キャリアコンサルタントが知っていると良いと思われる「組織文化とリーダーシップ」を紹介します。本記事はエトガー・H・シャインの著作「組織文化とリーダーシップ」を横山先生が翻訳されたものです。横山先生はシャインが2006,7年頃(記憶があいまいですみません)来日した時の立役者(JCC:日本キャリア・カウンセリング研究会が招待した、彼と娘さんが来日した)で、東京、大阪でシャインが講演をする際にいつも同席し、そればかりか新幹線で京都案内までされて、ごくごく親しく彼の人柄に触れた唯一の日本人でありました。
<ここより翻訳:2010年シャイン著> 横山哲夫翻訳
チバ・ガイギ一社
チバ・ガイギ一社(Ciba-Geigy)は1970年代後半から80年代初めにかけては,スイスに所有する数多くの事業部門を擁し,地理的には世界中に広がる化学企業であり,製薬,農芸化学,工業化学,塗料,さらに化学をベースにした消費財の事業部を統轄していた。そのあとかつての競合企業のサンド社(Sandoz)と合併し,今日のノバルティス社(Novartis)に統合されている。私は彼らの1979年のトップ経営陣の年次総会に招かれ,イノベーションと創造性のトピックについて講演を依頼された。これがきっかけとなって1980年代半ばまで続く,さまざまなコンサルティング活動に取り組むこととなった。
人工の産物-チバ・ガイギーと出会う
この企業との私の最初の出会いは,経営開発部門長のユルグ・ロイポルト博士からの電話連絡であった。そこで彼は,スイスで開かれる年次総会で私に講演してくれるか否かを尋ねてきた。チバ・ガイギーは世界中から40~50人ほどのトップ経営陣を集めた年次総会を毎年開いており,その際スイスのリゾートで開かれる3日間のミーティングに,ひとりかふたりの外部講師を招く伝統を保っていた。その目的は,外部の講演者に企業にとって興味のあるトピックについて語ってもらい,グループを刺激することであった。ロイポルト博士は私に講演するように依頼し,またグループの創造性の理解を高め,企業内の「イノベーション」と「リーダーシップ」を向上させるための一定の形式に沿った演習を実施するように依頼してきた。年次総会に先立ち,総会の概要の説明を受け,さらにそのほかの主要なエクゼクティブ,とくにCEOのサム・コクリン博士に会うために本社を訪問することとなった。そこでは年次総会で発表される,ほかの資料もレビューすることになった。そのとき私は,チバ・ガイギーではものごとが高度に組織化され,注意深く計画されているという印象を受けた。
さらに電話を通じて企業の「概要」の説明を受け,この企業は取締役会,および9人のメンバーで構成される社内のエクゼクティブ・コミティーによって運営されており,これらの人たちは企業の意思決定に対して法的に結果責任を負うということも学んだ。このエクゼクティブ・コミティーの会長のサム・コクリンはCEOとして機能していたけれども,ほとんどの意思決定はそのコミティーで全員一致の決定の形で進められていた。
コミティーの各メンバーは,自分の事業部,機能,地域に対して統轄的な責任を負い,これらの責任分野はときどき編成替えされていた。チバとガイギーの両社とも,長い成長の歴史を持っていたが,1970年に両社は合併された。この合併は成功と受けとめられていたけれども,数多くのマネジャーはなお出身の企業に強い愛着を示していた。2006年になって,ノバルティスのCEOにチバ・ガイギーとサンドの合併はうまくいったか否かを尋ねると,「合併そのものはうまくいっている。しかし,いまなおわが社ではチバの人たちとガイギーの人たちをかかえているようなものだ」という答えが返ってきた。
(つづく)平林良人