キャリアコンサルタントの知恵袋 | 株式会社テクノファ

実践に強いキャリアコンサルタントになるなら

基礎編・理論編

自己理解と他者理解2ーキャリアコンサルタントの知恵袋|テクノファ

投稿日:2024年4月15日 更新日:

■自分の「特質」とは何(自己理解)
「自己理解と他者理解」について考えます。自分の特質を知るということについて考えてみたいと思います。

自分の特質を知るということは、自分を良く知るということ、つまり「自己理解」になります。自己理解とは文字通り、自分自身を把握し理解することをいいます。「自己理解」という言葉は近年、世の中にあふれており、自己理解についての書籍や記事も豊富ですので、この言葉には馴染みがある方も多いかと思いますが、ここでは内閣府の「ユースアドバイザー養成プログラム(改訂版)における定義を紹介します。

自己理解とは、自己理解とは,いくつかの手段により自分の気質,性格,ある種のタイプ,価値観,考え方,態度・行動などを深く知り,それを自分自身が納得して受け止めている状態のことである。

つまり、漠然としていた自分の像を明らかにし、これこそが本来の自分の姿であると自身で理解している状態といえます。
さて、普段の生活のなかで、自分自身について知り把握する機会はどのくらいあるでしょうか。就職を具体的に考える際に、自分にはどんな職業適性があるかの根拠として自分の特質や性格等を考えることがあるかもしれません。ただ、日常生活を送る中では、なかなか考える機会はない方も多いのではないでしょうか。あるいは、「自分のことは自分が一番よく知っている。他人にとやかく言われたくない。自分のことなど他人はあずかり知らぬものだ。」と思っている人もいるかもしれません。

もし、本当の自分とはどのようなものかを理解している、あるいは理解するまでには至らなくてもかなり明らかになっている、このような状態の場合を考えてみます。このような場合、自分の行動、決定等が過去の経験などから培ってきた自分の価値観や言動のパターンに基づいている可能性が大きいことがわかるかもしれません。また、物事に対する自分の将来的な行動、決定等を予測することができ、自分自身を客観的にみることができるようになるかもしれません。最新の自分について理解を深めておくことは、就職の機会のみならず、日常生活においても役に立つ場面はあることでしょう。

では、どのようにすれば自分自身を理解することができるのでしょうか。
内閣府の「ユースアドバイザー養成プログラム(改訂版)」では、自己理解の方法として以下の3視点が記述されています。
①自己分析(自分の考え、自分の感じ、自分の想いなど)
②他人からのフィードバック(聴く、受け止める)
③データの活用(職業興味調査、職業適性検査、性格検査、その他)

また、自己理解を深める具体的な方法について、厚生労働省の資料にキャリアコンサルティングを行う上での自己理解サポートの実践について記述したものがあります。その部分の概要を以下に記載します。

〇自己理解の実際
自己理解への第一歩は、現在の自分を描かせてみることです。その最もよい方法は自己紹介文を書かせてみることでしょう。将来の夢、生き方・信念、長所・短所、適性・能力、学校で学んだこと、過去の経験、趣味、家族や友人などの自身に対する見方など、要するに現在の自分を表現します。どこをアピールしたいのか十分に表現させます。肯定的な部分をチェックさせます。人間は誰でも長所と短所を持っています。それが個性的だということです。個性的な人生を送るために、自分の肯定的な面を探させてみましょう。積極的か、人から頼りにされているか、失敗を恐れないか、自身の自己イメージについて、自身でチェックしたり、他人に観察・評価してもらうように勧めるのもよいでしょう。その前提としては、(1)肯定的な面で、必要なときに自分をどれだけ主張できるかは、個性的な人生を送る上で欠かすことができないこと、(2)一方、誰にでも否定的な面はあるが欠点や弱さも含めてそれが「その人らしさ」であり、個性であること、(3)それらの否定的な面がどこから来たのか、その原因を知って自分自身の見方や考え方を持っていればよいこと、などを理解させることが重要です。

〇自己理解の視点
人間の基本的な考え方や希望、過去の経験、得手・不得手、行動パターンなどは、人それぞれです。自己理解とは、これらについて、より深く明らかにしてみることです。またその個人をとりまく様々な条件についても理解する必要があります。職業・職務に関連する個人の側の要因(その職業・職務が要求するさまざまな側面を十分にやりこなす個人の側の要因)については、ある人が潜在的に持っている知的能力・精神運動機能(狭義の能力)や価値観・興味等、更にOJT、Off-JT、自己啓発によって習熟された顕在的な能力である知識・技能(狭義の能力)や態度(性格やヤル気等が目に見えた形となったもの)から成り立っているといわれています。自己理解を行う上で必要なこれらの個人の側の要因項目について、個人がどのような状態にあるかを、用意されたチェックシートにより目に見えるようにしています。

