンググループが設置され、持続的な障害者スポーツの振興に向け、「障害者スポーツセンター」を単なる施設ではなく、地域全体で障害者スポーツ振興を行う、幅広い機能と高い専門性を持つ人材等から構成される、包括的な地域拠点として位置づけるとともに、持つべき機能として、「指導・相談」に加え、「ネットワーク」、「情報拠点」、「人材育成」等を明示した中間まとめが5年6月に取りまとめられました。
また、令和5年度は、公園や商業施設等のオープンスペースを活用し、障害のある人とない人がともにウォーキングフットボールやシットスキーを体験する取組や障害のある人のスポーツアクセスへの障壁解消に向けて、競技団体と民間企業の連携により、デジタル技術を活用して身近な場所でカヌー等のスポーツを体験できる環境整備を行っています。
加えて、生涯にわたってスポーツ活動を定着させるためには、学齢期からスポーツに親しむことが重要であると捉え、競技団体と民間企業が連携し、障害のある小学生とない小学生でチームを編成して出場するボッチャ大会の開催や特別支援学校等の児童生徒がスポーツ活動に継続して親しむことができる機会を確保するために、総合型地域スポーツクラブや社会福祉施設等多様な地域資源と連携した運動部活動の地域連携・地域移行の受け皿整備に取り組んでいます。(出典)文部科学省 令和5年版 文部科学白書”
●全国障害者スポーツ大会
全国障害者スポーツ大会は、障害のある選手が、競技等 を通じてスポーツの楽しさを体験するとともに、国民の障害に対する理解を深め、障害のある人の社会参加の推進に寄与することを目的として、国民体育大会の直後に当該開催都道府県で行われており、令和5年度は鹿児島県において開催されました。6年度は、佐賀県で開催される予定です。
◆スポーツを通じた地域活性化
●地域のスポーツ施設の整備・運営
地域住民の誰もが気軽にスポーツに親しめる場として、 地域のスポーツ施設は重要な役割を果たしています。スポーツ庁では、施設の老朽化や財政の制約等に伴う地域住民のニーズに対応していくため、引き続き学校施設環境改善交付金等による社会体育施設・学校体育施設に対するハード面の支援を行いました。そのほか、スポーツ施設のストック適正化に係る伴走型支援や相談窓口の設置に加え、学校体育施設の有効活用、公園、歩行空間、広場等と いったオープンスペースの活用など、ソフト面の対応も進めました。
また、まち全体でスポーツに親しめるような場のあり方 を探るため、「スポーツ・健康まちづくりデザイン学生コ ンペティション」を初開催し、学生からのアイデアやデザインを募集・表彰しました。(出典)文部科学省 令和5年版 文部科学白書
●国立スポーツ施設
2020年東京オリンピック競技大会・パラリンピック競技大会の開閉会式及び陸上競技の会場としても利用された国立競技場は、国際的・全国的なスポーツ大会などが開催されるスポーツ振興の中核的な拠点として活用されていま す。令和5年度は、Jリーグや大学ラグビーなどのほか、2024年パリオリンピック大会のマラソン日本代表選手選考会「マラソングランドチャンピオンシップ」が開催されました。現在、国立競技場の運営管理は日本スポーツ振興センター(JSC)が行っていますが、民間事業者のノウハウと創意工夫を活用して、効率的な運営や利用促進による収益拡大などを図るため、民間事業化に向けた手続きを進めています。
◆スポーツを通じた国際交流・協力
●国際交流・協力に向けた取組
スポーツ庁では、官民連携のスポーツ国際協力プログラム「Sport for Tomorrow」をはじめ、二国間や多国間でのスポーツにおける連携を強化するための政策対話や草の根活動等、様々な施策を通じて、スポーツを通じた国際交流・協力に取り組んでいます。 また、国際スポーツ界における我が国の影響力の向上と スポーツによる国際社会の発展への貢献を図るため「スポーツ国際展開基盤形成事業」を実施しています。本事業は、我が国の情報収集・発信能力を高めるとともに、スポーツ国際政策の展開を促進するための基盤形成を目的としており、国際競技連盟等の日本人役員の増加・再選に向けた取組や国際スポーツ界の中核的存在となる人材育成、国内外のネットワークの強化等の支援を行っています。 さらに、スポーツ産業分野では、国際展開に関心を持つ企業・団体に向け情報発信やネットワーク構築を目的としたプラットフォームを立ち上げ、運用しています。
◆国際競技力の向上
●強力で持続可能な人材育成や環境整備
我が国のアスリートが国際大会で躍動する姿は、国民に 勇気や感動を届け、スポーツへの関心を高めるとともに、 社会に活力を生み出し、経済の発展にも広く寄与するもの であり、国際競技力の向上に資する施策を、継続して効果 的・効率的に進めていくことが重要です。 スポーツ庁では、第3期スポーツ基本計画及び「持続可 能な国際競技力向上プラン」を踏 まえ、関係機関と連携しつつ、我が国の国際競技力向上向けた支援や環境整備に取り組んでいます。
○中長期の強化戦略に基づく競技力向上を支援 するシステムの確立
オリンピック競技・パラリンピック競技について、中競技団体(NF)による選手強化活動(強化合宿、コーチ 等設置など)に対する国の助成金の額を拡充し、支援の充 実を図るとともに、日本スポーツ振興センター(JSC)、 日本オリンピック委員会(JOC)及び日本パラスポーツ 協会日本パラリンピック委員会(JPC)からなる協働チー ムによる協働コンサルテーションを実施し、NFが策定す る強化戦略プランの実効化に向けた多面的な支援を行って います。各NFの強化戦略プランは、協働チーム並びに外 部有識者によって評価され、国は、その評価結果について、競技団体(NF)による選手強化活動(強化合宿、コーチ等設置など)に対する国の助成金の額を拡充し、支援の充実を図るとともに、日本スポーツ振興センター(JSC)、 日本オリンピック委員会(JOC)及び日本パラスポーツ協会日本パラリンピック委員会(JPC)からなる協働チー ムによる協働コンサルテーションを実施し、NFが策定す る強化戦略プランの実効化に向けた多面的な支援を行っています。各NFの強化戦略プランは、協働チーム並びに外部有識者によって評価され、国は、その評価結果について各種事業の資金配分に活用しています。
(つづく)Y.H