基礎編・理論編

キャリアコンサルタント養成講座 46 | テクノファ

投稿日:2021年3月21日 更新日:

横山哲夫先生の思想の系譜16

横山哲夫先生が2019年6月に逝去されて今年は3回忌になります。テクノファでは2004年に先生のご指導でキャリアコンサルタント養成講座をご指導いただいた立ち上げさせていただいて以来、今年まで実に14年もの間横山哲夫先生の思想に基づいた養成講座を開催し続けさせてきました。

キャリアコンサルタント養成講座をご指導いただいた横山哲夫先生はモービル石油という企業の人事部長をお勤めになる傍ら、組織において個人が如何に自立するか、組織において如何に自己実現を図るか生涯を通じて研究し、又実践をされてきた方です。
横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがありはずであるという鋭い分析のもと数多くの研究成果を出されてきております。

横山哲夫先生には多くの著者がありますが、今回はその中から「個立の時代の人材育成」-多様・異質・異能が組織を伸ばす-の核となるところを紹介したいと思います。
今回は引き続き「個立の時代の人材育成」からの紹介です。
委員会面接の実情
面接時間は約一時間。事前に資料(自己申告書、業績評価表、前回の面接記録など)を読むことと、事後の面接者(二人)同士の意見交換に要する時間を合わせると二時間を上まわる。一人の社員に二人の幹部が二時間を使って個別のキャリア面接を行なうことを、多勢の他社の友人や、同業コンサルタントは信じられないという。年間面接、再面接数は約一〇〇件である。

面接場面の展開は当然一人ひとり異なるが、比較的よくある展開はこうである。
① 最近数年間の自己申告書の一貫性、ないしは変化についての説明が求められる。
② 会社ならびに自分自身の特性に関する理解の深さが間われる。
③ 将来への意欲と、現在の努力の方向性の一致が確かめられる。
④ ライン上司による業績評価と、自己評価の一致またはギャップが確かめられる。
⑤ 最近数年間の勤務成績に顕著な変動があった場合、その理由、背景などへの自己分析が求められる。
⑥ 非面接者のキャリア・プランが偏った情報にもとづいていると思われる場合には、正しい情報が与えられる。
⑦ 有能とみられながら、キャリア・プランを会社任せにしている社員の場合は、CDC面接が成立しにくい。面接はもっばら、自立についての、基本的な指導・教育の場となり、アセスメントは行なわれない。ラインの長へのフィードバックとしてはその日常の指導を依頼し、併せて自己開発ワークショップ(第 10 章参照)への参加をすすめることが多い。また数年後の再面接が申し送られることにもなる。

ラインへの面接のフィードバックは必ず行なわれる。資料によるラインの育成プランが妥当であると思われる場合は、CDCがライン案に同意である旨を記し、見解が異なる場合も、その理由を必ずラインにフィードバックする。同時にまた、委員会事務局に連絡して次回の開発会議(CDM)の資料とするよう依頼する。アセスメント(将来性予測)もラインに必ずフィードバックする。ラインのアセスメントと一致することも、しないこともあり、そのことはまたCDMにおける議論を活性化させる種にもなる。本人にとっては自らに対するアセスメントの信頼性、客観性が高まることになる。通常、本人に対するフィードバックはしない。面接の場面そのものが本人のキャリアプランに対するフィードバックであるという考え方と、アセスメント自体をフィードパックすることのよしあしについては、委員会内部でもコンセンサスが成立していない。私見は慎重論であった。

CDCの面接活動はラインの人材育成に対する恒常的なチェック機能を果たす。とかく、ラインの長は短期的な業績の重視と、短期的な人材の活用に偏りやすい。これはラインの業務遂行責任上、やむを得ないことである。であるからこそ、CDCが勧告する中・長期の視点からの人材育成案との最適バランスが得られ、組織の総合的活力を維持できることになる。

M社においてはCDC面接活動にこのような必然性と他制度との整合性があるが、これらがなけれぱ個人面接制度が成功しない、ということはない。それを次に述べたい。

面接制度のすすめ
議論を一般化してみたい。私は、M社ほどの必然性、整合性はなくとも、日本企業における幹部による社員の個別面接制度の導入は充分に検討に値すると信ずる。直属上司を抜きにしたバイパスに過敏な反応を示す日本の組織人は、組織の幹部と直接対話できる機会が公式に設定されても、遠慮してホンネを話さない(話せない)―と思われがちである。事実、個別(立)尊重のすすんだM社でも当初はその傾向がみられた。M社の場合は他の個別(立)型人事制度との連動がはじまり面接体験者のクチコミもあって、三、四年後から、ほぼ期待どおりのキャリア面接が展開されるようになっていった。私はいまこう思う。もし、この面接制度の導入が遅れて、いまこれから実施ということになったら、三、四年などの期間を要せず、一年足らずのうちにたちまち定着するであろう―と。 理由は簡単である。面接の主な対象となる若年層には面接に際しての遠慮も気がねもないからである。自己主張の場、自己開陳の場でためらいを示すのは、若者の中ではミニ中高年派ヤング(C)のみであろう。人材育成の焦点となる個立派ヤング(D)にとっては、大変に楽しみな面接となる。若者なりの緊張感やアガリはあっても、自分自身を中心的トピックに据えたことによる基本的な波長はバッチリと合う。ただし、若者不信の、組織一辺倒の管理者が、若者教育のお説教の場にでもしようとするのなら、話はまったく違ってくることはいうまでもない。

K社(正職員千数百人、パート数千人のチェインストアー)は昨年、「人材育成審議会」「人材育成委員会」を発足させた。トップの強いリーダーシップのもとに、中・長期の人材育成のシステム化に踏み切った。幹部職員はとまどいながらも急速にベクトルを合わせ、審議会も活性化しつつあることに感心するが、それ以上に印象的なことは、委員会面接に対する若手職員の圧倒的といってもよい程の率直な支持、歓迎ぶりである。委員会(役員・部長で構成)は委員長を先頭に、外部専門家による面接の実技研修を重ねている。双方が不満足な結果に終わった面接については、直ちに再面接をはかる、などの積極的な対応をみせているが、ヤング達のポジティブな反応が委員会を活性化しているとみることができる。

M社、K社の例にみるように、直接面接制度は、ラインと人事部を含めた委員会面接による形がよいようである。人事部対ラインの人事権与奪のシーソーゲームの図式を、少なくともこの面接の場には持ち込まないこと。また面接委員の人選は、会社のサイズにもよるが、部(次)長レベル以上の幹部から選抜すること、閑職部(次)長を避け、激職部(次)長を敢えて任命することが必要である。人材育成、キャリア開発に関するトップの関心と決意を示す意味において、面接委員の人選は大切である。機器輸出入業のG社もまた、面接によるアセスメントを導入した。G社はM社、K社と同じく二人面接法であるが、うち一名を人事担当役員(または)人事部長にかぎっている。当然面接数は減じてくるが、これも一つのすすめ方であろう。
(つづく)平林良人

-基礎編・理論編

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