キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。
文部科学省は、平成29年3月に中学校学習指導要領の改訂を行いました。前回に続き、その内容について解説します。
特別活動改訂の趣旨及び要点
■改訂の趣旨
中央教育審議会答申において、学習指導要領等改訂の基本的な方向性が示されるとともに、各教科等における改訂の具体的な方向性も示されています。今回の特別活動の改訂は、これらを踏まえて行われたものです。
①特別活動の成果と課題
特別活動は、学級活動、生徒会活動・児童会活動、クラブ活動、学校行事から構成され、それぞれ構成の異なる集団での活動を通して、児童生徒が学校生活を送る上での基盤となる力や社会で生きて働く力を育む活動として機能してきました。協働性や異質なものを認め合う土壌を育むなど、生活集団、学習集団として機能するための基盤となるとともに、集団への所属感、連帯感を育み、それが学級文化、学校文化の醸成へとつながり、各学校の特色あ教育活動の展開を可能としています。
一方で、更なる充実が期待される今後の課題としては、以下のような点が挙げられます。
(特別活動において育成を目指す資質・能力の視点)
特別活動は「なすことによって学ぶ」ことを方法原理とし、各学校において特色ある取組が進められていますが、各活動・学校行事において身に付けるべき資質・能力は何なのか、どのような学習過程を経ることにより資質・能力の向上につなげるのかということが必ずしも意識されないまま指導が行われてきたという実態も見られます。特別活動が各教科等の学びの基盤となるという面もあり、教育課程全体における特別活動の役割や機能も明らかに
する必要があります。
(内容の示し方の視点)
内容や指導のプロセスの構造的な整理が必ずしもなされておらず、各活動等の関係や意義、役割の整理が十分でないまま実践が行われてきたという実態も見られます。
(複雑で変化の激しい社会の中で求められる能力を育成するという視点)
社会参画の意識の低さが課題となる中で、自治的能力を育むことがこれまで以上に求められていること、キャリア教育を学校教育全体で進めていく中で特別活動が果たす役割への期待が大きいこと、防災を含む安全教育や体験活動など、社会の変化や要請も視野に入れ、各教科等の学習と関連付けながら、特別活動において育成を目指す資質・能力を示す必要があります。
■改訂の基本的な方向性
◆特別活動は、様々な構成の集団から学校生活を捉え、課題の発見や解決を行いよりよい集団や学校生活を目指して様々に行われる活動の総体です。その活動の範囲は学年学校段階が上がるにつれて広がりをもっていき、そこで育まれた資質・能力は、社会に出た後の様々な集団や人間関係の中で生かされていくことになります。このような特別活動の特質を踏まえ、これまでの目標を整理し、指導する上で重要な視点として「人間関係形成」、「社会参画」、「自己実現」の三つとして整理しました。
◆特別活動において育成を目指す資質・能力については、「人間関係形成」、「社会参画」、「自己実現」の三つの視点を踏まえて特別活動の目標及び内容を整理し、学級活動、生徒会活動・児童会活動、クラブ活動、学校行事を通して育成する資質・能力を明確化しました。
◆内容については、様々な集団での活動を通して、自治的能力や主権者として積極的に社会参画する力を重視するため、学校や学級の課題を見いだし、よりよく解決するため、話し合って合意形成し実践することや、主体的に組織をつくり、役割分担して協力し合うことの重要性を明確化しました。
また、小学校から高等学校等までの教育活動全体の中で「基礎的・汎用的能力」を育むというキャリア教育本来の役割を改めて明確にするなど、小・中・高等学校等のつながりを明確にしました。
■改訂の要点
◆目標の改善
今回の改訂では、各教科等の学びを通して育成することを目指す資質・能力を三つの柱により明確にしつつ、それらを育むに当たり、生徒(児童)がどのような学びの過程を経験することが求められるか、さらには、そうした学びの過程において、質の高い深い学びを実現する観点から、特別活動の特質に応じた物事を捉える視点や考え方(見方・考え方)を働かせることが求められることを示しています。
特別活動の目標についても、「人間関係形成」、「社会参画」、「自己実現」という三つの視点を手掛かりとしながら、資質・能力の三つの柱に沿って目標を整理しました。そして、そうした資質・能力を育成するための学習の過程として、「様々な集団活動に自主的、実践的に取り組み、互いのよさや可能性を発揮しながら集団や自己の生活上の課題を解決することを通して」資質・能力の育成を目指すこととしました。この学習の過程は、これまでの特別活動の目標において「望ましい集団活動を通して」としてきたことを具体的に示したものです。
そして、特別活動の特質に応じた見方・考え方として、「集団や社会の形成者としての見方・考え方」を働かせることとしました。集団や社会の形成者としての見方・考え方は、特別活動と各教科等とが往還的な関係にあることを踏まえて、各教科等における見方・考え方を総合的に働かせて、集団や社会における問題を捉え、よりよい人間関係の形成、よりよい集団生活の構築や社会への参画及び自己の実現に関連付けることとして整理することができます。
◆学習指導の改善・充実
特別活動の目標の実現のため、学校の教育活動全体の中における特別活動の役割も踏まえて充実を図ることが求められることとして、次のような点を示しました。
①特別活動の深い学びとして、児童生徒が集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせ、様々な集団活動に自主的、実践的に取り組む中で、互いのよさや個性、多様な考えを認め合い、等しく合意形成に関わり役割を担うようにすることを重視することとしました。
②小学校・中学校ともに、学級活動における児童生徒の自発的、自治的な活動を中心として、各活動と学校行事を相互に関連付けながら、学級経営の充実を図ることとしました。
