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安心できる年金制度の確立についての最終回です。少子高齢化は、老後生活を支える年金の支給水準に大きな影響を与えています。それは、年金を負担する現役世代が減少する一方で、年金を受け取る高齢者が増えるためです。
国民の多くは、年金制度は今後どうなっていくのか、或いはまた将来自分がどの位年金を受け取ることができるのか、そんな不安を持っています。
企業年金・個人年金制度の最近の動向について
■企業年金・個人年金制度の役割
企業年金・個人年金制度は、国民の高齢期における所得の確保に係る自主的な努力を支援し、もって公的年金の給付と相まって国民生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とした制度であり、公的年金に上乗せして加入するものです。多様化する国民の老後生活に対するニーズに対応しつつ、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るためには、老後生活の基本を支える公的年金に加え、企業年金・個人年金の充実が重要です。
これらを踏まえ、企業年金・個人年金の更なる普及を図るため、より利用しやすい確定拠出年金(DC)制度や確定給付企業年金(DB)制度の整備に向けた取組みを進めています。
■直近の法令改正と今後の課題
令和2年年金改正法の検討規定等や社会保障審議会企業年金・個人年金部会(以下「企業年金・個人年金部会」という。)での議論を受け、「令和3年度税制改正の大綱」(2020(令和2)年12月21日閣議決定)において、DCの拠出限度額について、DB等の他制度の掛金額の実態を反映し、公平できめ細かな算定方法に見直すこととし、2024(令和6)年12月1日から施行されました。
①DB制度の加入者の企業型DCの拠出限度額(現行:月額2.75万円)を、月額5.5万円からDBごとの掛金相当額を控除した額とする。
②DB制度の加入者の個人型DCの拠出限度額(現行:月額1.2万円)を、月額5.5万円からDBごとの掛金相当額及び企業型DCの掛金額を控除した額(月額2万円を上限)とする。
また、企業年金・個人年金部会において、2023(令和5)年4月から私的年金制度について議論を行い、2024年12月27日に「社会保障審議会企業年金・個人年金部会における議論の整理」を取りまとめました。さらに、「令和7年度税制改正の大綱」(2024年12月27日閣議決定)において、以下のとおり、企業型確定拠出年金(企業型DC)・個人型確定拠出年金(iDeCo)等の拠出限度額の引上げやiDeCoの加入可能年齢の引上げ等の見直しを行うこととなりました。
(主な見直しの内容)
①第2号被保険者の企業型DCの拠出限度額を月額6.2万円に引き上げる(現行:月額5.5万円)。
②第2号被保険者のiDeCoの拠出限度額を月額6.2万円(企業年金加入者については月額6.2万円からDBごとの掛金相当額及び企業型DCの掛金額を控除した額)に引き上げる(現行:月額2.0万円又は2.3万円)。
③第1号被保険者の拠出限度額(iDeCoと国民年金基金で共通)を月額7.5万円に引き上げる(現行:月額6.8万円)。
④iDeCoについて、60歳以上70歳未満であって現行の個人型確定拠出年金に加入できない者のうち、iDeCOの加入者・運用指図者であった者又は私的年金の資産をiDeCOに移換できる者であって、老齢基礎年金及びiDeCOの老齢給付金を受給していない者を新たに制度の対象とすることとし、その拠出限度額を月額6.2万円とする。
⑤企業型DCのマッチング拠出について、加入者掛金の額が事業主掛金の額を超えることができないとする要件を廃止する。
その上で、「社会保障審議会企業年金・個人年金部会における議論の整理」等を踏まえ、iDeCoの加入可能年齢の上限の70歳未満への引上げ等を盛り込んだ令和7年年金改正法案を第217回国会に提出しました。
社会保障協定の締結
海外在留邦人等が日本と外国の年金制度等に加入し保険料を二重に負担することを防ぎ、また、両国での年金制度の加入期間を通算できるようにすることを目的として、外国との間で社会保障協定の締結を進めています。現在、23か国との間で協定が発効しており、トルコ、ポーランド、ベトナム、タイ及びノルウェーとの間で協定の締結に向けた交渉又は協議を行っています。
我が国が社会保障協定を締結するに当たっては、我が国の経済界からの具体的要望の有無、我が国とその相手国との二国間関係や社会保障制度の違いなどの様々な点を総合的に考慮した上で、優先度が高いと判断される相手国から順次締結交渉を行うこととしています。今後とも、政府として、社会保障協定の締結に向けた取組みを一層推進していきます。
