◆このコーナーは、活躍している「キャリア・カウンセラー」からの近況や情報などを発信いたします。◆
キャリア・カウンセラー便り”早川菜緒子さん”です。
はじめての方、はじめまして。面識のある方、お久しぶりです。キャリアコンサルタントの早川です。
いかがお過ごしでしょうか。
身体は心の地図
この文を読み、どのような身体の反応や感覚が起きているでしょうか。
数秒でいいので、目を閉じて、ご自分の身体の感覚を感じ取ってみてください。
私は、マインドフルネスの意識状態での身体指向の技法を好んで使っています。
もともと、紛争や葛藤の真っ只中に身を置くことが多く、対立する人々や、互いに相容れない感情同士の衝突に度々直面していました。葛藤の苦痛。精神的苦痛が引き起こす身体的な痛みや苦しみ。まるで世界中から非難されているかのような孤独感。自分には価値がないのだという絶望感。自分自身の葛藤に加え、他者の葛藤を目の当たりにする日々を過ごすうち、知らずしらずに、自分自身の身体感覚を思考から切り離してこれらの苦痛から逃れ、苦痛を感じ取らない対処方法をとるようになっていきました。
10年近く前、自分がこれまで蓄えてきた知識や思考、言葉ではどうにもできない。これらの方法で対処しようとすればするほど、状況が悪化する、自分だけでなく周囲の人たちにまで苦痛を広げてしまう。そんな状況に陥りました。
当時は心のなかで、「これ以上被害を大きくしてはいけない。いますぐ何とかしなければ。あの人のアドバイス通りにやったのにうまくいかない。他人の言葉を鵜呑みにしたからだ。簡単に信じてはいけない。自分で調べて何とかしなければ。うまくできないのは知識不足だからだ。」と、自分を追い込み、この状況を改善する解決策がきっとあると自分に言い聞かせ、ネットで調べては、図書館へ行き本を大量に読み漁り、図書館にない本はネットで大量に購入し、またネットで調べ、本を読み漁りを繰り返していました。
もう私には無理だ。。。と調べる気力も失いかけたころ、二つのアメリカの心理療法に辿り着きました。一つはアーノルド・ミンデルのプロセスワーク。もう一つはハコミ療法です。
プロセスワークに辿り着く道のりは、とても奇妙な出来事の連続でした。プロセスワークに辿りつく1年位前から、頻繁に夢を見るようになりました。フルカラーで、夢であるとは思えないくらいリアルな身体感覚。そのうち、夢の中で「あ、これは夢だ」と気が付くようにもなりました。同じ頃、ミクロの世界の話をしてくれる人が身近にいて、素粒子についていろいろと調べたり雑誌を読んだりしていました。また、私は古代ギリシャ哲学が好きなのですが、なぜかふっと目に付いた道徳経を衝動買いし、深く感動したことを覚えています。そして、プロセスワークのHPを見た瞬間、手が止まりました。「ユング心理学」「物理学」「タオイズム」。当時はこの文字が大きく書かれたページだったと記憶しています。あるいは、私の意識がそれらの言葉に釘付けにされたのかもしれません。私の「明晰夢」「素粒子」「道徳経」は、単に別々の出来事であり、関連していないように見えていましたが、それらの合計が意味であることが理解できた瞬間でした。
プロセスワークに出会うまで、私は「あるはず」と決めつけていた唯一の回答を探し求めていました。しかし、回答を創り出すプロセスに意味があり、ぐるぐると旋回したり、ジグザグ歩きをしながら、すべての体験を重ね合わせ、足し合わせると、より大きな人生の意味や方向性を理解することができるということを体験から学びました。
『大地の心理学(コスモスライブラリー)』に以下のような記載があります「癒しの重要なシンボルはカドゥケウス(二匹の蛇が螺旋を描きながら絡まる杖)である。それは古代ローマとギリシアにおける癒しの神アスクレピオスとしばしば関連づけられる杖だ。・・・カドゥケウスは、癒しの体験、自己反射の体験、最も深層の自己を知る体験、自らを反射する『大きな自己』の体験、そして日常的現実で自らを意識化することを象徴している。・・・それを感じると、どんな混乱の中にいても、気分がよくなるのである。」「アインシュタインが神と呼んだものを、ユングは無意識と呼び、老子はタオと呼んだ。…仏教徒は原初の本質あるいは仏心について語る。デヴィッド・ボームはそれをパイロット波と考えた。この思弁的な知性にあてられた名称や数学的表現は、文化・時代・私たちの気分によって異なっている。ライプニッツはそれを活力と呼んだ。」
人生のいろいろなジグザグは、カドゥケウスがなければ、人を無駄に苦しめるものと感じられます。偉人達が、それぞれの文化・時代の中でさまざま言葉で呼んだ「より大きな人生の方向性」に導かれていることを感じられるのは、ほんの一瞬かもしれません。それでも日常的現実で自らを意識化することで、苦難や混乱に満ちた日常的現実の中にいても、人生の意味や方向性を信じよう、信じたいと思えるようになりました。
ハコミは、今も勉強を続けているところです。私の学んだハコミでは、マインドフルネスの意識状態で、いまこの瞬間に起きている思考やイメージ、感情、身体感覚に意識を向けていきます。『自己変容をもたらすホールネスの実践』を初回のセッション時に紹介され、今も継続して実践しています。
