実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領 72 | テクノファ

投稿日:2021年6月3日 更新日:

キャリアコンサルタント実践の要領 71に続きキャリアコンサルティング協議会の、キャリアコンサルタントの実践力強化に関する調査研究事業報告書の、現段階でのスーパービジョンの基盤整理の、スーパーバイザーの養成プログラムの考え方を説明します。

4.スーパーバイザーの養成プログラムの考え方
本事業で把握した既存のスーパーバイザー養成プログラムは、それぞれの養成機関の考え方の特徴が反映されたものであった。今後、キャリアコンサルタントのスーパービジョンを普及拡大していくためには、汎用的なスーパービジョンの在り方、汎用的なスーパーバイザー養成の考え方を示していく必要がある。
そのためには、既存のスーパーバイザー養成に関わる機関の考え方を尊重しつつも、各機関が協力、連携して上記3.のスーパーバイザーに求められる能力要件を含め、汎用的なスーパーバイザー養成プログラムについて、検討、試行実施、検証を行っていくことが求められる。

各機関から発表されたスーパーバイザー養成プログラムを踏まえ、今後のスーパーバイザー 養成の試行実施に係る考え方を次に示す。
(1)受講要件
スーパーバイザー養成のプログラムを受講するには、①キャリアコンサルタントとして相応しい人間性を備えていること、②一定年数(又は時間数)のキャリアコンサルティングの実務経験(相談場面又はそれ相当の経験)があり、適切な実施ができること、③ー定回数(又は時間数)のスーパービジョン又はそれ相当の指導を受けた経験があること、が必要と考えられる。また、必要に応じて書類審査、面接、試験等を組み合わせることも検討できる。

(2)養成プログラムの形式
養成プログラムの形式は、①講義編と②実習編の組み合わせが基本と考えられる。
①講義編では、スーパービジョンを実施するために必要な視点を学ぶことが考えられる。例としては、スーパービジョンの定義・必要性・構造、スーパーバイザーの職業アイデンティティ・倫理、スーパーバイザーに求められる知識・スキル、等が挙げられる。
②実習編では、スーパービジョンの実践力をつけるための実践的な実習が考えられる。例としては、スーパービジョン体験、様々なケースに基づくスーパービジョン実習・振り返り、グループワーク、インターンシップ・振り返り等が挙げられる。
また、養成プログラムで使用する教材、教育・指導するレベル等の必要事項については、 関係者において合意しておく必要がある。

(3)講師
養成プログラムの講師は、専門分野における高度な専門性と豊かな人間性を備え、上記3. のスーパーバイザーに求められる能力要件等を受講者に教育・指導できる人材であって、スーパーバイザー養成又はそれ相当の指導実績を有する者が考えられる。

(4)養成期間
既存のスーパーバイザー養成プログラムの期間を踏まえると、講義編と実習編を併せて1日 8時間、全15日間程度とすることが考えられる。

(5)修了要件
養成プログラムを修了したと認めるための修了要件を明確にしておくこと、能力評価項目を予め作成しておき養成プログラムの受講者の状況を評価する、講義編と実習編終了後に試験を行う、面接を行う等が考えられる。

5.スーパービジョンと1級キャリアコンサルテイング技能士
キャリアコンサルタントの継続的な学びの促進に関する報告書」(平成31年1月10日)によると、「キャリアコンサルテイングのためのスーパービジョンを安定して実施するためには、指導者としての学びの出発点にある1級キャリアコンサルテイング技能士等が、指導者としての継続的な学習・研鑽を積むことが必要である。また、その実践的指導力向上のために、スーパーバイザー養成のための標準的カリキュラムモデルや、適性・能力判定基準等を整理して示す必要がある。」 としている。
なお、心理臨床や心理教育的援助サービスに携わるカウンセラーのスーパービジョンに関し、「日本のスーパービジョンの現場では、スーパーバイザー訓練を受けたことがない、あるいはある学派のスーパービジョンを受けただけのスーパーバイザーが、スーパービジョンの方式の違い、特色、各形式におけるスーパービジョンの進め方や道具の活用法について未知であるにも関わらず、無自覚に他の形式を批判したり、一つの方法にこだわったりしていることも多い」という問題が指摘されている。

