キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。
文部科学省は、平成29年3月に中学校学習指導要領の改訂を行いました。前回に続き、その内容について解説します。
■様々な集団活動に自主的、実践的に取り組み、互いのよさや可能性を発揮しながら集団や自己の生活上の課題を解決する
今回の改訂では、資質・能力を育成するために、「様々な集団活動に自主的、実践的に取り組み、互いのよさや可能性を発揮しながら集団や自己の生活上の課題を解決すること通して」という学習の過程を示しました。
◆様々な集団活動
私たちは社会の中で、様々な集団を単位として活動しています。集団は、目的によってつながっていたり、生活する地域を同じにするという点においてつながっていたりと様々なものがあります。目的や構成が異なる様々な集団での活動を通して、自分や他者のよさや可能性に気付いたり、それを発揮したりすることができるようになります。
学校は一つの小さな社会であり、様々な集団から構成されています。特別活動は、各活動・校行事における様々な集団活動の中で、生徒が集団や自己の課題の解決に向けて取り組む活動です。集団の活動の範囲は学年や学校段階が上がるにつれて広がりをもっていき、社会に出た後の様々な集団や人間関係の中でその資質・能力は生かされていくことになります。
学級活動は、学校生活において最も基礎的な集団である学級を基盤とした活動です。卒業後においては、職業生活を共にする職場における集団や、日々の生活の基盤となる家庭といった集団での生活につながる活動です。日々の生活を共にする中で、生徒は、一人一人の意見や意思は多様であることを知り、時には葛藤や対立を経験します。こうした中で、自ら規律ある生活を送るために、様々な課題を見いだし、課題の解決に向けて話し合い、合意形成を図って決まったことに対して協力して実践したり、意思決定したことを努力して実践したりします。
生徒会活動は、主に学校生活全般に関する自発的、自治的な活動です。卒業後においては、地域社会における自治的な活動につながる活動です。生徒会では、生徒会全体が一つの集団であるという面と、委員会活動などにおいて、役割を同じくする異年齢の集団を構成する面もあります。いずれにしても学級の枠を超え、よりよい学校づくりに参画し、協力して諸課題の解決を行う活動です。
学校行事は、学年や学校全体という大きな集団において、一つの目的のもとに行われる様々な活動の総体です。卒業後は地域や社会の行事や催し物など、様々な集団で所属感や連帯感を高めながら一つの目標などに向かって取り組む活動につながる活動です。学年や学校が計画し、実施するものであり、生徒が積極的に参加したり協力したりすることにより充実する教育活動です。生徒の積極的な参加による体験的な活動を行うものであり、学校内だけでなく、地域行事や催し物等、学校外の活動ともつながりをもち、内容によっては、地域の様々な人々で構成する集団と協力することもあります。このような学校行事の活動を通して、生徒は多様な集団への所属感や連帯感を高めていくものです。
◆自主的、実践的に取り組む
特別活動の各活動・学校行事は、一人一人の生徒の学級や学校の生活における諸問題への対応や課題解決の仕方などを自主的、実践的に学ぶ活動内容によって構成されています。特別活動の目標や内容で示している資質・能力は、自主的、実践的な活動を通して初めて身に付くものです。例えば、多様な他者と協働する様々な集団活動の意義を理解し、そうした活動に積極的に取り組もうとする態度を育てるためには、実際にや学校の生活をよりよくするための活動に全ての生徒が取り組むことを通して、そのよさや大切さを、一人一人が実感を伴って理解することが大切です。また、例えば事件や事故、
災害等から身を守る安全な行動を体得するためには、表面的・形式的ではなく、より具体的な場面を想定した訓練等を体験することによって、各教科等で学習した安全に関する資質・能力が実際に活用できるものとなります。このように、集団活動の中で、一人一人の生徒が、実生活における課題の解決に取り組むことを通して学ぶことが、特別活動における自主的、実践的な学習です。
◆互いのよさや可能性を発揮しながら
