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基礎編・理論編

エトガー・H・シャインの著作「組織文化とリーダーシップ」

投稿日:2026年6月25日 更新日:

キャリアコンサルタントが知っていると良いと思われる「組織文化とリーダーシップ」を紹介します。本記事はエトガー・H・シャインの著作「組織文化とリーダーシップ」を横山先生が翻訳されたものです。横山先生はシャインが2006,7年頃(記憶があいまいですみません)来日した時の立役者(JCC:日本キャリア・カウンセリング研究会が招待した、彼と娘さんが来日した)で、東京、大阪でシャインが講演をする際にいつも同席し、そればかりか新幹線で京都案内までされて、ごくごく親しく彼の人柄に触れた唯一の日本人でありました。

<ここより翻訳:2010年シャイン著> 横山哲夫翻訳
チバ・ガイギーに対して,私の最初の訪問では,DECへの訪問とは全く異なる印象を受けた。まず最初に,大規模な灰色の石造りの建物に象徴される形式尊重(フォーマリティー)に強く印象づけられた。重厚なドアはすべて閉じられ,メインロビーには制服に身をつつんだ警備員が配置されていた。広々とした,豪華なロビーは社員たちが内部のオフィスや工場の建物群にはいるメイン・ゲイトとなっていた。高い天井,大きな重厚なドア,さらに一角に置かれた高価な家具が待合スペースを作りだしていた。

私はチバ・ガイギーに対して,DECの環境に対するのとは違った反応を示していた。私にとってはDECの環境のほうがなじみ易かった。文化の分析を進める際に,その人物の反応そのものがすでにその文化の生みだす人工の産物となる。この事実は十分に認識され,考察されるべきだ。したがっていかなる文化の分析も完全に客観的な形で発表されることは望ましくない。何故なら,まずそれは不可能であるばかりか,その人物の感情的な反応やバイアスそのものも,分析され,理解されるべき,第一次データであるからだ。 チバ・ガイギーのロビーにはいると私はまず,制服を着た警備員に,ガラスの壁にかこまれたオフィスに座っているもうひとりの警備員のところでチェックインするように促がされた。私は,そこで名前を言い,私がどこから来て,誰を訪ねるのかを述べるように求められた。その警備員がどこかに電話をしている間,椅子に座り,さらにエスコート役が私を訪問先へ案内するまで,そこで待つように指示された。私が椅子に座り,待っている間に,ロビーを横切り,エレベーターや階段に向かうほとんどの社員の顔をその警備員が見知っていることに気づいた。そこで私は,いかなる見知らぬ顔の訪問者といえどもただちに見分けられ,私が済ませたように警備員のところでチェックインを求められるであろうとはっきり理解した。

ロイボルト博士の秘書が間もなくロビーに降りてきて,エレベーターまで私を案内し,さらにドアの閉まったオフィスが続く長い廊下を先導してくれた。それぞれのオフィスには小さな名札が張ってあったが,もしオフィスの所有者が名前を知られたくなければ,名札のうえに留められたメタル製のプレートでかくすこともできるようになっていた。各オフィスのドアの上の部分には,小さな電球が取り付けられており,赤とグリーンを示すようになっていた。私の第2回目の訪問のときに,これが何を意味するのかを尋ねると,まず電球がすべて消えているときにはその人物は外出している,もしグリーンであればドアをノックしても構わない,もし赤の場合は,オフィスの所有者はいかなる状況でも邪魔されたくない,ということを意味すると教えられた。

角を曲がり,また同じような廊下を歩いていったが,その間中全くほかの人の姿を見かけることはなかった。ロイポルト博士のオフィスにたどり着くと,その秘書は控えめにドアをノックした。彼が「どうぞ」と言うと,彼女はドアを開け,私を案内し,そのあとドアを閉めて自分のオフィスへ戻っていった。お茶かコーヒーが勧められ,秘書が大きな立派なトレーに,すばらしいクッキーのお皿を添えた飲み物を運んできた。私が何故「すばらしい」クッキーと表現するかというと,すばらしい食物は正にチバ・ガイギーが表明するアイデンティティーの重要な一部となっていることがわかったからだ。のちになってパリやロンドンのオフィスを訪問した際にも,つねに私は3つ星レストランに案内されることになった。

われわれのミーティングを済ませたあと,ロイボルト博士は,ほかの建物にある役員ダイニングルームに私を案内した。その際も警備員のいるところを通り過ぎた。このダイニングルームは第一級ホテルのレストランに匹敵した。接客係は明らかにすべてのゲストを知っており,テーブルをリザーブし,さらに「本日のスペシャル」について丁寧な説明をしてくれた。ランチにも食前酒とワインが供せられ,その食事には優に2時間が費やされた。またほかの建物にやや豪華さに欠ける,もうひとつのダイニングルームと社員用のカフェテリアがあることが説明された。しかしこのダイニングルームこそベストの食事を提供しており,シニア経営陣がビジネスについて話し合い,ビジターを招くうえで適切な場となっていた。DECにおいては食堂や食事は人々がお互いに交流し合う場として活用されていたのに対して,チバ・ガイギーでは食事,ドリンク,それに伴う優雅さが,地位やランクに伴うであろうある種の象徴的な意味をもたらしていた。

この企業のたくさんのシニア経営者が指摘してくれ,さらに自分自身でも気づいた点として,彼らがほかの人たちに出会ったとき,つねにお互いの公式の肩書や職位名,たとえば「○○博士」,「△△本部長」と呼び合っていた。敬意や従順の意の表わし方の差を見て,組織内で誰が上位であるかを判断することはかなりたやすかった。またダイニングルームのテーブルごとの配置も,地位にもとづいて行われていることも明らかであり,どの接客係も彼女のゲストの相対的な地位を明確に理解していた。
(つづく)平林良人

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