基礎編・理論編

キャリアコンサルタント養成講座 31 |  テクノファ

投稿日:2021年1月28日 更新日:

横山哲夫先生の思想の系譜8

横山哲夫先生が2019年6月に逝去されて今年は3回忌になります。テクノファでは2004年に先生のご指導でキャリアコンサルタント養成講座を立ち上げさせていただいて以来、今年まで実に14年もの間先生の思想に基づいたキャリアコンサルタント養成講座を開催し続けさせてきました。

先生はモービル石油という企業の人事部長をお勤めになる傍ら、組織において個人が如何に自立するか、組織において如何に自己実現を図るか生涯を通じて研究し、又実践をされてきた方です。
先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるという鋭い分析のもと数多くの研究成果を出されてきております。

先生には多くの著者がありますが、今回はその中からキャリアコンサルタントが知っている方が良い「個立の時代の人材育成」-多様・異質・異能が組織を伸ばす-の核となるところを紹介したいと思います。

今回は引き続き「個立の時代の人材育成」からの紹介です。
―目標管理実践上の提言  ―
① 目標の種類と選択について
いくつかの重点目標を個別に設定することは、MBOの最初の重要な段階である。この際、個別を原則としながらも、相互依存的要素の強い職務分野では、個別プラス集団(課・係などの小集団または2、3人のサブグループ)の目標、つまり、個別目標と共有目標を併設する方が有効な場合が多い。

保守性、集団性が強く、個人の自立度が低い風土の企業や職場では、導入時に「個別」目標にこだわりすぎると、あとがすすめにくいことになる。MBO教育がすすみ、個別目標設定の意義が浸透するにつれて、個別性を強化していけばよい。比較的独立性の高い職務分野では個別の独自目標を明確に設定すべきである。ただしこの際も、いくつかの重点目標のうちの一つには、所属集団への貢献、つまり、組織(小)集団としての全体的な、共通的な改善目標などを含めておくことは、体験的に好ましい効果をあげる。また、前年の業績評価 (人事考課)の段階(後述)で認識された個人としての能力育成上の課題を、重点目標の一つに含ませることは、事実としてMBOサイクルが能力育成に直結していることを示すことになり、MBO受入れを容易にすることに役立つことが多い。新入社員などの場合には、能力の獲得そのものが優先されることがあって当然であり、彼らの場合には、能力育成目標にかぎらず、全重点目標の設定について、大きく上司の判断と決定に依存せざるを得ないこと、これまた当然である。経験を積み、仕事上の自立能力が高まるにつれて、目標の選択、決定について、当人の発言、自主性が重みを増すことになる。ベテラン、あるいは上級管理職位では、案件と当人の能力によっては目標の自主決定が可能になる。

リソース(ヒト・モノ・カネ)の使用について大枠的な了解も、この最初の目標設定の段階で上下間に合意がなされていることが望ましい。遂行段階に入ったあとでの、「勝手にやるな」とか、「一々きくな」などの科白が上司のロから発せられることがあるが、これはその辺をあいまいなままにしてきた上司の方が悪い。

自分の仕事を、自分らしく、自分の責任でやっていく張り合い、やりがいをこの最初の段階から抱かせることはMBOならではのプロセスである。反対に、過大・過重な目標に当初から意気沮喪することもあり得るし、安易すぎる目標には当初から倦怠感を抱きつづけることになるかもしれない。そうならないように、そうさせないように、このMBOの第一関門、目標設定の段階は安易に通過してはならない。安易な設定、安易な了解は、すべての問題を先送りにする。

目標となる仕事の選択について、若年者の表明する好き嫌いを、わがままの一言で片付けないようにしたい。たしかに単なる未経験から来る観念的な好き嫌いは、MBOサイクルの具体的な取り組みの中で消滅、ないしは転換していくことはある。しかし若者の中には、自分の可能性、適性について、したたかな判断と根拠を持っている者もいる(個立派ャング)。課される仕事に嫌悪感を強く示すときはその理由を聴いてやってほしい。その理由の根拠が弱いと思われたら、根拠薄弱と思うわけを教えてやってほしい。話してやってほしい。多くの場合は「嫌ですが、やってみます」となるものである。説明せずに押しつける上司にはこれからのヤングを部下に持つ資格がない。嫌がる仕事を目標に与えざるを得なかったときは、その後の経過を注意してみてほしい。毎年、やむを得ず、嫌がる仕事ばかりを目標に与えざるを得ない場合は、退職の可能性を毎年高めていることになる。嫌がる仕事の他に、やりたがる仕事を目標の中にまぜてやれないものだろうか。面白いもので、当人がやりたがる仕事を、敢えて一つの目標に設定してやることによって、嫌がった仕事の方にもよい影響が出てくることが多い。これは心理的にも説明がつく話だと思う。また、職場の上司にはそれくらいの自由裁量の余地があるはずだと思う。いろいろやってみてもうまくいかなければ、配属替えを考えてやるしかないだろう。おそらく、本人からも転属希望の自己申告が出ているだろうと思う。配置転換の可能性もないようなら、後は退職しかない。有能な個立指向型ヤングは退職をおそれはしない。退職をおそれて我慢を重ねるのは、組織・順応型の若者(C)(精神的にはミニ中高年)だけである。

MBOサイクルでは、目標設定段階での上下の対話はとくに重要である。とりわけ、とかく価値観格差の大きいヤング達との目標設定をめぐっての対話は、職責遂行上のベクトル合わせに絶好の機会である。くりかえすが、これらの対話に消極的な上司は若年層の管理、育成の不適格者である。

② 目標達成への遂行過程
目標設定段階で本人の参画が認められた場合も、そうでなかった場合も、仕事のすすめ方の段階ではできるだけ本人の自主性を尊重し、要望をとりいれる。これはMBOの精神である。やりたい仕事がやりたいようにやれれば、こんなにめでたい話はないが、そううまくはいかないことの方が多い。嫌がるような仕事をやらせる場合には、せめてやりたいやり方を認めてほしい。新入社員などの場合には、好き嫌いどころか、やり方もよくわからないわけだから、標準的な方法を上司から習得することからはじめなくてはならないが、多少自信がつくにしたがって、本人の希望するやり方も認め、自主的な判断によって改善も可能であることを体験学習させることが必要である。IE・TQCなどの手法による仕事のすすめ方の標準化がすすんでいる場合であっても、目標の種類によっては、必ずしも標準的方法のみによらず、仕事をすすめる上での自由度を拡げることを併用することが望ましい。

遂行過程におけるフィードバックは、目標達成のための一つの鍵である。仕事の進行の中での節目、または定期的な(四半期など)進行状況についての上下の話し合いである。フィードバックをいつ頃行なうかについての大まかな取り決めも、目標設定時にやっておく方がよい。環境変化のはげしい時代には、単に業績の進行と仕事の方法のチェックのみならず、目標自体の修正すらあり得るからである。フィードバックはMBOサイクルの中での、上司、部下双方の義務と心得るべきである。
(つづく)平林良人

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