「互いのよさや可能性を発揮しながら」は、これまでの学習指導要領の目標で「望ましい集団活動を通して」として示した趣旨をより具体的にしたものです。特別活動の大きな特質の一つとして、様々な集団での活動を基本とすることが挙げられます。特別活動における集団活動の指導においては、過度に個々やグループでの競争を強いたり、過度に連帯による責任を求めて同調圧力を高めたりするなど、その指導方法によっては、違いを排除することにつながり、例えば、「いじめ」などに見られるように一部の生徒が排斥されたり、「不登校」のきっかけになったり、生徒一人一人のよさが十分発揮できなかったりすることも危惧されます。また、一見すると学級全体で協力的に実践が進められているように見えても、実際には教師の意向や一部の限られた生徒の考えだけで動かされていたり、単なるなれ合いとなっていたりしている場合もあります。このような状況は、特別活動の学習過程として望ましいものとは言えません。
集団における合意形成では、同調圧力に流されることなく批判的思考力をもち、他者の意見も受け入れつつ自分の考えも主張できるようにすることが大切です。そして、異なる意見や意思をもとに、様々な解決の方法を模索し、問題を多面的・多角的に考えて、解決方法について合意形成を図ることが、「互いのよさや可能性を発揮しながら」につながります。
こうしたことを常に念頭に置き、特別活動における集団活動の指導に当たっては、「いじめ」や「不登校」等の未然防止等も踏まえ、生徒一人一人を尊重し、生徒が互いのよさや可能性を発揮し、生かし、伸ばし合うなど、よりよく成長し合えるような集団活動として展開する必要があります。このような特別活動の特質は、学級経営や生徒指導の充実とも深く関わるものです。
なお、学習指導要領の前文においても、「(中略)一人一人の生徒が、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められる。」と示されています。このことは特別活動にとどまらず、学校教育全体で大切にする必要があることを示しています。
◆集団や自己の生活上の課題を解決する
「集団や自己の生活上の課題を解決する」とは、様々な集団活動を通して集団や個人の課題を見いだし、解決するための方法や内容を話し合って、合意形成や意思決定をするとともに、それを協働して成し遂げたり強い意志をもって実現したりする生徒の活動内容や学習過程を示したものです。
「なすことによって学ぶ」を方法原理としている特別活動においては、学級や学校生活には自分たちで解決できる課題があること、その課題を自分たちで見いだすことが必要であること、単に話し合えば解決するのではなく、その後の実践に取り組み、振り返って成果や課題を明らかにし、次なる課題解決に向かうことなどが大切であることに気付いたり、その方法や手順を体得できるようにしたりすることが求められます。
ここで言う「課題」は、現在生じている問題を解消するにとどまらず、広く集団や自己の現在や将来の生活をよりよくするために取り組む内容を指しています。
■特別活動で育成を目指す資質・能力
特別活動では、学んだことを人生や社会での在り方と結び付けて深く理解したり、これからの時代に求められる資質・能力を意識して身に付けたり、生涯にわたって能動的に学び続けたりすることができるようになることが重要です。
そこで、指導に当たっては、生徒が互いのよさや可能性を発揮し、よりよく成長し合えるような集団活動を特別活動における「集団や社会の形成者としての見方・考え方」を働かせながら展開することを通して、以下のような資質・能力を育むことが大切です。
◆「知識及び技能(何を知っているか、何ができるか)」
学級や学校における集団活動を前提とする特別活動は、よりよい人間関係の形成や合意形成、意思決定をどのように図っていくかということを大切にしています。こうした集団活動を通して、話合いの進め方やよりよい合意形成と意思決定の仕方、チームワークの重要性や役割分担の意義等について理解することが必要です。これは、方法論的な知識や技能だけではなくよりよい人間関係とはどのようなものなのか、合意形成や意思決定とはどういうこ