今でこそ堂々と、「私はプロセスワークとハコミを学びました。」と言えますが、学び始めの頃は家族にも知られないように、本にはカバーを付けて何の本を読んでいるのかバレないように読んでいました。心の中で『なにかのおかしな療法や宗教なんじゃないか。私は騙されているんじゃないか。こんなの学んでいると知られたら、ますます非難されるんじゃないか。私は何か大きな間違いを犯しているのではないか』と、私を止めようとする声を振りきって、本を読むだけに留まらず、プロセスワークのコースを受講し富士見幸雄先生と出会い、また、ウィリングヘム広美先生のハコミセラピーを初めて受けました。その数か月後には、それぞれの療法を知識だけでなく実際に体験することで学びを深め、日々実践していき、いまはあの頃の危機的状況から脱しつつあります。この10年近くの出来事を振り返ってみると、プロセスワークが私をハコミへと導いてくれたように感じられます。今も継続的にご指導してくださるお二人に、心から感謝しています。
思考・言葉による新たな気づき、認識範囲の拡大、計画性、明確な目標。これらに加えて、身体の発する感覚にも意識を向け、思考と共に感情と身体とも力を合わせていく。もう、感情や身体を置き去りにしない。感情や感覚に気づかないふりはしない。思考と感情と身体が同調している感覚。重ね合わさった感覚。その実践のサポートをする方が一人でも増え、その結果一人でも多くの人が、全身で前進する感覚を日常的に感じることができたらと願っています。
もし、少しでも興味を感じたのであれば、その感覚を大切にしてください。
心のなかで、その感覚を感じた自分を批判する声が起こってくるかもしれません。
どの辺りから、その声は起こってきますか?
どんな声質ですか?
高い声?
低い声?
どんな口調ですか?
その声すらも、大切にしてください。
もしかすると、過去に、その批判する声に助けられたことが思い出されるかもしれません。
あるいは、その批判する声に圧倒され、最初に感じた興味や好奇心がかき消されてしまったことを思い出すかもしれません。
その声を聴いていると身体にどんな反応が起きていることに気が付きますか?
どこかが緊張していますか?
手の感覚はどうですか?
背中は?
足はどうでしょう?
心の中で起きていること、身体の感覚として起きていること、それらにゆっくりと寄り添いながら、時間と空間をもってあげましょう。
どうでしょうか。
批判する声は、成長過程で誰かから言われた言葉だったかもしれません。あるいは、誰かが言われているのを見聞きしていたのかもしれません。人は、周囲で起きていることを学び、記憶し、成長していきます。それ自体は悪いことではありません。世間で言われていることを学ぶことは、環境に適応するうえでとても大切なことです。ただ、それが幼い子であったときには生存に必要なことであったかもしれませんが、大人になった今でも同じとは限りません。もしかすると、よりよい別の方法が、今はあるかもしれません。
自動的に起こってくる批判の声に寄り添いながら、その声を聴いた当時をイメージしてみてください。
もしその場に、別の方法を共に模索する大人がいたらどうだったでしょうか。
何かが違っていたでしょうか。
どうしたの?
何を望んでいるの?
何が必要なの?
何を避けてるの?
そんな言葉をかけてくれる大人がいたら、どんな応えが返ってきたでしょうか。
騙されたくない
傷つきたくない
他の人に知られたら恥ずかしくて外を歩けなくなる
本当のことが知りたい
真実が必要
怖い。不安だ。一人ぼっちは嫌だ。耐えられない。
このような言葉かもしれません。
少し深呼吸をしてみましょう。
自分にとって自然なリズムで息を吐いてから吸って、空気が鼻を、のどを、胸に届き、全身に空気がいきわたるのをイメージしてみてください。
今この瞬間に身体の中で起きていることに、ゆっくりと意識を向けていきます。
足の裏が大地にしっかりとついている感覚にも意識を向けてみましょう。
いまも感じられる感覚は、どのようなものでしょうか。
まるで壁の中に閉じ込められているような感覚
身体が丸まって縮こまっていくような感覚
耳を手で塞ぎたくなる感覚
頭の中に霧がかかったようになってモヤモヤする感覚
そのような感覚に一緒にゆっくりと寄り添っていきます。
何もする必要はない。
何も変える必要はない。
やさしさと思いやりをもって ただ気づいてあげる。
その瞬間を共有していきます。
最後に、ある言葉を伝えさせてください。
そして、その言葉を読んだあと、心や身体にどんな反応が起きるかもう一度、ゆっくりと見てみてください。
「あなたは一人ではありません」
どんな反応が起きているか。
目を閉じて、時間をとって、ご自分の心や身体の動きや反応を優しく包み込んであげるように見てみてください。
ではまた、どこかでお会いしましょう。
(参考文献:ハコミセラピー完全ガイド , 自己変容をもたらすホールネスの実践)
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▼編集後記▼
プロセス指向心理学のアーノルド・ミンデルさんは昨年亡くなられてしまいましたが、生前はとてもチャーミングな方でした。彼のワールドワークという、ワークショップは、敵対するような関係性を丁寧に修復していく、その土地の持っている記憶を、そこにいる人々の中から丹念に解きほぐすような、そして、そこに居合わせた全員が当事者性をもってその場に参加できる、力のあるワークショップです。
いろんな学びがあります。ぜひ勉強してみて下さい。
(い)
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