また、「スーパービジョン関係が十分に形成されないまま、初対面のスーパーバイザーとスーパーバイジー(キャリアコンサルタント)が、限られた時間の中で単なる事例検討を行い、スーパーバイザーがスーパーバイジーの力量(カウンセラーとしての発達段階)を十分にわきまえず、自分の依拠する理論モデルに沿ってスーパーバイジーの見立てや援助の問題点を一方的に指摘し、いわゆる「クライアント理解」に終始するだけのセッションが多いというのも現状である。」との指摘もある。

一定の歴史と実績のある心理臨床の分野でさえこのような状況である中で、キャリアコンサルティング分野において、スーパービジョンの訓練を受けたことがない1級キャリアコンサルティング技能士等がスーパービジョンや事例指導をできると独りよがりする状況は避けるべきである。
現行の技能検定制度において、1級キャリアコンサルティング技能検定の合格者のレベルに関しては、熟練したキャリアコンサルティングは「できる」 レベルにあるが、スーパービジョンについては「わかる」 レベルを想定している。したがって、1級技能検定の合格後は、自己研鑽を積んでスーパービジョンが「できる」 レベルに力量を上げていくことが求められる。
今後、キャリアコンサルタントの学びの中核をなすスーパービジョンを普及していくためには、1級キャリアコンサルティング技能士及びキャリアコンサルテイングの高い実績を有するキャリアコンサルタント等に、キャリアコンサルティングのスーパービジョンに関する訓練を受ける機会を提供し、彼らが指導者としての学習及び経験を積み重ねることが重要な課題である。

6.今後の課題
(1)継続的な調査研究
本事業では、キャリアコンサルタントの継続的な学びの根幹をなすスーパービジョンについて、現行のスーパーバイザー養成等の実態把握、実際の現場でのスーパービジョンモデル実施を通して、スーパービジョンの有効性や課題等を把握するとともに、現段階でのスーパー ビジョンの基盤整理(スーパービジョの標準化に向けた考え方)を行った。この度の調査研究は、スーパービジョンの標準スキームの提示や普及促進のための環境整備を行う第一段階であり、今後、スーパーバイザー養成プログラムの検討、スーパーバイザー養成の試行実施等を通してスーパーバイザーに求められる能力要件の明確化、養成のあり方の標準化など、 継続的な調査研究を行うことが望まれる。

(2)キャリアコンサルタントの質向上におけるスーパービジョンの位置づけ
上記3、 4で記載したスーパーバイザーに求められる能力要件(案)及びスーパーバイザーの養成プログラムの考え方は、あらゆる領域で活動するキャリアコンサルタントの共通基盤としての基礎的資質を向上させるものと位置づける。
特に資格取得後、経験の浅いキャリアコンサルタントにとってスーパービジョンを受けることは、その後に経験を重ねて専門領域を確立し、成長し続けていくためにも重要であることから、まず共通基盤を的確に指導できるスーパーバイザーの養成とスーパービジョン機会の拡充が求められる。
こうした基盤を整備しつつ、並行して、今後企業組織領域で活動するキャリアコンサルタントに求められる能力・資質を教育・指導できるスーパーバイザーの確保とその養成プログラムを確立していく必要がある。この点については補章で触れることとする。

(3)スーパービジョンを受ける機会の整備
キャリアコンサルタントに求められる質向上が急速に高まっていること、またキャリアコンサルタント資格者の量的拡大が順調に推移していることから、スーパーバイザーの数を増やすと同時に、スーパービジョンを受ける機会を増やす仕組みを整える必要がある。
スーパービジョンの機会を増やすにあたっては、キャリアコンサルタントの経験、力量に応じて、短時間で受けられるものから複数回にわたるものまで、スーパービジョンの形式や実施条件にバリエーションを設け、推奨パターンを示すことが考えられる。
(つづく)A.K

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