公的年金の正確な業務運営
■日本年金機構について
日本年金機構は、厚生労働大臣の監督の下、国と密接な連携を図りながら公的年金事業に関する業務運営を行うことにより、公的年金事業及び公的年金制度に対する国民の皆様の信頼を確保し、もって国民生活の安定に寄与することを目的とし、厚生労働大臣が定めた中期目標や日本年金機構が策定した中期計画及び各年度の年度計画に基づいて計画的に業務を行ってきました。2024(令和6)年度からは、第4期中期目標(対象期間:2024年4月1日から2029(令和11)年3月31日までの5年間)及び中期計画に基づいて業務を実施しています。
また、日本年金機構においては、年金の適用、保険料の徴収、年金の給付、年金記録の管理、年金相談という一連の業務を正確かつ確実に遂行するとともに、提供するサービスの質の向上を図ることを基本的な役割としています。
◆国民年金の保険料納付率向上と厚生年金の適用促進
国民年金保険料の納付対策については、これまで納付督励や免除等勧奨業務を受託する事業者との連携強化、口座振替やクレジットカード納付、コンビニでの納付の促進、スマホ決済アプリでの納付の導入等による保険料を納めやすい環境づくりなど、保険料の収納対策の強化に取り組んできたところです。2023(令和5)年度における最終納付率(2021(令和3)年度分保険料)は、前年度から2.4 ポイント増の83.1%*8となり、2010(平成22)年度分保険料から11年連続で上昇しています。
また、国民年金保険料納付率の更なる向上を図るため、納付督励や免除勧奨などの対策を効率的・効果的に実施しており、負担能力がある方には督促状等を段階的に送付し、納付しない方については、滞納処分を実施しているほか、国税庁への強制徴収委任制度の活用など、収納対策の強化を図っています。
厚生年金の適用促進については、国税庁から提供されている法人の源泉徴収義務者情報に加えて雇用保険被保険者情報等を活用して適用すべき事業所を把握し、効率的・効果的な加入指導を実施しています。また、適用事業所に対する事業所調査については、優先度等を踏まえ対象事業所の選定を行い、様々な手法を組み合わせ、各種届出が適正に行われているか、計画的に調査を行っています。
◆年金給付業務や年金相談業務の実施
年金の給付については、年金受給にできる限り結びつけていくための取組みとして、受給権者の申請漏れを防止するため、年金受給開始年齢に到達する直前及び繰下げ受給の上限年齢である75歳に到達する直前に、年金請求書を本人宛に送付することや、受給資格期間を満たしながら年金請求を行っていない66歳から74歳までの方(1952(昭和27)年4月2日以降生まれの方に限る。)に対して、毎年、各年齢に到達する直前に年金見込額のお知らせを送付する等の取組みを行っています。
年金相談については、年金事務所等における待ち時間の短縮や平日昼間に相談できない方への相談時間の確保を図るため、週初めの開所日の受付時間延長、毎月第2土曜日の開所とともに、混雑時の相談ブースの増設や年金相談職員の配置等の対策に取り組んでいます。また、ねんきんダイヤルを開設するとともに、全ての年金事務所において予約制を実施しており、さらに、老齢年金請求、障害年金、遺族年金・未支給年金の請求に関する相談や手続については、インターネットから年金相談予約を受け付けています。
お客様の声を反映させる取組みとして、各年金事務所への「ご意見箱」の設置、ホームページ上に「日本年金機構へのご意見、ご要望」コーナーの設置、「お客様満足度アンケート調査」等の実施など、お客様目線に立った業務改善に向けた取組みを行ってます。また、日本年金機構の毎年度の事業実績、お客様サービス向上の取組み、予算・決算などの情報をわかりやすくお客様に提供するため、毎年、年次報告書(アニュアルレポート)を作成しています。
◆デジタル化への対応等
年金関係の手続については、マイナポータルやe-Govを活用し、電子申請や電子送付の推進に取り組んでいます。
事業所の社会保険関係の手続は、紙媒体やDVDなどの電子媒体による申請の他、電子申請が可能となっています。厚生年金の適用事業所が行う手続については、紙や電子媒体による申請よりも処理が早いなどのメリットもあることから、主要な手続における電子申請の利用割合は、本格的に利用促進に取り組む前の23.0%(2019(令和元)年度)から73.6%(2024(令和6)年9月末)に大幅に上昇しています。また、e-Govの電子送達機能を活用し、これまで日本年金機構から事業所へ紙で郵送していた保険料額や増減内訳等の情報をデータ形式で定期的に送付する「オンライン事業所年金情報サービス」を2023(令和5)年1月から開始しました。さらに、2024年1月からは、口座振替による保険料納付を行う事業所に郵送していた「保険料納入告知額・領収済額通知書」について、電子送付を開始しています。