チェックシートで明らかになる個人の側の要因項目として次のような項目があげられています。
A キャリア指向性(キャリアシートII)
(1) 職業興味
(2)価値観
B 過去の経験(キャリアシートIII-A、III-B)
C 職業能力等(キャリアシートVI又はV)(1) 職業・職務能力
(1) 職業・職務能力
a 知識・技能
b 適性(狭義)
(2) 態度・行動パターン
D 個人を取り巻く諸条件(キャリアシートVIII)
などがあります。
<引用先> 厚生労働省ホームページ資料 キャリア・コンサルティング技法等に関する調査研究報告書の概要
URL:キャリア・コンサルティング技法等に関する調査研究報告書の概要 (mhlw.go.jp)

人は生活する中で様々なキャリアを形成し、自身とキャリアとの関係は絶えず変化していきます、それに合わせて自己理解が変わることもあるでしょうが、自己理解を常に深化させていくことが大切です。
(つづく)Y.H

-基礎編・理論編

執筆者:

関連記事

横山哲夫先生が逝去されて今年で6年になります3 

横山哲夫先生はモービル石油という企業の人事部長をお勤めになる傍ら、組織において個人が如何に自立するか、組織において如何に自己実現を図るか生涯を通じて研究し、又実践をされてきた方です。 キャリアコンサルタントに参考になる話として、横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがありはずであるという鋭い分析のもと数多くの研究成果を出されてきております。 先生には多くの著者がありますが、今回は「硬直人事を打破するために-人事管理自由化論」の中で、管理なき人事へ(人間の自由化)を掲載させていただきます。 人間自由化のモー …

キャリアコンサルタント熟練レベルを目指して

厚生労働省がキャリア開発・形成を支援するキャリアコンサルティングという専門的な活動を担う人材を、登録制の名称独占資格のキャリアコンサルタントとして、導入・標準・熟練・指導の4つのレベルに分けて能力要件を定め、キャリアコンサルティングの制度を策定、運用していることはすでに説明してきたとおりですが、ここでは、熟練レベルと非熟練レベルとの差異について、中央職業能力開発協会のキャリアコンサルティング研究会報告書「熟練キャリアコンサルタントに係る調査研究」を引用して説明します。 原則として厚生労働大臣が認定する講習の課程を修了し、国家資格キャリアコンサルタント試験に合格した者を「標準レベルのキャリアコン …

横山哲夫先生の「個立の時代の人材育成」からの紹介

横山哲夫先生が2019年6月に逝去されて今年は6年になります。テクノファでは2004年に先生のご指導でキャリアコンサルタント養成講座を立ち上げさせていただいて以来、今年まで実に14年もの間先生の思想に基づいた養成講座を開催し続けさせてきました。 横山哲夫先生はモービル石油という企業の人事部長をお勤めになる傍ら、組織において個人が如何に自立するか、組織において如何に自己実現を図るか生涯を通じて研究し、又実践をされてきた方です。 横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがありはずであるという鋭い分析のもと数多く …

民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン5

厚労省はISO29990を踏まえ、民間教育訓練機関が職業訓練サービスの質の向上を図るために取り組むべき事項を具体的に提示したガイドラインを発表しています。テクノファで行っているキャリアコンサルタント養成講座は、民間教育訓練機関におけるサービスの質の向上のガイドラインである「ISO29990(非公式教育・訓練のための学習サービス事業者向け基本的要求事項)」のベースであるISO9001に沿って行われています。 ●「民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン」 URL:2r985200000277tu.pdf PowerPoint プレゼンテーション サイト内検索結果|厚生労働省 以下、厚 …

民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン6

厚労省はISO29990を踏まえ、民間教育訓練機関が職業訓練サービスの質の向上を図るために取り組むべき事項を具体的に提示したガイドラインを発表しています。テクノファで行っているキャリアコンサルタント養成講座は、民間教育訓練機関におけるサービスの質の向上のガイドラインである「ISO29990(非公式教育・訓練のための学習サービス事業者向け基本的要求事項)」のベースであるISO9001に沿って行われています。 ●「民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン」 URL:2r985200000277tu.pdf PowerPoint プレゼンテーション サイト内検索結果|厚生労働省 以下、厚 …