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実践編・応用編

信頼性のある日本のデジタル基盤の確保

投稿日:2025年12月22日 更新日:

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少子高齢化や経済の低迷が続く我が国において、社会課題の解決を進めるためには、AIをはじめとする進展するデジタル技術の活用が求められています。こうしたデジタル技術の活用や社会基盤としてのデジタル領域の拡大等に伴う、通信・計算資源・電力等の需要の増大や災害リスクに対応した、デジタル社会を支えるデジタル基盤の整備の必要性が増しています。また、現下の世界情勢の不安定化やデジタル分野での海外依存の拡大が進んでいる状況を踏まえると、安定した経済社会活動の維持やセキュリティ確保等の観点から、過度な海外依存には懸念も指摘されています。

信頼性のあるデジタル基盤の確保
我が国の社会課題解決に向けたデジタル技術の活用や社会基盤としてのデジタル領域の拡大等に伴う、通信・計算資源・電力等の需要の増加や災害リスク※に対応した、デジタル社会を支えるデジタル基盤の整備の必要性が増しています。
例えば、データセンターは、今日のデジタル社会を支える重要なデジタル基盤の一つとなっており、国内へのデータセンターの確保は重要な課題となっていますが、国内データセンターの立地及び新規投資は関東・関西圏に集中しており、2023年時点で日本全国のデータセンターのおよそ90%(面積換算)が関東・関西に立地しています。一方で、広域の災害対策の観点で、バックアップとなるデータベースの物理的な距離を確保することは重要です。
さらに、海底ケーブルは大量の国際通信トラヒック※を流通させるための重要なデジタルインフラですが、海底ケーブル陸揚局も、千葉県の房総半島や三重県の志摩半島など数か所に集中しており、データセンター同様に地方分散、多ルート化の必要性が指摘されています。
※ traffic 通信回線上で伝送されるデータ量

また、様々な分野でのAI活用の進展や、今後のサービス高度化のため、大量のデータ処理を行うための計算能力が必要とされています。生成AIの開発・利活用に必要なインフラ需要は、世界的に大幅に拡大しています。様々な産業における競争力の維持・強化のためには、更なる計算能力確保が不可欠とされており、我が国における計算資源確保は重要な課題の一つです。

加えて、生成AIや通信トラヒック利用拡大に伴う新たな課題として、ネットワークやデータセンターなど、ICTセクターにおける消費電力量の増大への懸念が高まっています。例えば、科学技術振興機構 (JST)は、エネルギー効率の改善状況に応じたデータセンター・ネットワークの消費電力量の見通しを示しており、現時点の技術のまま、全く省エネ対策が進まなかった場合、消費電力量は、今後、大きく増加すると予想されています。

すべてのデジタルサービス・インフラ等において、我が国に事業基盤を有する事業者からサービス等の提供を受けることは現実的ではないですが、今日の世界情勢の不安定性等や我が国の国家安全保障、経済安全保障に鑑みれば、信頼のできる内外事業者との連携等による安定的・セキュアなサプライチェーン網の確保とともに、特に重要なデジタルサービス・インフラ等においては、我が国の自律性の確保・向上が一層重要となってきています。

デジタル基盤をどのように確保するか
AI等の進展に伴う通信需要等の一層の増加が見込まれるとともに、災害等の不測の事態に対して、デジタル基盤に依存する我々の社会生活への影響を最小限に抑えるためには、計算資源や通信、電力需要の急増に対応し、かつ、アクセスしやすく強靱性・冗長性のあるデジタル基盤の確保等の取組が重要となります。
データセンター・海底ケーブルの地方分散については、総務省では、「東京圏等に集中するデータセンターの分散立地」や「日本を周回する海底ケーブルの構築」「国際海底ケーブルの多ルート化」を推進するべく、データセンターや海底ケーブル等の整備に対する支援を行うため、令和3年度補正予算「データセンター、海底ケーブルなどの地方分散によるデジタルインフラ強靱化事業」により、「デジタルインフラ整備基金」を設置し、データセンター、海底ケーブルなどの地方立地を行う民間事業者の支援を行っています。
また、総務省及び経済産業省が主催する「デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合」において、2024年9月に取りまとめられた「中間とりまとめ3.0」では、2030年代のAI社会を支えるデジタルインフラの整備に向けて、引き続きデータセンターの分散立地の更なる推進に加えて、オール光ネットワークの国際連携等も見据えつつ、国際海底ケーブルの陸揚局の分散立地の促進が提言されました。2025年3月から、総務省及び経済産業省は、AI活用を通じたDXの加速、成長と脱炭素の同時実現等に向け、データセンターの整備について主に電力・通信インフラの側面から検討を行い、官民の関係者における連携・協調を推進するべく「ワット・ビット連携官民懇談会」を開催しています。