一方、個人の手続に関しては、2024年6月から年金の未加入期間がないなど一定の条件を満たす方を対象に、「老齢年金請求書」のマイナポータルからの電子申請を可能としました。さらに、2025(令和7)年1月からは年金を受けている方の手続に関する電子申請サービスの対象を拡大しており、紙の届書を郵送する手間や切手代が不要になるといった利便性から、多くの方に利用されています。
さらに、国民年金保険料について、現在の口座振替やクレジットカード納付に加え、2023年2月からスマホ決済アプリでの納付を可能としています。
◆ねんきんネットとねんきん定期便について
日本年金機構において、ご自身の年金記録などをパソコンやスマートフォンで24時間いつでも手軽に確認できる「ねんきんネット」のサービスを提供しています。「ねんきんネット」では、お客様サービスの向上を図るため様々な機能を提供しており、現在と今後の働き方や収入、期間等の条件を設定した場合の年金見込額の試算や、電子版の通知書の閲覧、持ち主(亡くなられた方を含む。)が不明となっている記録の検索などを行うことができます。「ねんきんネット」は、マイナポータルと認証連携を行うか、日本年金機構のウェブサイトにアクセスし、ユーザIDを取得することで利用が可能となり、利用者数は2025(令和7)年3月末現在、約1,356万人と増加が続いています。
また、2025年1月から、利便性向上を図るため、ねんきんネットにおいて、個人向けのオンラインサービスの拡充を行っています。
国民年金・厚生年金の全ての被保険者へ毎年誕生月に「ねんきん定期便」を送付しています。また、ねんきんネットでは電子版「ねんきん定期便」を確認することもできます。「ねんきん定期便」においては、引き続き記載内容を見やすくわかりやすくし、公的年金制度のポイントを周知するため、年金受給を繰り下げた場合の年金見込額の増額イメージ図を表示するほか、繰下げ制度についてより丁寧な情報提供等を行っています。
■年金記録問題への取組みとご自身による年金記録確認の推進
年金記録問題について、日本年金機構と密接に連携しながら、様々な取組みを進めてきた結果、約5,095万件の未統合記録のうち、約3,419万件(2025(令和7)年3月現在)の記録が解明されました。
また、「政府管掌年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律」(平成26年法律第64号)において創設された、年金記録が誤っている場合の訂正請求手続、事務処理誤りにより保険料納付ができなかった者についての事後的救済手続について引き続き実施しています。
◆未解明記録の解明のための取組み
未解明記録の解明に向けて、「ねんきん特別便(名寄せ特別便)」等の未回答者に対し、再度「年金加入記録の確認のお知らせ」を送付しています。
また、年金記録を正確に管理するためには、ご本人にも確認いただき、なるべく早い時点で記録の「もれ」や「誤り」を申し出ていただくことも重要です。そのため、毎年誕生月に送付している「ねんきん定期便」では、年金加入期間、年金見込額、保険料納付額のほか、最近の月別状況として直近1年間の国民年金の納付状況や厚生年金の標準報酬月額等をお知らせしています。また、節目年齢の方には封書形式で全ての年金記録をお知らせし、ご本人に年金記録をチェックしていただいています。一方、「ねんきんネット」では、いつでもご自身の最新の年金記録が確認可能であるほか、持ち主不明記録検索機能の更なる利用促進に向けて、2024(令和6)年6月に、スマホ専用画面の新設を行いました。
◆年金記録の訂正手続
年金記録の訂正請求がされた場合には、厚生労働省(地方厚生(支)局長)は、様々な関連資料や周辺事情を収集・調査し、最終的に、国民の立場に立って、公平・公正な判断を行う地方審議会の審議結果に基づき、訂正・不訂正等の決定を行っています。地方厚生(支)局長の決定に不服がある場合は、行政不服審査法に基づく審査請求を行うことや決定の取消しを求める訴訟を提起することが可能です。
2024(令和6)年12月末時点で年金事務所が受け付けた訂正請求の件数は、制度発足以来累計で約5万1千件となっています。受け付けた件数のうち、約4万9千件の処理が完了しており、約4万件の年金記録が訂正されています。
(つづく)Y.H
(出典)
厚生労働省 令和7年版 厚生労働白書