③いじめの未然防止等を含めた生徒指導との関連を図ること、学校生活への適応や人間関係の形成などについて、主に集団の場面で必要な指導や援助を行うガイダンスと、個々の児童生徒の多様な実態を踏まえ一人一人が抱える課題に個別に対応した指導を行うカウンセリングの双方の趣旨を踏まえて指導を行うことを示しました。
④異年齢集団による交流を重視するとともに、障害のある幼児児童生徒との交流及び共同学習など多様な他者との交流や対話について充実することを示しました。
特別活動の目標
特別活動は,「集団や社会の形成者としての見方・考え方」を働かせながら「様々な集団活動に自主的、実践的に取り組み、互いのよさや可能性を発揮しながら集団や自己の生活上の課題を解決する」ことを通して、資質・能力を育むことを目指す教育活動です。
今回の改訂では、各教科等の指導を通してどのような資質・能力の育成を目指すのかを明確にしつつそれらを育むに当たり、生徒がどのような学びの過程を経るのかということ、さらにはそうした学びの過程において、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら、教育活動の充実を図ることを、各教科等の目標の中で示しました。
特別活動においても、こうした考え方に基づいて目標を示しました。このことは、これまでの特別活動の基本的な性格を転換するものではなく、教育課程の内外を含めた学校の教育活動全体における特別活動の役割を、より一層明確に示すものです。
■特別活動における「人間関係形成」、「社会参画」、「自己実現」の視点
特別活動において育成を目指す資質・能力や、それらを育成するための学習過程の在り方を整理するに当たっては、これまで目標において示してきた要素や特別活動の特質、教育課程全体において特別活動が果たすべき役割などを勘案して、「人間関係形成」、「社会参画」、「自己実現」の三つを視点に整理しました。
これらの三つの視点は、特別活動において育成する資質・能力における重要な要素であり、これらの資質・能力を育成する学習の過程においても重要な意味をもちます。「人間関係形成」、「社会参画」、「自己実現」の三つの視点が、育成を目指す資質・能力に関わるものであると同時に、それらを育成する学習の過程においても重要な意味をもつということは、特別活動の方法原理が「なすことによって学ぶ」ということにあります。
三つの視点はそれぞれ重要ですが、相互に関わり合っていて、明確に区別されるものでないことにも留意することが必要です。
◆「人間関係形成」
「人間関係形成」は、集団の中で、人間関係を自主的、実践的によりよいものへと形成するという視点です。人間関係形成に必要な資質・能力は、集団の中において、課題の発見から実践、振り返りなど特別活動の学習過程全体を通して、個人と個人あるいは個人と集団という関係性の中で育まれると考えられます。年齢や性別といった属性、考え方や関心、意見の違い等を理解した上で認め合い、互いのよさを生かすような関係をつくることが大切です。
なお、「人間関係形成」と「人間関係をよりよく形成すること」は同じ視点として整理しています。
◆「社会参画」
「社会参画」はよりよい学級・学校生活づくりなど、集団や社会に参画し様々な問題を主体的に解決しようとするという視点である。社会参画のために必要な資質・能力は、集団の中において、自発的、自治的な活動を通して、個人が集団へ関与する中で育まれるものと考えられます。学校は一つの小さな社会であると同時に、様々な集団から構成されています。学校内の様々な集団における活動に関わることが、地域や社会に対する参画、持続可能な社会の担い手となっていくことにもつながっていきます。
なお、社会は,様々な集団で構成されていると捉えられることから、学級や学校の集団をよりよくするために参画することと、社会をよりよくするために参画することは、「社会参画」という意味で同じ視点として整理しています。
◆「自己実現」
「自己実現」は,一般的には様々な意味で用いられますが、特別活動においては,集団の中で、現在及び将来の自己の生活の課題を発見しよりよく改善しようとする視点です。自己実現のために必要な資質・能力は、自己の理解を深め、自己のよさや可能性を生かす力、自己の在り方や生き方を考え設計する力など、集団の中において、個々人が共通して当面する現在及び将来に関わる課題を考察する中で育まれるものと考えられます。
■集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせる
学級や学校は、生徒にとって最も身近な社会です。生徒は学級や学校という社会での生活の中で、様々な集団活動を通して、多様な人間関係の築き方や、集団の発展に寄与すること、よりよい自分を追求することなどを学ぶことになります。生徒は、学年・学校段階が上がるにつれて人間関係や活動の範囲を広げ、特別活動で身に付けたこのような資質・能力と、教科等で学んだことを、地域・社会などその後の様々な集団や人間関係の中で生かしていきます。
こうした学習の過程においては、特別活動ならではの「見方・考え方」を働かせることが重要です。今回の改訂で各教科等の目標に位置付けられた「見方・考え方」は、各教科等の特質に応じた、各教科等ならではの物事を捉える視点や考え方であり、各教科等を学ぶ意義の中核をなすものであります。特別活動の特質が、課題を見いだし解決に向けて取り組むという実践的な学習であるということや、各教科等で学んだことを実際の生活において総合的に活用して実践するということにあることから考え、特別活動の特質に応じた見方・考え方は「集団や社会の形成者としての見方・考え方」として示しています。
「集団や社会の形成者としての見方・考え方」を働かせるということは、各教科等の見方・考え方を総合的に働かせながら、自己及び集団や社会の問題を捉え、よりよい人間関係の形成、よりよい集団生活の構築や社会への参画及び自己の実現に向けた実践に結び付けることです。こうした「見方・考え方」は特別活動の中で働くだけでなく、大人になって生活していくに当たっても重要な働きをします。
出典 中学校学習指導要領 – 検索
(つづく)M.H