NTNの利活用
NTN(Non-Terrestrial Network:非地上系ネットワーク)は、離島・海上・山間部などの通信イン フラの整備が地理的・経済的に困難な地域を効率的にカバーし、当該地域において通信サービスの提供を可能とするとともに、自然災害などにより既存の通信インフラが被災した際には臨時の通信手段として機能し得ることから、官民の双方で関心が高まっており、利活用が進みつつあります。実際に、2024年 1月に発生した石川県能登地方の地震に際しては、通信インフラの応急復旧や避難所などでの通信環境の確保のため、米国SpaceX社の衛星通信システム「Starlink」が広く利用されました。
通信事業者各社は、NTNの利活用を積極的に推進しており、低軌道衛星による高速大容量の衛星通信サービスの提供に加え、衛星やドローンを活用したソリューションビジネスの展開、更にはHAPSの実現に向けた技術開発などに取り組んでいます。また、2025年4月には、KDDI、沖縄セルラーが、 Starlinkを用いて、スマートフォンが衛星と直接通信(衛星ダイレクト通信)し、空が見える状況であれば携帯電話の圏外エリアでも通信が可能なサービス「au Starlink Direct」の提供を開始しました。
総務省では、これらの動きを踏まえつつ、2024年8月に取りまとめた「AI社会を支える次世代情報通信基盤の実現に向けた戦略 – Beyond 5G推進戦略2.0 -」に基づき、HAPSに関する技術実証を通じた国内導入に必要な制度整備・HAPS通信の高速大容量化に関する研究開発等を実施しています。また、衛星通信サービスについても、衛星と携帯電話のダイレクト通信サービス、衛星光通信や電波利用の高度化に関する技術開発の支援や、必要な制度整備を実施しています。

デジタル基盤における脱炭素化
地球温暖化への対応が喫緊の課題となる中、通信設備やデータセンター・クラウドサービス、AI利用等における省電力化や脱炭素対応が求められています。データセンターや通信インフラ等のデジタル基盤における消費電力量増大に対する技術的対応として、様々な省電力化技術・脱炭素推進技術の研究開発が行われています。その一つとして光電融合技術があります。光電融合技術とは、電気信号を扱う回路と光信号を扱う回路を融合する技術であり、省電力かつ低遅延を実現させることができます。
例えば、NTTは2019年に次世代光通信基盤構想「IOWN(アイオン)」を打ち出し、光電融合技術の研究を進めており、光電融合技術をデータセンター間の接続やデータセンター内のボード間の接続、さらに半導体パッケージ間、あるいはパッケージ内でのデータ伝送に適用するロードマップを描いています。2023年3月にIOWN1.0の商用を開始しており、202年度からデータセンターの消費電力量の削減が可能になるとしています。
総務省でも、「AI社会を支える次世代情報通信基盤の実現に向けた戦略 – Beyond 5G推進戦略2.0 -」 (2024年8月総務省発表)に基づき、光電融合技術を活用したオール光ネットワーク技術の社会実装に向けた研究開発等を実施しています。
前述の「ワット・ビット連携官民懇談会」において、AI活用を通じたDXの加速、成長と脱炭素の同時実現等に向け、データセンターの整備について主に電力・通信インフラの側面から検討を行い、官民の関係者における連携・協調を推進することとしています。

経済安全保障推進法等による安定的な供給
経済安全保障推進法では、国民の生存に必要不可欠な、又は、広く国民生活・経済活動が依拠している重要な物資について、特定重要物資として指定し、その安定供給確保に取り組む民間事業者等を支援することを通じて、サプライチェーンの強靱化を図ることとしています。インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて電子計算機(入出力装置を含む。以下同じ。)を他人の情報処理の用に供するシステムに用いるプログラム (以下「クラウドプログラム」という。)は、クラウドサービスの機能を決定する要素であり、特に、今後、企業の基幹システムや行政サービス、社会インフラの制御等の重要領域に拡大する見込みである基盤的なクラウドサービスについて、国内に事業基盤を有する事業者により提供されることは、経済安全保障や国際収支の観点から重要です。このため、クラウドプログラムを特定重要物資に指定し、競争力の高いクラウドサービスを提供する上で重要な技術の開発又は基盤クラウドプログラムの開発に必要となる高度な電子計算機の導入等の取組に関する供給確保計画を認定し、計画の取組への支援を行っています。2025年4月現在、計11件の供給確保計画の認定を行っています。
多くの重要なデジタルサービス・インフラ等において海外事業者の存在感が高まっている一方、今日の世界情勢の不安定さ等に鑑みれば、信頼のできる内外事業者との連携等による安定的・セキュアなサプライチェーン網の確保とともに、特に重要なデジタルサービス・インフラ等においては、我が国の自律性の確保・向上が重要な課題です。

デジタル分野における日本の競争力強化
重要なデジタル基盤に関して、我が国の競争力を強化することは、これらデジタル基盤への我が国の自律性強化に資することになります。
例えば、異なるベンダーの機器やシステムとの相互接続を可能とするオープンな無線アクセスネットワークであるオープンRANは、様々なベンダーの製品を採用可能とすることによるサプライチェーンリスクの低減や、柔軟かつ拡張性の高い無線アクセスネットワークの構築、基地局市場の活性化による価格の適正化等が可能となるほか、日本の通信事業者やベンダーの強みを生かした国際展開に寄与することが期待されています。基地局市場全体では、日本のグローバル市場シェアは数%にとどまりますが、オープンRANは、相対的に日本のシェアが高い分野であり、今後の伸長が期待されます。
オープンRANに関する政策的対応として、総務省では、2024年8月に取りまとめた「AI社会を支える次世代情報通信基盤の実現に向けた戦略 – Beyond 5G推進戦略2.0 -」や2025年6月に策定した 「デジタル海外展開総合戦略2030」を踏まえ、オープンな規格を用いた基地局機器の相互接続・運用試験環境の高度化、AIを活用したRAN制御の効率化に関する研究開発や「安全性・信頼性を確保したデジタルインフラの海外展開支援事業」によるオープンRANの海外展開支援等を実施しています。
(出典)総務省
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/pdf/index.html

(つづく)平林良人

-実践編・応用編

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