となのか、という本質的な理解も極めて重要です。知識や技能を教授するのではなく、各教科等において学習したことも含めて、特別活動の実践活動や体験活動を通して体得させていくようにすることが必要です。
具体的には,例えば次のように知識や技能を身に付けていくことが考えられます。集団で活動する上での様々な困難を乗り越えるためには何が必要になるのかを理解すること、集団でなくては成し遂げられないことや集団で行うからこそ得られる達成感があることを理解することなど、集団と個との関係について理解することが重要です。集団活動の意義が社会の中で果たしている役割や意義、人間としての在り方や生き方との関連で集団活動の価値を理解することも必要です。
また、基本的な生活習慣、学校生活のきまり、社会生活におけるルールやマナー及びその意義について理解し、実践できるようにすることなど、集団や人間関係をよりよく構築していく中で大切にすべきことを理解し実践できるようにすることも必要です。さらに、現在及び将来の自己と学習の関連や意義を理解し、課題解決に向けて意思決定し、行動することの意義や、そのために必要となること、大切にしなければならないことなどを理解することも必要です。特に、将来の社会的・職業的な自立と現在の学習がどのように関わるかということを理解し、現在自分でできることを意思決定し、実践していくことが重要です。
◆「思考力、判断力、表現力等(知っていること、できることをどう使うか)」
特別活動では、学級や学校における様々な集団活動を通して、自己の生活上の課題や他者との関係の中で生じる課題を見いだす。そして、その解決のために話し合い、決まったことを実践する。さらに、実践したことを振り返って次の課題解決に向かう。この一連の活動過程において、生徒が各教科等で学んだ知識などを課題解決に関連付けながら主体的に考えたり判断したりすることを通して、個人と集団との関わりの中で合意形成や意思決定が行われ、こうした経験や学習の積み重ねにより、課題解決の過程において必要となる「思考力、判断力、表現力等」が育成されます。
具体的には、様々な集団活動の中で、例えば次のようなことができるようにすることが考えられます。
①人間関係をよりよく構築していくために、多様な場面で、自分と異なる考えや立場にある多様な他者を尊重し、認め合いながら、支え合ったり補い合ったりして、協働していくこと。
②集団をよりよく改善したり、主体的に社会に参画し形成したりするために、自他のよさや可能性を発揮しながら、主体的に集団や社会の問題について理解し、合意形成を図ってよりよい解決策を決め、それに取り組むこと。
③現在及び将来に向けた自己実現のために、自己のよさや個性、置かれている環境を様々な角度から理解するとともに、進路や社会に関する情報を収集・整理し、将来を見通して人間としての生き方を選択・形成すること。また、意思決定したことに向けて努力したり、必要に応じて見直したりすること。
◆「学びに向かう力、人間性等(どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか)」
人は、実社会において、目的を達成するため、また、自己実現を図るために様々な集団に所属したり、集団を構築したりします。その中で様々な困難や障害を克服し、自分を磨き人間性を高めています。したがって、多様な集団に所属し、その中でよりよい人間関係を形成しようとしたり、よりよい集団や社会を構築しようとしたり、自己実現を図ろうとしたりすることは、正に学び続ける人間としての在り方や生き方と深く関わるものです。
特別活動では、様々な集団活動の役割や意義を理解し、生徒自身が様々な活動に自主的、実践的に関わろうとする態度を育てることが必要です。
具体的には、例えば次のような態度を養うことが考えられます。
①多様な他者の価値観や個性を受け入れ、助け合ったり協力し合ったり、新たな環境のもとで人間関係を築こうとする態度
②集団や社会の形成者として、多様な他者と協働し、問題を解決し、よりよい生活をつくろうとする態度や多様な他者と協働して解決しようとする態度
③日常の生活や自己の在り方を主体的に改善しようとしたり、将来を思い描き、自分にふさわしい生き方や職業を主体的に考え、選択しようとしたりする態度
出典 中学校学習指導要領 – 検索
(つづく)M.H